透析情報の標準規格開発並びに透析診療施設間の連携を支援する標準化に関する研究

文献情報

文献番号
202222075A
報告書区分
総括
研究課題名
透析情報の標準規格開発並びに透析診療施設間の連携を支援する標準化に関する研究
課題番号
22IA2013
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(一般社団法人医療データ活用基盤整備機構)
研究分担者(所属機関)
  • 山川 智之(公益社団法人 日本透析医会)
  • 菊地 勘(医療法人社団豊済会 下落合クリニック)
  • 宮崎 真理子(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 峰島 三千男(順天堂大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,870,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定分野・疾患ごとに必要な情報の整理・標準化が急務となっている現在、災害時等に緊急性の高い医療として透析がある。透析医療は繰り返しを特徴とし、患者は合併症が多いため日常診療において転院先施設への透析情報の提供が求められる。このため透析情報に関するシステム化の取り組みは早くからなされているものの、提供すべき透析情報の標準項目や電子伝達のための標準規格は存在しない。そこで、本研究ではHL7 FHIRに基づいた「透析情報標準規格」を策定することを目的とする。
研究方法
日本透析医学会、日本透析医会と連携して標準データ項目セットを策定する。標準データ項目は必須と考えられる項目(ミニマム項目)として策定する。データ仕様については(一社)日本医療機器テクノロジー協会(MTJAPAN)、(一社)日本保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の協力を得て策定する。また「血液透析装置に関する通信共通プロトコル Ver. 4.0」に含まれる項目については仕様の整合をはかる。データ仕様策定と並行してFHIRへのマッピングをはかり、FHIR記述仕様草案を作成する。また、透析情報についてはミニマム項目セット以外に、透析診療で転院時等に受け入れ側の医師が必要とする薬剤禁忌、処方歴などの情報を整理し、透析医療の特徴を踏まえて要件分析を行い、標準化の必要性について纏める。
結果と考察
必須と考えられる項目(ミニマム項目)に絞って透析情報標準項目草案を策定した。本標準項目草案は、「施設情報」、「患者情報」、「診療情報」、「透析条件」、「透析実績」のカテゴリで策定している。項目草案について、データ仕様を策定した。データ要素が国内の既存の標準規格に含まれる場合は、既存のデータ仕様に準じて設定し、「透析情報標準項目第0.9版」とした。「透析条件」、「透析実績」については、日本透析医学会による「血液透析装置に関する通信共通プロトコル Ver. 4.0」で定められている項目については、その仕様に準じて設定した。作成したデータ項目草案について、透析部門システム、電子カルテシステムからの出力可否について検討し、さらに透析診療施設を対象としてアンケートを実施し、システム化の状況について調査した。対象は日本透析医学会会員、日本透析医会会員で、送付先4,324件中、1,744件(回答率40.3%)の回答を得た。これにより、我が国の透析診療における透析機器、透析部門システム、電子カルテシステムの導入状況が把握できた。透析情報標準データ項目、データ仕様の策定と並行してFHIRマッピングの作業を行い、「透析情報標準項目第0.9版」に対応したFHIR記述仕様案を纏めた。同FHIR記述仕様案について、透析情報標準項目の出力が問題なく可能であるかテストを行うため、プロトタイプシステムを設定した。「透析情報標準項目第0.9版」に基づいて3件の模擬データを作成し、これをFHIR記述仕様に基づいて出力し、サーバへのアップロード、研究分担者による閲覧・確認を行った。

「透析情報標準項目第0.9版」の策定にあたっては臨床家を中心に診療上の観点から必須項目を作成するとともに、工業会より協力を得て技術的観点から検討を行った。この段階で、電子カルテシステム、透析部門システムからの取得の可否について検討を行うことで、同標準項目第0.9版はシステムから取得できる項目が大半であり、手入力の負荷をできるだけ抑える内容となっている。また、アンケート調査の結果、電子カルテシステム、透析部門システムのいずれも導入していない施設が20%近くあることが判明し、手入力の場合にもできるだけ円滑な入力が可能となるよう留意した。診療施設の情報システムによる自動出力の可能性を出来るだけ高め、かつ手入力でも対応可能な、実装を踏まえた現実的なFHIR記述仕様案を策定できたと考える。なお、用語/コードについては、さらに検討を行うこととしてるが、「透析情報標準項目第0.9版」には特に影響はない。今後、透析診療施設における情報システム導入の実態を踏まえて、電子仕様上での必須/任意の指定についての調整もあわせて行っていく。
結論
多くの皆様のご協力を得て令和4年度は「透析情報標準項目第0.9版」を纏めることができた。本項目案にはFHIRへのマッピングを含めており、これに基づいたFHIR記述仕様案の策定に至っている。本年度の成果に基づいて、令和5年度は「透析情報標準規格(FHIR記述仕様)」の発行を目指している。標準規格が全国の透析医療施設で採用されることで、平時から災害時まで、いつでもどこまでも患者さんの透析条件の確認が可能となるとともに、患者さん自身が電子的に保有できるようになることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202222075Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,330,000円
(2)補助金確定額
6,330,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 467,432円
人件費・謝金 1,619,981円
旅費 0円
その他 2,793,608円
間接経費 1,460,000円
合計 6,341,021円

備考

備考
自己資金 11,021円
アンケート調査を行った時の人件費が予算より上回った為の差異。

公開日・更新日

公開日
2024-03-07
更新日
-