文献情報
文献番号
202222070A
報告書区分
総括
研究課題名
保健師助産師看護師国家試験におけるコンピュータの活用に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA2008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 千津子(東京医療保健大学 千葉看護学部)
研究分担者(所属機関)
- 小黒 道子(東京医療保健大学 千葉看護学部)
- 勝山 貴美子(横浜市立大学 大学院医学研究科)
- 西崎 祐史(順天堂大学 革新的医療技術開発研究センター)
- 鋪野 紀好(千葉大学 医学部附属病院)
- 田所 由利子(東京医療保健大学 千葉看護学部)
- 窪田 和巳(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,606,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
看護師等国家試験へのコンピュータ活用については、令和2年度看護師等国家試験制度改善検討部会において、情報を整理し必要性・課題を積極的に検討することという提言がなされた。これに基づき主として試験運用の側面について諸外国と他職種での資格試験でのCBTの実施体制と現状、課題を整理すること、およびコンピュータ活用に関わる看護師養成所の現状を把握し、看護師等国家試験にコンピュータを活用するにあたって公正・公平かつ効果的・効率的な方法等を検討する基礎資料を提示する。
研究方法
研究A:日本の看護師等以外の資格・分野等の試験におけるCBT実施体制や問題作成から実施までの工程の実態、およびCBT導入までの契機や経緯等について、文献調査とインタビューで収集した。
研究B:看護師等免許取得試験でCBTを実施している米国、カナダ、イギリス、および他医療職者では実施している韓国を取り上げ、文献、関係機関への書面調査およびインタビューで収集した。
参考調査:全国の看護師養成課程をもつ学校(992校)の課程責任者等1名を対象とし、令和5年3~4月に、自校のICT環境と活用状況、CBTの利点・課題等について調査票を作成・郵送しオンラインで回答を得た。
研究B:看護師等免許取得試験でCBTを実施している米国、カナダ、イギリス、および他医療職者では実施している韓国を取り上げ、文献、関係機関への書面調査およびインタビューで収集した。
参考調査:全国の看護師養成課程をもつ学校(992校)の課程責任者等1名を対象とし、令和5年3~4月に、自校のICT環境と活用状況、CBTの利点・課題等について調査票を作成・郵送しオンラインで回答を得た。
結果と考察
研究A:日本の主要な国家資格/試験においてCBTを正式導入している事例はまだ限定的であること、試験日は複数日設定され1回の受験者数を会場に合わせて調整できること、一部試験では項目反応理論(IRT)に基づいた評価が行われていること、等が分かった。また、試験にはCBTシステム事業者の会場等が用いられ、セキュリティレベルは一定に保たれていることが確認された。インタビューからは、CBTの導入にあたって研修の実施、マニュアルの作成、問題プールの構築に努力をしていること、導入後にも継続的な評価を行い改善を図っていることが語られた。これらよりCBTはPBTと比較し実施が容易で人的負担が緩和される可能性があることがわかった。一方、CBT導入への理解を得たり、セキュリティの確保やPBTとは異なる不正行為対策が必要であることなど、公平・公正を保つ努力がPBTと同様に必要であると考えられた。
研究B:米国では導入から20年以上が経過し臨床判断モデルに基づく設問が追加され、カナダは自国の社会状況、看護システムを反映させたカナダ版のNCLEXが実施されていることが特徴的であった。イギリスではヨーロッパ圏以外から登録を希望する看護師の能力試験としてCBTが行われていた。韓国では、医師等でCBTが導入されているが、看護師は受験者数が多くコンピュータ確保が課題となり導入が見送られていた。しかし、国内複数地域でのCBTセンター開設が企画され導入が検討されることがわかった。いずれもCBT導入にあたり専門委員会や関係各所との議論を行い、時間をかけて理解を求め実施方法の整備を行っていた。日本でも保健医療人材の資格取得試験としてのビジョンを描き、状況に適したCBTを検討することが重要と考える。
参考調査:看護師養成課程256校より回答を得た(回収率25.6%)。ICT環境整備を推進している学校が多く、9割が授業でモバイル機器を活用していたが、学生用のPC台数やサポート専任者の有無は大学でより多く専門学校で少なかった。学内試験でICTを活用している学校は2割程度であり、大学で多く専門学校で少なかった。国家試験受験準備にモバイル機器を用いる・過去問題を用いる割合は学生・教員ともに高かった。国家試験へのコンピュータ活用の利点と課題は、いずれも多いと回答した学校が多かったが、専門学校では利点が多いとは思わないが半数を占めた。厚労省の問題登録システムは9割が知っていたが、登録したことがあるのは1割弱であった。学校のICT環境に関わらず、学生の準備機会が確保されるような仕組みを構築し、試験の公平性を担保する必要があると考える。
研究B:米国では導入から20年以上が経過し臨床判断モデルに基づく設問が追加され、カナダは自国の社会状況、看護システムを反映させたカナダ版のNCLEXが実施されていることが特徴的であった。イギリスではヨーロッパ圏以外から登録を希望する看護師の能力試験としてCBTが行われていた。韓国では、医師等でCBTが導入されているが、看護師は受験者数が多くコンピュータ確保が課題となり導入が見送られていた。しかし、国内複数地域でのCBTセンター開設が企画され導入が検討されることがわかった。いずれもCBT導入にあたり専門委員会や関係各所との議論を行い、時間をかけて理解を求め実施方法の整備を行っていた。日本でも保健医療人材の資格取得試験としてのビジョンを描き、状況に適したCBTを検討することが重要と考える。
参考調査:看護師養成課程256校より回答を得た(回収率25.6%)。ICT環境整備を推進している学校が多く、9割が授業でモバイル機器を活用していたが、学生用のPC台数やサポート専任者の有無は大学でより多く専門学校で少なかった。学内試験でICTを活用している学校は2割程度であり、大学で多く専門学校で少なかった。国家試験受験準備にモバイル機器を用いる・過去問題を用いる割合は学生・教員ともに高かった。国家試験へのコンピュータ活用の利点と課題は、いずれも多いと回答した学校が多かったが、専門学校では利点が多いとは思わないが半数を占めた。厚労省の問題登録システムは9割が知っていたが、登録したことがあるのは1割弱であった。学校のICT環境に関わらず、学生の準備機会が確保されるような仕組みを構築し、試験の公平性を担保する必要があると考える。
結論
本調査結果では、看護師等国家試験制度改善検討部会で示唆された危機管理等に向けたコンピュータ活用の利点が裏付けられた。その他、複数試験日の設定、試験問題の質管理、人件費負担の軽減等が期待できることがわかった。
課題は主として以下が示唆された。学校のICT環境にかかわらず受験生および教員が受験準備できるような仕組みを設計すること。会場として試験センター設置とCBTシステム事業者関連の会場利用等を比較検討し、複数日受験の場合も含め2,000~65,000人の受験可能な会場設計をすること。効率的かつ難易度が安定したより公平な試験を実施するため、問題プールの構築を強力に進めること。試験方法の検討とともに、コンピュータの利点を活かして国家試験でどのような能力の獲得を評価するのかについての本質的な議論から開始し、総合的なデザイン設計と試行・評価へと早期に検討を進めること。
課題は主として以下が示唆された。学校のICT環境にかかわらず受験生および教員が受験準備できるような仕組みを設計すること。会場として試験センター設置とCBTシステム事業者関連の会場利用等を比較検討し、複数日受験の場合も含め2,000~65,000人の受験可能な会場設計をすること。効率的かつ難易度が安定したより公平な試験を実施するため、問題プールの構築を強力に進めること。試験方法の検討とともに、コンピュータの利点を活かして国家試験でどのような能力の獲得を評価するのかについての本質的な議論から開始し、総合的なデザイン設計と試行・評価へと早期に検討を進めること。
公開日・更新日
公開日
2023-06-28
更新日
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