文献情報
文献番号
202222061A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質評価と医療情報の提供に関する調査研究
課題番号
21IA2018
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(東京医科大学 茨城医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 猪飼 宏(山口大学 医学部附属病院 医療情報部)
- 岩渕 勝好(山形市立病院済生館 呼吸器内科)
- 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
- 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
- 名越 究(島根大学医学部)
- 伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
- 藤本 賢治(産業医科大学産業保健データサイエンスセンター)
- 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
- 矢野 諭(一般社団法人 日本慢性期医療協会)
- 大出 幸子(学校法人 聖路加国際大学)
- 嶋田 元(聖路加国際病院 消化器・一般外科)
- 高橋 理(学校法人 聖路加国際大学)
- 堀川 知香(聖路加国際大学 聖路加国際病院 医療情報課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究責任者 福井次矢
所属機関名:聖路加国際大学(令和3年4月1日~3年9月30日)
→ 所属機関名:東京医科大学茨城医療センター(令和3年10月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
病む人が適切な医療を受けるためには、医療機関で提供される医療の質が高く、受診する医療機関を選択するための情報が必要である。本研究の最終目的は医療の質向上と情報提供体制の改善であり、令和4年度は下記の目的で2つの研究を行った。
1.医療の質指標(QI)の測定・データの収集・解析・フィードバック・改善という、一連の質改善のサイクルが回っているかどうかを可視化・検証する。
2.生活の質(患者QOL指標:EQ5D-5L値)が、QIとして採用できるかどうかを検証する。
1.医療の質指標(QI)の測定・データの収集・解析・フィードバック・改善という、一連の質改善のサイクルが回っているかどうかを可視化・検証する。
2.生活の質(患者QOL指標:EQ5D-5L値)が、QIとして採用できるかどうかを検証する。
研究方法
1.平成22年度~令和2年度に行われた厚生労働省『医療の質の評価・公表等推進事業』により、1,000程度の病院がQIを測定していると推定されている。一方、これまでの我々の研究班にて、多くの病院で測定・公開が望ましいと考えられる「共通QIセット」を提唱してきており、その中から上記1,000程度の病院で測定してもらえそうな指標を10~15程度選定し、厚生労働省事業に参加してきた9病院団体やその他の病院団体に測定(期間:令和3年3月~令和4年12月)を依頼した。
2.研究協力を受け入れていただいた全国の11病院にて、患者QOL指標を測定し(期間:令和4年8月~令和5年3月)、Health Gain値(術後QOL値と術前QOL値の差分)と退院後6か月時点の長期的QOL値について、治療術式ごとに分析した。
2.研究協力を受け入れていただいた全国の11病院にて、患者QOL指標を測定し(期間:令和4年8月~令和5年3月)、Health Gain値(術後QOL値と術前QOL値の差分)と退院後6か月時点の長期的QOL値について、治療術式ごとに分析した。
結果と考察
1.5病院団体の648病院が協力の意思を示され、1指標でもデータの提出があったのは524病院であった。524病院のうち、60%以上の病院が提出できたQIは、入院患者満足度、外来患者満足度、転倒転落発生率、転倒転落によるインシデント影響分類レベル2または3a以上の発生率、1か月間・100床当たりのインシデント・アクシデント報告件数、新規褥瘡発生率、脳梗塞患者への早期リハビリテーション開始率、30日以内の予定外再入院率、広域抗菌薬使用時の血液培養実施率、脳卒中患者に対する地域連携の実施割合の11種類であった。これらのQIについては、アウトカムはかなり良好で、短期間に劇的に改善を示したものはなかったものの、悪化したものもなく、一定程度、医療の質が維持されていると考えられた。
2.整形外科領域の筋・骨格系疾患を有する患者では、手術前後で、患者QOL改善が見られた。消化器外科領域の消化器系疾患を保持する患者では、退院直後には普段の生活に制限が残るが、不安やふさぎ込みの症状は改善されたことが示された。術前と術後のQOL値の差分であるHealth Gain値については、筋・骨格系疾患では0.06上昇し、消化器系疾患では0.04低下した。退院後6か月後のHealth Gain値については、今回の調査では回答数が少ないため限定的ではあるが、改善が認められた。
2.整形外科領域の筋・骨格系疾患を有する患者では、手術前後で、患者QOL改善が見られた。消化器外科領域の消化器系疾患を保持する患者では、退院直後には普段の生活に制限が残るが、不安やふさぎ込みの症状は改善されたことが示された。術前と術後のQOL値の差分であるHealth Gain値については、筋・骨格系疾患では0.06上昇し、消化器系疾患では0.04低下した。退院後6か月後のHealth Gain値については、今回の調査では回答数が少ないため限定的ではあるが、改善が認められた。
結論
1.協力を申し出ていただいた648病院のうち70%にあたる454病院は、日本医療機能評価機構やJCI(Joint Commission International)による外部評価を受けていたことからも、本来的に、自院が提供している医療の質について意識の高い病院が多いと言える。今後の課題は、そのような意識が必ずしも高くない、非常に多くの病院を、どのようにしてQIを用いた医療の質改善サイクルを根付かせるのかであろう。
2.入院時、退院時、退院後のQOLを知ることにより、提供した医療がどれだけ患者の生活の質に影響しているのか、より客観的に知ることができる。今回の研究で、術後のQOL値の推移に、疾患によってい異なる軌跡を描くことが分かり、QOL値の改善の有無と経過を明らかにするためには、長期的なデータの蓄積が重要であることが分かった。
2.入院時、退院時、退院後のQOLを知ることにより、提供した医療がどれだけ患者の生活の質に影響しているのか、より客観的に知ることができる。今回の研究で、術後のQOL値の推移に、疾患によってい異なる軌跡を描くことが分かり、QOL値の改善の有無と経過を明らかにするためには、長期的なデータの蓄積が重要であることが分かった。
公開日・更新日
公開日
2023-07-05
更新日
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