文献情報
文献番号
200923020A
報告書区分
総括
研究課題名
ライフスタイルの変化に伴う妊娠希望時の妊孕性減弱に対する病態解明、新規診断法と治療法開発のための研究
課題番号
H21-子ども・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 英和(国立成育医療センター・周産期診療部・不妊診療科)
研究分担者(所属機関)
- 苛原 稔(徳島大学大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・発達医学)
- 小林 浩(奈良県立医科大学・産婦人科腫瘍学)
- 末岡 浩(慶應義塾大学・産科婦人科学)
- 楢原 久司(大分大学医学部・産科婦人科)
- 大須賀 穣(東京大学医学部・産科婦人科学教室)
- 藤井 順逸(山形大学大学院医学研究科・生化学分子生物学)
- 阿久津 英憲(国立成育医療センター・研究所・生殖・細胞医療研究部)
- 宮戸 健二(国立成育医療センター・研究所・生殖・細胞医療研究部)
- 岡村 匡史(国立国際医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ライフスタイルの変化により挙児希望年齢が高齢化するために起こる妊孕性減弱に対し科学的裏付けのあるエビデンスを獲得するとともに、新しい診断法・治療法を開発し生殖医療の質の向上を目的とする。
研究方法
挙児希望年齢が高齢化することで引き起こされる不妊の病態・原因は多種存在するため、病態を解明し治療法を開発するには多面的に研究する必要性があり、分担して研究を進めている。
結果と考察
・老化にともなう酸化ストレスの影響はヒト顆粒膜細胞のp38MAPKシグナルの伝達経路を変化させており、p38MAPKの局在変化を指標とした生殖細胞の老化検査に応用できる。
・卵子、顆粒膜細胞において加齢とともにミトコンドリア(mt)DNA copy数は減少しており、mtDNA copy数は妊孕性に影響する。
・マウスの加齢胚性幹(ES)細胞はトリソミー型の染色体異常率が有意に高く、加齢ES細胞はゲノム不安定性を内在することが示唆された。ES細胞を用いて、加齢が多能性性質の細胞に及ぼす影響を分子レベルで解明することができる。
・子宮内膜症はHNF-1betaを過剰発現することにより、①グリコーゲン蓄積、②抗アポトーシス作用、③酸化ストレスによる活性酸素により解毒酵素など酸化ストレス関連遺伝子発現が過剰発現した。
・Th17細胞が子宮内膜症病巣局所に集積している。この現象は各種炎症サイトカインを介して子宮内膜症間質細胞からのCCL20産生を増やしてTh17を局所に集積させた。
・20%酸素で培養したSOD1欠損胚では細胞周期の調節に関与するp16の発現が特に亢進していた。一方、1-2細胞胚とは異なり、4細胞期のSOD1欠損胚を通常酸素に曝すとアポトーシスが起こり、ミトコンドリアが関わる可能性が高いと推測された。
・膜4回貫通型タンパク質CD9を含む膜構造体(エキソソーム)が受精時の膜融合に関与していること、エキソソームにはCD9欠損卵子の融合異常を回復させる活性がある。
・ACE2が高発現すると精子-卵透明帯結合が抑制され、ACE2の機能が阻害されると精子-卵透明帯結合が促進することから、ACE2は精子-卵透明帯結合に、負の制御を行う重要な分子である事が示された。
・卵子、顆粒膜細胞において加齢とともにミトコンドリア(mt)DNA copy数は減少しており、mtDNA copy数は妊孕性に影響する。
・マウスの加齢胚性幹(ES)細胞はトリソミー型の染色体異常率が有意に高く、加齢ES細胞はゲノム不安定性を内在することが示唆された。ES細胞を用いて、加齢が多能性性質の細胞に及ぼす影響を分子レベルで解明することができる。
・子宮内膜症はHNF-1betaを過剰発現することにより、①グリコーゲン蓄積、②抗アポトーシス作用、③酸化ストレスによる活性酸素により解毒酵素など酸化ストレス関連遺伝子発現が過剰発現した。
・Th17細胞が子宮内膜症病巣局所に集積している。この現象は各種炎症サイトカインを介して子宮内膜症間質細胞からのCCL20産生を増やしてTh17を局所に集積させた。
・20%酸素で培養したSOD1欠損胚では細胞周期の調節に関与するp16の発現が特に亢進していた。一方、1-2細胞胚とは異なり、4細胞期のSOD1欠損胚を通常酸素に曝すとアポトーシスが起こり、ミトコンドリアが関わる可能性が高いと推測された。
・膜4回貫通型タンパク質CD9を含む膜構造体(エキソソーム)が受精時の膜融合に関与していること、エキソソームにはCD9欠損卵子の融合異常を回復させる活性がある。
・ACE2が高発現すると精子-卵透明帯結合が抑制され、ACE2の機能が阻害されると精子-卵透明帯結合が促進することから、ACE2は精子-卵透明帯結合に、負の制御を行う重要な分子である事が示された。
結論
ライフスタイルの変化に伴う妊孕性減弱に対する、診断治療に係わる種々の物質の存在していることが判明し、またその変動・機能についての研究が順調に進んでいる。
公開日・更新日
公開日
2010-06-01
更新日
-