乳幼児突然死症候群(SIDS)における病態解明と臨床的対応および予防法開発とその普及啓発に関する研究

文献情報

文献番号
200923015A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児突然死症候群(SIDS)における病態解明と臨床的対応および予防法開発とその普及啓発に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
戸苅 創(公立大学法人 名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 高嶋 幸男(国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科)
  • 市川 光太郎(北九州市立八幡病院 小児救急センター)
  • 中山 雅弘(大阪府立母子保健総合医療センター 検査科)
  • 的場 梁次(大阪大学大学院医学系研究科 法医学)
  • 平野 慎也(大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科)
  • 横田 俊平(横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学)
  • 中川 聡(国立成育医療センター 手術集中治療部)
  • 山口 清次(国立大学法人島根大学医学部)
  • 成田 正明(三重大学大学院医学系研究科・ゲノム再生医学講座・発生再生医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SIDS発症率の軽減を目指して病理組織学的、遺伝子的、関連疾患との鑑別法の検討などから、SIDSの病態解明についての検討を行う。SIDS類似疾患であるALTE(Apparent Life Threatening Event:乳幼児突発性危急事態)についての全国調査から、ALTE定義見直しの必要性およびSIDS, ALTE診断の体制作りを検討し、最終的には標準化された診断基準に基づいたSIDS 症例の組織バンクを構築することを目的とする。また生理学的検討から予防法の確立をめざし、社会的啓発の必要性についても検討を行う。
研究方法
病理組織学的検討、遺伝子的検討、関連疾患との鑑別法の検討などを行った。組織バンク構築に関しては、日本SIDS学会症例検討委員会での症例登録システム、ドイツ ミュンスターでの組織バンクシステムなどを参考として、大阪府をパイロット的な対象ととらえ、地域組織バンクの構築を検討した。わが国における医療現場でのALTEの認識度および定義改訂の必要性を検討するため、ALTEについて全国の小児医療施設、救急医療施設に対してアンケート調査を行った。さらに低出生体重児での無呼吸の頻度、初期研修医においてのSIDS認識度の調査などを行った。
結果と考察
生理学的、組織学的、遺伝子的検討によりSIDS症例ではカテコラミン・セロトニン減少、特に細胞外(活性化)セロトニンが減りSIDSが発症するという機序が予測された。また鑑別疾患として脂肪酸代謝異常症などの代謝異常症を念頭におく必要性が示唆された。鑑別組織バンクの構築にあたっては大阪大学法医学教室、大阪府監察医事務所、大阪府立母子保健総合医療センター検査科(病理及びマス・スクリーニング)の協力の下に、組織バンク構築を倫理的、法的に検討中である。
ALTEについては臨床現場での混乱が生じている可能性が示唆された。今後、定義の見直し等の必要性が示唆された。生理学的検討から低出生体重児では無呼吸が起こる可能性が示唆された。SIDSに対する理解については初期研修医での知識の普及は充分とはいえず、医療従事者も含む社会的啓発が必要と思われた。
結論
SIDSの病態解明、予防法確立、社会的啓蒙の必要性が認識された。また診断方法の統一とそれに基づいた組織バンク構築が重要課題である。

公開日・更新日

公開日
2010-07-08
更新日
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