文献情報
文献番号
200923014A
報告書区分
総括
研究課題名
全新生児を対象とした先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染スクリーニング体制の構築に向けたパイロット調査と感染児臨床像の解析エビデンスに基づく治療指針の基盤策定
課題番号
H20-子ども・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 憲二(旭川医科大学 小児科)
研究分担者(所属機関)
- 森内 浩幸(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
- 吉川 哲史(藤田保健衛生大学小児科)
- 山田 秀人(北海道大学大学院 医学研究科)
- 伊藤 裕司(国立成育医療センター 周産期診療部新生児科)
- 久保 隆彦(国立成育医療センター 周産期診療部産科)
- 泰地 秀信(国立成育医療センター 耳鼻咽喉科)
- 藤原 成悦(国立成育医療センター研究所 母児感染研究部)
- 錫谷 達夫(福島県立医科大学 微生物学)
- 井上 直樹(国立感染症研究所 ウイルス第1部)
- 岡 明(杏林大学 医学部 小児科)
- 大石 勉(埼玉県立小児医療センター 保健発達部感染免疫科)
- 古谷野 伸(旭川医科大学 小児科)
- 浅野仁覚(福島県立医科大学 周産母子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
21,780,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、2008年度から3ヵ年計画で、(1)先天性CMV感染のスクリーニングを行い先天性感染の頻度を明らかにするとともに、(2) 同定された感染児コホートを形成し長期にフォローすることで臨床像を明らかにし、(3)頭部画像解析、妊婦及び感染児の免疫学的解析、血清型や遺伝子型解析、ウイルス学的解析などを行うことにより感染ルート・後遺症発生のリスク因子などを明らかにする。さらに、(4)治療ガイドライン(案)に基づき必要に応じて抗ウイルス薬による治療を行い、エビデンスをもとに治療の基準や指針を策定していく事を目的としている。
研究方法
両親の同意のもとに紙おむつ中で特殊濾紙に新生児の尿を採集した。陽性児から、CMVに対する免疫応答及びウイルス量の出生後の変化の解析などを目的として血液・尿を継続的に採取し、また聴力や発達などの神経学的フォローを頭部画像所見とあわせ小児科で行った。その他、ウイルスの血清型や遺伝子型の違いを同定する系を確立し感染経路や感染形態の解析を行った。
結果と考察
2009年度までに17,695名にスクリーニングを実施し、56名の先天性CMV感染児を同定している。陽性児54名の臨床像を解析すると、明らかな症候性児が10名、軽度の異常を含めると合計20名程度に何らかの異常があった。CMV-IgM検査では、半数以上(42例中24例)が陰性であることから、IgM検査は先天性CMV感染児の同定には不十分であった。先天感染児の血中、尿中ウイルス量の解析では、症候性児のみウイルス量が高値である、あるいは長期に陽性であるとは限らなかった。症候が出現する危険因子解析のため、感染児の頭部画像所見および免疫能のデータ集積、解析が行われている。症候性児のうち7名に対して、研究班で作成した治療ガイドラインに基づき、Ganciclovir及びValganciclovir投与による治療を行った。ウイルス学的には全例のウイルス量が減少し効果は明らかであった。さらに遅発性の難聴に対しても一定の効果が得られており、今後のさらに治療実績があがると期待される。先天感染児の同胞の尿中からCMVを同定できた14例で、感染児のウイルス遺伝子と比較したところ、14組中13組で遺伝子型が一致した。つまり自然感染した乳幼児の尿や唾液が妊婦の初感染のリスクとなっていると考えられた。
結論
先天性CMV感染は約300人に1人と高率に発生し、その1/3から1/4に何らかの症状が出現している。小児保健分野においてダウン症と同程度の解決すべき課題であることが示された。
公開日・更新日
公開日
2010-06-01
更新日
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