文献情報
文献番号
202222043A
報告書区分
総括
研究課題名
医師の適切な確保のための研究
課題番号
20IA2005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
角田 徹(公益社団法人 日本医師会)
研究分担者(所属機関)
- 神村 裕子(日本医師会)
- 細川 秀一(公益社団法人日本医師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,240,000円
研究者交替、所属機関変更
日本医師会役員改選により、令和4年6月末で代表研究者が今村聡から角田徹へ変更、分担研究者が橋本省から細川秀一へ変更となった。変更内容については既に報告しており、厚労相の承認済み。厚労省GrantsSystemにも連絡済。
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省からの指定補助事業として運営している「日本医師会女性医師バンク(以下女性医師バンク)」を活用し、厚生労働省との連携による復職支援事業を通じて医師確保策を検討し提示する。具体的には、ドクターバンクの在り方、都道府県医師会との連携による医師確保対策ならびに広報活動等、地域医療確保に貢献できる女性医師バンクの事業展開について研究する。
研究方法
1.ドクターバンク間の効果的な連携形態を探るため、女性医師バンクと都道府県医師会との連携形態を研究するモデル事業を継続。2.都道府県医師会ドクターバンク体制の実態と将来に向けた方向性ならびに女性医師バンクとの連携を含むニーズを把握するため、全国47都道府県医師会を対象に医師バンク実態調査を行った。3.将来のキャリアプランをヒアリングすることで、新たな働き方に通じる顕在・潜在的ニーズを把握し、女性医師バンクの事業展開の糸口を求めることを目的として、医育機関に勤務・所属する医師に向けたアンケート調査を行った。4.広報活動について、広報用動画の上映、リリース済媒体の継続、新規ツールの投入等により、有効な情宣機会と媒体は何かを探った。
結果と考察
1.令和4年度のモデル事業の実績は以下の通り。情報共有数70件、成立数11件。内訳は「千葉県医師会:情報共有68件、成立数11件」「静岡県医師会:情報共有0件、成立数0件」「兵庫県医師会:情報共有0件、成立数0件」「岡山県医師会:情報共有2件、成立数0件」であった。千葉県医師会とそれ以外の医師会における情報共有数ならびに成立数の差は、千葉県医師会が巨大マーケットである「東京都」に隣接していること、連携方式が女性医師バンクからの出先出店方式であり、求職者情報の共有がスムースにできたことが要因。千葉県以外の医師会は業務提携方式であり、情報共有には求職者の同意を得ることが前提となるが、求職者が多忙のため登録の二度手間などを理由に同意に応じてくれないケースが頻発し、情報共有の絶対数が少ない結果となった。情報提供の同意取得について、女性医師バンクの登録時対応に工夫が必要である。2.都道府県医師会において、独自でドクターバンクを設立しているのは22県、設立していないのは25県であった。設置しない理由は「県が開設済」「各大学で実施」「あまり需要がない」等であった。また、女性医師バンクに支援してほしいことは、「求職者の情報共有」が最も多く、システム上の連携や女性バンクによるダイレクトな業務支援等が続いた。各都道府県医師会の事情は一律ではなく、それぞれに合わせた施策が必要であるが、「ドクターバンク有り」「ドクターバンク無し(設立検討中)」「ドクターバンク無し(設立予定なし)」の3グループに分類した施策立案に繋げたい。また、求職者目線からみたドクターバンクの利用価値を踏まえた形態を検討する必要がある。3.医育機関に勤務・所属する医師に向けたアンケート調査では有効回答数3,659件を得た。将来の医師としてのキャリアについて、開業医を選択したのは1,124名であり30.7%であった。医師が臨床を離れた経験を補ううえであったらよいと思うサポートや、開業する際にあったらよいと思うサポートについて自由意見が寄せられ、それらに関する情報収集と提示、ならびにそれらから浮かび上がった勤務医のニーズを医療施設に開示し、医療施設の魅力ある体制づくりに役立てる等、女性医師バンクにとどまらない医師バンクの今後の事業展開の糸口になりうるニーズの収集ができたものと思料する。4.広報活動については、まず学会でのブース出店で行った広報用動画とノベルティによる認知度向上策は、月ベースでの新規登録者数が増加した結果から、効果があったと思料する。また、「医師の多様な働き方を支えるハンドブック」はその内容が評価され、前年度比約4,000冊増の20,272冊の配布実績となった。新規求職登録者数は着実に増加傾向にあり、上記取り組みは女性医師バンクの周知と親和性の向上に資したと思料する。
結論
女性医師バンクの求職者情報を都道府県医師会ドクターバンクと連携した場合、一定数の成立件数があったことから、課題はあるものの、連携による全国ベースの連合体構築について可能性を追求したい。また、医育機関に勤務・所属する医師に向けた調査により得られたデータから、ニーズの高い分野についてのサポート策や、求人施設に向けた体制づくり提案など、女性医師バンクの将来に向けた事業展開の糸口を得ることができたと思料する。広報活動はその組織を世に知らしめ、親和性を高める活動であり、効果のあった施策について連綿と継続していく。
公開日・更新日
公開日
2023-06-07
更新日
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