不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200923009A
報告書区分
総括
研究課題名
不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 滋(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉浦 真弓(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 丸山 哲夫(慶應義塾大学 医学部)
  • 田中 忠夫(東京慈恵会医科大学 医学部 )
  • 竹下 俊行(日本医科大学 産婦人科)
  • 山田 秀人(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 小澤 伸晃(国立成育医療センター 周産期診療部)
  • 中塚 幹也(岡山大学 大学院保健学研究科)
  • 木村 正(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 藤井 知行(東京大学 医学部附属病院)
  • 下屋 浩一郎(川崎医科大学 医学部)
  • 山本 樹生(日本大学 医学部)
  • 藤井 俊策(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 佐田 文宏(国立保健医療科学院 疫学部社会疫学室)
  • 康 東天(九州大学 大学院医学研究院)
  • 早川 智(日本大学 医学部)
  • 一瀬 白帝(山形大学 医学部)
  • 柳原 格(独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター研究所)
  • 秦 健一郎(国立成育医療センター 周産期病態研究部)
  • 森本 兼曩(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 勝山 博信(川崎医科大学 医学部)
  • 高桑 好一(新潟大学 医歯学系医学科)
  • 堤 康央(大阪大学 大学院薬学研究科)
  • 中野 有美(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における不育症の実態を明らかにすることを目的に不育症のリスク因子、各リスク毎の治療成績、精神的なサポート体制、基礎的・臨床的立場からみた広汎な研究を行ない、不育症の治療成績を向上させることを目的とした。
研究方法
新規不育症例に対して不育症のスクリーニングを行ない、各リスクの頻度を明らかにするとともに各治療法別の生児獲得率を検討した。
また、不育症例における精神的ストレス、子宮奇形、凝固因子異常、遺伝エピジェネティック要因、環境要因、免疫要因につき各班員もしくは多施設で共同研究を行なった。
結果と考察
新規で不育症1430組を登録し、すべての検査をしている378例でリスク因子を検討した。また645例が妊娠したので、各リスク因子毎の成功率、各治療毎の成功率、治療群と無治療群で比較したところ、子宮形態異常、甲状腺機能異常、Protein S欠乏症、抗PE抗体陽性例では治療した方が有意に成功率が高率であった。
不育症の精神的ストレスに関しては不育症スクリーニングを行ない治療方針を説明をすることにより、有意にストレスが改善することが明らかとなり、現在、班員による多施設共同研究を進めている。また、夫も参加する不育症学級を立ち上げて夫婦で精神的ストレスを改善する試みを始めた。さらに不安、緊張、怒り、他者への敵意が高い人は拒絶反応を誘導するTh1免疫が優位であった。不妊症においてもストレスがあれば着床率が低いことも判明した。さらに大うつに近い不育症例に対する認知行動療法の有効性が示された。
社会的な啓発として不育症に対するQ&Aを作成し情報を公開している。その他の臨床、基礎研究では、流産絨毛で一部の症例でインプリンティング遺伝子のメチル化異常が確認され、ナノマテリアルが生殖毒性をもつことも初めて明らかとなった。生殖免疫、血液凝固、病理学的立場からも多くの新知見が得られた。
結論
不育症の登録も1430組となり、多くの臨床データを集積しつつある。また初年度に不育症の精神的なストレスが問題となったが、いくつかの解決策も見えてきた。さらに基礎的にも流産絨毛のインプリンティング異常、ナノマテリアルの生殖毒性など重要な発見がなされた。また社会的にも本研究班の活動がマスメディアに取り上げられるようになり「不育症」という言葉も一般人に知られるようになってきた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
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