骨粗鬆症予防のための危険因子に関する研究

文献情報

文献番号
199700612A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症予防のための危険因子に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
折茂 肇(東京都老人医療センタ-院長)
研究分担者(所属機関)
  • 清野佳紀(岡山大学医学部教授)
  • 鈴木隆雄(東京都老人総合研究所部長)
  • 江見充(日本医科大学老人研教授)
  • 羽田明(北海道大学医学部助教授)
  • 橋本勉(和歌山県立医大教授)
  • 中村哲郎(東京都老人医療センタ-医長)
  • 細井孝之(東京大学医学部講師)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
30,020,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多因子性疾患である骨粗鬆症の危険因子は遺伝因子と環境因子の2群に分けることができる。それぞれの因子群が複数のものからなりたつ骨粗鬆症は多因子性疾患の一つでである。本症の予防や治療の方法を確立するためには、運動や栄養などの環境因子の解析のみならず、遺伝因子の解析が不可欠である。骨粗鬆症の遺伝因子を解析する際に最も重要な2点は、1.複数の遺伝因子の関与が想定されるため、多角的な遺伝子解析が大きな母集団についてなされなければならないと 2.confounding factorとしての環境因子に関する考慮が必要であること、である。本研究班は骨粗鬆症の遺伝因子の解明を広い視野に立って分子生物学的に推し進めるとともに、遺伝因子と環境因子の相互作用について明らかにするし、骨粗鬆症予防のための危険因子を総合的に明らかにすることを目的とする。
研究方法
1.調査対象:秋田県のある村において、環境因子(ライフスタイル)の調査ならびに2-3年にわたる骨量測定の追跡がなされている高齢者、男女あわせて約1000人を対象とした。これらの対象のうち、姉妹例の存在を確認した。さらに群馬県のある村において、閉経後女性の姉妹例(sib-pair)をのべ300名収集し、骨量測定ならびに遺伝子多型性の解析を行なった。また成長/成熟期における同様の検討を行なうために高校1年生を母集団とした検討も行なった。
2.遺伝子多型性の解析:対象の末梢血液白血球からDNAを抽出した。骨代謝に関与する骨代謝に関連する他のホルモン受容体、サイトカイン、サイトカイン受容体の各遺伝子とその近傍についてRFLP(restriction fragment length polymorphism)ならびにmicrosatelliteによる多型性を解析した。骨代謝に関連する遺伝子のうち、これまでに多型性が報告されていないものについては、PACライブラリ-からのスクリ-ニングにより、microsatellite部位の同定を行ない、遺伝子解析に用いた。
3.結果の解析:骨密度と遺伝子多型性、環境因子との関連を統計的に解析を行ない、骨粗鬆症の発症に関する危険因子を多角的に検討した。さらにsib-pair analysis の手法をもちいた解析を行なう。
結果と考察
閉経後女性の集団において、遺伝子多型性によって分類された群間で骨密度ならびに骨代謝 関連マ-カ-につきANOVAによる分散分析を行なった。その結果、vitamin D3受容体(VDR)、estrogen受容体(ER)、副甲状腺ホルモン、apolipoprotein E(ApoE)の遺伝子については、特定の多型性をもつ群が他の群に比較して、Z scoreであらわした骨密度が有意に低値であることが判明した。さらに、新しく単離された遺伝子マ-カ-のうち、calcium sensing receptor遺伝子、matrix gla protein遺伝子近傍のそれぞれのmicrosatellite polymorphismが骨量と有意な関連をもつことが判明した。また、高齢者男性群においてもER遺伝子の多型性が前腕骨遠位端の骨量と関連することが見い出された。現時点ではそれぞれの遺伝子多型性のうち低骨密度と関連するものの分布は統計学的には独立したものであり、骨粗鬆症の遺伝的背景、あるいは主要となる原因遺伝子が単一ではないことが示唆された。環境因子も含めた重回帰分析を行ったところ、遺伝子多型性はこの解析後にも有意な寄与率を保つものと有意性が認められなくなるものとに分類された。
姉妹間で骨量を比較すると、その違いは非姉妹間に比べて有意に小さかった。このことから、我々の収集した閉経後女性の姉妹例について遺伝子多型性(特にmicro-
satellite)を用いたsib-pair analysisを行なう意義が確認されたと考えられ、検討を進めている。
結論
高齢者女性の骨量について環境因子と遺伝因子の面から多角的に検討し、骨粗鬆症の危険因子を解明する作業を進めた。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)