看護職及び特定行為研修修了者による医行為の実施状況の把握・評価のための調査研究

文献情報

文献番号
202222038A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職及び特定行為研修修了者による医行為の実施状況の把握・評価のための調査研究
課題番号
22IA1012
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 川上 勝(自治医科大学 看護学部)
  • 前原 正明(蒲田リハビリテーション病院)
  • 見城 明(福島県立医科大学 医学部)
  • 飯室 聡(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
  • 釜萢 敏(公益社団法人 日本医師会)
  • 木澤 晃代(日本看護協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,330,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では持続可能な医療体制構築に向けて様々な対策が講じられ、「特定行為に係る看護師の研修制度」(以下「特定行為研修制度」)は、2015年(平成28年)度にはじまり現時点で7年が経過した。この間、社会情勢の変化や科学技術の発展などにより、医療を取り巻く状況は以前とは大きく変化し、看護職が担うべく役割が制度発足時点とは異なっている可能性がある。しかし、看護職による診療の補助業務の実態は制度発足以来調査されていない。そこで、制度発足前に実態調査した医行為(以下、前回調査医行為)203行為について、今年度は特定行為研修制度の見直しに向けた基礎資料を得るため、特定行為に関連する学協会団体等(以下、調査対象)が想定している看護師が担う医行為の推進意向等を確認した。
研究方法
特定行為および診療の補助業務に関連する医学系および看護系の学協会121団体を対象とし、参加同意の得られた団体に対してメールにて回答用URLを送付し、Web調査で無記名のアンケート調査を実施した。調査期間は2022年10月~2023年1月とし、団体として「既に推進している」もしくは「今後推進する予定」である医行為、特定行為として追加を希望する医行為、学会認証の資格等について問うた。また、希望に合わせて、特定行為制度および特定行為に関連する意見を聴取した。
結果と考察
調査参加に同意した64団体(52.9%)のうち回答があった49団体(76.6%)(医学系27団体、看護系20団体、その他2団体)を分析対象とした。
①医行為に対する見解:特定行為である38の医行為のうち24行為は、「実施を推進している」もしくは「今後実施を推進したい」(以下、推進の意向あり)と回答した団体が3割以上で、「動脈穿刺による採血」や「気管カニューレ交換」は医学系の団体において5割を超えた。また、対象全体のうち2割以上が「実施を推進している」と回答した医行為は「創部洗浄・消毒」や「褥瘡の壊死組織のデブリードマン」など特定行為を含む6行為であった。さらに、医学・看護学系両方の団体で3割以上「今後実施を推進したい」と回答したのは、エコー検査や整腸剤等の薬剤調整を含む35行為だった。一方、医学・看護系団体の推進の意向を示す割合の相関係数はr=0.694(p<.00)だった。医学系が看護系より20%以上の差をもって推進の意向の多い医行為群は、検査関連、呼吸器関連等であった。両系団体の推進の意向が類似していた医行為群(±5%以内)で多かった行為は、呼吸器関連が「挿管チューブの抜去」等5行為、日常生活関連では「飲水の開始・中止の決定」等5行為、検査関連では「経腹部的膀胱超音波検査の実施」等4行為であった。その一方で、各種薬剤関連では特定行為を含む医行為が多かった。
②医行為に関するガイドラインやプロトコル等の整備状況:「あり」と回答は26団体。
③学会資格や認定制度の整備状況:12団体が独自の資格や認定制度を整備。
④追加を希望する医行為:術中麻酔と創傷管理、検査に関連する医行為であった。
⑤医行為に関する団体の意向:診療の補助業務の中でも、検査に係る手技の促進に関する意見があった。また、特定行為に関する看護師の研修制度に関連して、医師への特定行為に関する周知を進めていくことや看護師の専門力を高める環境づくりに関連する発言があった。
特定行為である医行為の多くは各団体にとって関連する医行為の実施を推進する意向であった一方、比較的侵襲性と専門性が高い医行為は特定行為に含まれていても意向は一部の団体に留まっていた。これらは、通常業務内で比較的頻度が高く、侵襲性が中程度である医行為は団体としても推奨しやすいが、実施頻度が相対的に稀で高度な知識と技術を要し、高侵襲な医行為を看護師が担うべきと考える団体は限定的であると考えられる。また、看護師が実施することの推進には、医学・看護系団体間でやや強い相関があったことから、全体としては共通している傾向が確認できた。一方、特定行為に限らず共通して推進の意向が高い医行為もあり、看護師が実施することの安全性が確保できれば、タスク・シフト/シェアできる医行為として検討できると考える。また、各団体における研修や認証資格に関しては、実施を推進する医行為に関連する内容を中心に整えている傾向があり、今後、各団体の研修や資格制度の教育内容を精査していく必要があると考える。
結論
特定行為に関連する団体において看護師に実施を推進する医行為には特定行為が含まれた一方で、実施を推進している医行為のすべてが特定行為と一致しているわけではなかった。また、特定行為に関連する各団体は、実施を推進する医行為に特化して整えている傾向があった。今後、各団体の研修や資格制度の教育内容を精査し、安全なタスク・シフト/シェアのための活用可能性も検討できると考える。

公開日・更新日

公開日
2023-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
2023-06-16

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202222038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,500,000円
(2)補助金確定額
9,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 771,416円
人件費・謝金 2,643,344円
旅費 81,715円
その他 3,833,525円
間接経費 2,170,000円
合計 9,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-06-16
更新日
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