文献情報
文献番号
200923007A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦における先天異常モニタリングの構築と外的・環境因子サーベイランスに関する研究
課題番号
H19-子ども・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
平原 史樹(横浜市立大学 大学院医学研究科 生殖生育病態医学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先天異常の誘因となる環境因子にはさまざまなものがあり,現代の生活環境は危険因子が満ち満ちているといっても過言ではない.すなわち先天異常の発生要因には遺伝的背景因子もあれば,発生異常に関与するさまざまな生物学的因子,化学的,物理的因子によるものなど多様なものがある.これまでにもサリドマイドを始め複数の外的先天異常発生要因がすでに先天異常モニタリングシステム,更には奇形発生毒性学の進歩の中から指摘されており,これらの有害因子を常時継時的に定点監視し,何らかの変動を早期に感知して、その変動を分析するシステム(先天異常モニタリング・サーベイランスシステム)は母児の健康保護,健康政策上きわめて重要である.本研究は前述した目的を達成するために,全国においてのモニタリング実績をもとに解析するものである.
研究方法
本研究ではこの先天異常発生要因の存在を疫学的観点から全国レベル(日本産婦人科医会)、地域(東海3県、神奈川県、石川県)において集積,集計された情報をもとに先天異常発生状況を解析検討し,また2000年12月に厚生省より通知された葉酸による神経管閉鎖障害の発生リスク低減への情報提供に基づいた本邦における一般女性の葉酸摂取状況.さらにはその影響を及ぼすと推定される神経管閉鎖障害発生動向等の検討をあわせおこなうと同時にその栄養学的視点から若年女性の葉酸摂取状況,食品中の葉酸含有レベルの検討を行った。
結果と考察
いずれのモニタリング集計においても先天異常児出産頻度は2%弱であり、心室中隔欠損が最も多く、ついで口唇・口蓋裂、ダウン症、水頭症などが高頻度発生異常であった。昨年の調査と比し、若干の順位の入れ替えはあるものの上位の高頻度異常はほぼ同様の傾向であった。神経管閉鎖障害の一つである二分脊椎は1998年以降,発生頻度の微増傾向が続いていたが2003年前後を境に歩留まり傾向が続いており,若干の増加傾向への抑制が見られている.また現在の食事摂取基準策定の指標となっている赤血球葉酸濃度やtHcy 濃度を下回っている者はほとんどおらず、摂取量も推奨量240 gをほぼ充足していることが判った。しかし、NTDや心筋梗塞、脳梗塞などの疾患を予防するための指標である基準値を充足するには、不十分であると推定された.
結論
本年度調査から,本邦における新たな特段の先天異常発生要因の検出結果は得られていない.
葉酸摂取に関する認識度は改善しつつあるものの,未だ妊娠前からの摂取については十分改善されておらず,さらなる情報伝達方法の検討が必要と考えられた。
葉酸摂取に関する認識度は改善しつつあるものの,未だ妊娠前からの摂取については十分改善されておらず,さらなる情報伝達方法の検討が必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2010-05-25
更新日
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