「遺伝子関連・染色体検査」の精度の確保に係る基準の明確化に関する研究

文献情報

文献番号
202222033A
報告書区分
総括
研究課題名
「遺伝子関連・染色体検査」の精度の確保に係る基準の明確化に関する研究
課題番号
22IA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
宮地 勇人(新渡戸文化短期大学 臨床検査学科)
研究分担者(所属機関)
  • 矢冨 裕(国際医療福祉大学 大学院)
  • 田澤 裕光(京都大学医学部附属病院 クリニカルバイオリソースセンター)
  • 大西 宏明(杏林大学 医学部臨床検査医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゲノム医療の実用化に向けた議論に基づき、安全で適切な医療提供の確保を推進するため、検体検査の精度の確保を含む医療法等の一部改正が2018年に施行された。そこでは、検体検査の中に、「遺伝子関連・染色体検査」の分類が新設され、その実施における基準と規制が我が国で初めて定められた。すなわち、責任者の配置、内部精度管理の実施などが義務として求められた。我が国の環境・体制整備の現状を鑑みて、外部精度管理調査の受検と検査室の第三者認定の義務化は見送られ、それぞれ努力義務、勧奨とされた。本研究の目的は、新型コロナウイルス病原体核酸検査の立ち上げや拡充において露呈した第三者認定や従事者研修の課題を踏まえて、遺伝子関連・染色体検査の品質・精度について、今後さらに具体的な推進を図るため、技術的、人材育成等の観点から可能と考える内容について提案を行うこととした。
研究方法
1) 遺伝子関連・染色体検査サービスの信頼性と客観性の指標となる第三者認定の義務化を求める上で、必要な基準について、技術の進歩を踏まえて、実効性ある具体的な案の設定が必要となる。先端技術を要する検査(次世代シークエンシングなど)や迅速・簡便な全自動化された核酸増幅検査など多様な検査を一定の指標で分類し、それぞれに必要な検査室の能力を明確化し、第三者認定の義務化に必要な基準案を設定した。先行する海外の先進事例として、米国における外部精度管理の調整、モニタリングの仕組み、第三者認定に関する規制と運用の実態を学ぶため、ウェブ会議による関係機関のヒアリングを行った。
2)遺伝子関連・染色体検査の外部精度管理調査が利用出来ない検査項目に関して、それに準ずる効果を期待できる低コストかつ容易な代替法の提示が必要となる。その提示案は
、国際規格 ISO 15189(臨床検査室の品質と能力)や「遺伝子関連検査に関する日本版べストプラクティスガイドライン」(日本臨床検査標準協議会)など既存資料を参照し、上記ヒアリングを通した海外の先進事例を参考に作成した。
3)遺伝子関連・染色体検査の外部精度管理調査の受検による精度への影響を第三者にも分かるように定量的に把握する方法を提示するため、学会・学術団体が実施してきた外部精度管理調査に関する資料を活用し、継続実施の結果を分析した。
4)遺伝子関連・染色体検査の従事者を対象とした研修内容・方法等の指針等の策定が必要である。このため、国際規格ISO 15189と関連規格において求められている要員の力量として知識と技能およびその評価方法を明確化した上で、遺伝子関連・染色体検査を自ら実施している施設における実態調査と実績や学会・学術団体で行われている認定資格、研修会・講習会の状況を踏まえて策定した。
結果と考察
・遺伝子関連・染色体検査の実施において第三者認定を求める基準として、病理検体等の品質評価、マルチプレックス解析 、シークエンシング、システムの一部が研究用試薬・自家調製試薬(laboratory-developed test)の何れかとした。
・遺伝子関連・染色体検査の外部精度管理調査が利用出来ない検査項目に関して、それに準ずる効果を期待できる代替法は、その方法について代替理論に基づき明確化し、選択肢と選択基準及び推奨度からなる実用的な運用フローを提示した。
・ 遺伝子関連・染色体検査の外部精度管理調査の受検による精度への影響について、既存の資料の分析によって、調査参加した際の評価に基づく継続的な精度の維持と向上を図られることを示した。また、ヒト試料による調査実施の困難な点を解決する目的で、産業技術総合研究所が開発した標準物質(がん遺伝子EGFRエクソン20挿入)を検査施設に配布し、検査室の能力評価とそれに基づく、診断・治療への影響を把握する上でデータ取得し、その有用性を確認した。
・ 遺伝子関連・染色体検査の従事者を対象とした研修内容・方法等の指針等の策定については、全ての従事者に必要なスキルと、一部の研究・開発者に必要な高度なスキルに分けて到達目標を提示した。人的な面、管理的な面で、検査の精度の確保を強化するため、従事者について管理者と測定者に分けて、それぞれに対する研修内容・方法の指針を策定した。
結論
本研究において、遺伝子関連・染色体検査における第三者認定を義務として求める基準案の設定、外部精度管理調査の代替法の明確化、外部精度管理調査の受検による精度への影響を定量的に把握する方法、従事者の研修内容の提示がなされた。これらの成果は、我が国において、平時においては安全で良質ながんゲノム医療や遺伝学的検査に基づく難病診療の推進を支援するとともに、次なるパンデミック時の感染危機において、速やかに精度確保されたPCR等の立ち上げと拡充の後押しとなり、感染制御と社会生活基盤の維持に貢献すると期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202222033C

収支報告書

文献番号
202222033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,940,000円
(2)補助金確定額
4,940,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,231,619円
人件費・謝金 944,238円
旅費 35,760円
その他 625,244円
間接経費 1,140,000円
合計 4,976,861円

備考

備考
(2)補助金確定額4,940,000円に対して、支出「合計」4,976,861円となり、36,861円の差額が発生した。研究代表者(新渡戸文化短期大学)において、人件費支出について予定を7,061円超過した。その理由は、事務職員における年度末(3月)の研究班会議資料準備や報告書作成等の作業負担が増加し、人件費が想定を上回ったため。また、研究分担者(京都大学)への分担研究費800,000配分のところ、物品費829,800円支出となり、29,800円の支出超過となった。その理由として、物品(調査資料)購入にあたり、見積もりが当初想定価格を上回った。なお、銀行口座預金における利息21円を支出に充当した。

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-