医療機関内の医療事故の機能的な報告体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202222030A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関内の医療事故の機能的な報告体制の構築のための研究
課題番号
22IA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
木村 壯介(一般社団法人日本医療安全調査機構)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 哲郎(国際医療福祉大学 医学部)
  • 後 信(九州大学病院 医療安全管理部)
  • 南須原 康行(北海道大学病院 医療安全管理部)
  • 秋元 奈穂子(立教大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,941,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療事故調査制度は、医療事故の再発防止を図る制度として平成27年10月1日に施行された。令和4年12月末までの7年3ヶ月で「医療事故」の発生報告2,548件、院内事故調査の結果報告書2,222件がセンターへ報告された。しかしながら、本制度が広く理解され事故対応が均霑化しているかに関しては議論がある。例えば人口で補正した都道府県別医療事故発生報告件数や、病床規模が同等の医療機関でも報告数にばらつきがあることが指摘されている。医療機関で死亡が発生してから医療事故として報告されるまでの過程には、死亡事例の把握、医療事故該当性の判断、遺族への説明などと並行して状況の保全や院内調査に向けた情報収集等も進める必要がある。しかし、医療機関でこれらの初期対応が円滑に行われているかの実態は明らかではなく、医療機関が抱える課題や必要な支援の内容も明らかになっていない。そこで本研究では、特に死亡の発生から医療事故報告までの初期対応における医療機関内の体制に焦点をあてて実態調査を行い、抽出された課題から機能的な医療事故報告体制の確立に必要な要素を同定し、医療事故報告体制に関する手引き(仮)や訓練方法の開発を通じて医療機関の円滑な初期対応に資することを目的とする。
研究方法
全国の医療機関における医療事故報告体制の実態把握、海外における医療事故報告体制の調査、医療事故発生時の初期対応訓練方法の開発の3つのグループに分けて実施している。第1グループの研究者は医療関係団体代表者、法律専門家、安全管理者、患者団体代表者、第2グループは法律専門家、安全管理者、第3グループは第1グループと同様の構成とした。本研究は2年間の計画である。まず1年目には、第1グループで全国の医療機関における医療事故報告体制の実態調査としてアンケートを実施し、対象、アンケート調査票の内容、分析方法の検討ならびにアンケートの実施および回収、分析を行った。第2グループでは海外における医療事故報告体制に関する文献調査、第3グループでは、初期対応訓練方法の開発に向けて文献調査を行った。本研究の実施にあたっては、倫理委員会の承認を得ている。アンケート結果における個人情報について、その保護、管理を厳重に行う。なお、アンケート調査で知り得た医療機関の情報等については、目的以外の使用は行わない。
結果と考察
今年度は、アンケート調査「医療機関における医療事故の報告体制の実態調査」を実施することとし、その調査項目について検討しアンケート調査票を作成した。アンケート調査票は、約9000施設(全国の全病院(20床以上)、有床診療所(1~19床)はランダム抽出)に送付し、回答率は24%であった。次に、海外の事故報告制度の確認のため、主にアメリカ、イギリスについて調査を行っている。アメリカについては、連邦レベル及び州レベルにおける医療事故の調査・報告制度を概観し、制度の特徴について調査した。一方、イギリスについては、国際的な関心が高まっている患者安全対策は、国レベルのポリシーが定められるなど、重要な施策として認識されていた。さらに、初期対応訓練方法の一つとして教材となる動画作成を行うにあたって、知識として必要な項目と実践(ロールプレイなどによる訓練)が必要となる項目について洗い出した。また、医療機関の規模やその機能、マンパワーなどの状況によって必要項目が異なると考えられるため、規模別の必要項目の分類も検討した。
2年目に向けては、アンケート調査の結果をもとに、医療事故報告の実績がある施設とない施設の特性比較、報告実績と関連する因子の検索、病床規模別・病院機能別等との関連の有無を含めて分析を行う。また、海外の事故報告制度におけるAHRQ(連邦ヘルスケア研究・品質局)による共通フォーマットや、ニューヨーク州保健局NYPORTS REPORTING GUID(NYPORTSレポーティングガイド)では事故対象の分類などが詳細に明文化されており、今後手引き(仮)作成時に参考になると考える。さらには、知識として必要な項目と実践が必要となる項目を抽出した結果をもとに、医療事故調査の初期対応訓練方法の開発を行い、既存の研修等に活用できるようにする。
結論
今年度は、死亡の発生から医療事故報告までの初期対応における医療機関内の体制に焦点をあてて医療機関の実態調査を行い、その結果から課題を抽出し、機能的な医療事故報告体制の確立に必要な要素について検討した。加えてアメリカやイギリスの事故報告制度の状況を調査した結果も含め「医療事故報告体制に関する手引き(仮)」について検討し、その結果を訓練方法の開発を通じて医療機関の円滑な初期対応に繋げる。

公開日・更新日

公開日
2023-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202222030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,091,000円
(2)補助金確定額
6,186,000円
差引額 [(1)-(2)]
905,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 84,958円
人件費・謝金 1,686,322円
旅費 138,200円
その他 4,127,418円
間接経費 150,000円
合計 6,186,898円

備考

備考
補助金確定額は1,000円以下を切り捨てしたことによる。

公開日・更新日

公開日
2024-02-28
更新日
-