小児難治性先天異常症に対する幹細胞遺伝子細胞治療法の開発と臨床応用

文献情報

文献番号
200923003A
報告書区分
総括
研究課題名
小児難治性先天異常症に対する幹細胞遺伝子細胞治療法の開発と臨床応用
課題番号
H19-子ども・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 雅史(国立成育医療センター 研究所 成育遺伝研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター 研究所)
  • 清河 信敬(国立成育医療センター 研究所 発生・分化研究部)
  • 奥山 虎之(国立成育医療センター 臨床検査部)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部生殖発達医学講座 小児科学分野)
  • 久米 晃啓(自治医科大学 分子病態治療研究センター 遺伝子治療研究部)
  • 梨井 康(国立成育医療センター 研究所 移植・外科研究部 移植免疫研究室)
  • 掛江 直子(国立成育医療センター 研究所 成育政策科学研究部 成育保健政策科学研究室)
  • 大津 真(東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療研究分野)
  • 有賀 正(北海道大学 大学院医学研究科 小児科学分野)
  • 岡田(岩田)真由美(東京都立東大和療育センター 小児科)
  • 小林 信一(国立成育医療センター 第一専門診療部 膠原病・感染症科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 慢性肉芽腫症(CGD)は食細胞の異常で、病原体を殺菌する活性酸素を産生するNADPHに異常があり、その構成因子のX連鎖型gp91phox欠損がその主体をなす。症状として、幼児期からの重度の感染症と諸臓器における肉芽腫形成が上げられ、現時点で根治療法とよべるものはHLAが一致した造血幹細胞移植しかない。本研究では、小児難治性先天異常症に対する造血幹細胞遺伝子細胞治療の開発とその臨床応用に向け、国立成育医療センターが中心となってCGDに対する造血幹細胞遺伝子治療を行い、包括的な遺伝子治療の実施体制を構築する。
研究方法
 本研究では、研究内容を主に遺伝子治療の安全性、有効性を評価する前臨床研究と実際の造血幹細胞遺伝子治療実施に向けた臨床研究に分け、各々の研究者が分担して複数の研究を並行して行った。
結果と考察
 前臨床研究としては、1) ヒト造血幹細胞への遺伝子導入に関わるサイトカンを検討し、ヒトCD34陽性細胞への至適遺伝子導入法を確立した。2)CGDの原因遺伝子であるgp91phoxの宿主に対する抗原性を確認するため、血清中の抗gp91phox抗体を測定するELISAキットを作製した。3) レトロウイルスベクター挿入による白血病発症の機序を染色体上に1コピーのプロウイルスを持つマウスを用いて解析し、白血病の発症にはsecond hitとしての他の遺伝子変異が必要であることがわかった。4) 非染色体挿入ベクターとしてのAAVベクターの有用性を検討した。
 臨床研究としては、1)我が国における造血幹細胞移植を受けたCGDの現状と死因の解析、2) flow cytometryを用いたCGD病型診断の検討、3) 現在までの諸外国におけるCGD遺伝子治療の進捗状況に関する情報の収集、4) 遺伝子治療臨床研究実施計画書の作成、6) 国立成育医療センター内に遺伝子導入室を整備し、病院を含めた実施体制を構築した。

結論
本研究では、前臨床研究と臨床研究を通して、CGD遺伝子治療実施に必要な実験結果や遺伝子治療に関する情報が入手され、それに基づき遺伝子治療臨床研究実施計画書を作成された。尚、当実施計画書は、平成22年1月22日に国立成育医療センター政策医療企画課に提出され、平成22年5月31日に開催される第一回遺伝子治療臨床研究審査委員会にて実施に向けた実質的な審議が開始される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200923003B
報告書区分
総合
研究課題名
小児難治性先天異常症に対する幹細胞遺伝子細胞治療法の開発と臨床応用
課題番号
H19-子ども・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 雅史(国立成育医療センター 研究所 成育遺伝研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉辻 忠俊(国立成育医療センター 研究所)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター 研究所)
  • 清河 信敬(国立成育医療センター 研究所 発生・分化研究部)
  • 奥山 虎之(国立成育医療センター 臨床検査部)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部 生殖発達医学講座小児科学分野)
  • 久米 晃啓(自治医科大学 分子病態治療研究センター 遺伝子治療研究部)
  • 梨井 康(国立成育医療センター 研究所 移植・外科研究部 移植免疫研究室)
  • 掛江 直子(国立成育医療センター 研究所 成育政策科学研究部 成育保健政策科学研究室)
  • 大津 真(東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療研究分野)
  • 有賀 正(北海道大学 大学院医学研究科 小児科学分野)
  • 岡田(岩田)真由美(東京都立東大和療育センター 小児科)
  • 小林 信一(国立成育医療センター 第一専門診療部 膠原病・感染症科)
  • 立石 宰(国立成育医療センター 第一専門診療部 膠原病・感染症科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 慢性肉芽腫症(CGD)は食細胞の異常により発症し、病原体を殺菌する活性酸素を産生するNADPHに異常があり、その構成因子のX連鎖型gp91phox欠損がその主体をなす。症状として、幼児期からの重度の感染症と諸臓器における肉芽腫形成が上げられ、現時点での根治療法はHLA一致造血幹細胞移植のみである。本研究では、このCGDに対し、国立成育医療センターが中心となって造血幹細胞遺伝子治療を行い、我が国における包括的な遺伝子治療実施体制を構築する。
研究方法
 本研究は、平成19年から3年間、研究内容を遺伝子治療の安全性、有効性を評価する前臨床研究と実際の遺伝子治療臨床研究に向けた臨床研究に分け、研究者が分担して複数の研究を並行して行った。ただ、当初使用を予定していたレトロウイルスベクターSF91gp91に造血系異常が発症したため、急遽、ベクターをMFGSgp91に変更し、本研究の全ての過程を見直した。以下の示す結果はMFGSgp91に基づくものである。
結果と考察
 前臨床研究としては、免疫不全マウスを用いたヒト造血幹細胞ソースの検討で、臍帯血、骨髄、末梢血の順で未熟性が維持されていた。また、ヒトCD34陽性細胞の培養法や遺伝子導入法が検討され、バッグを用いた完全閉鎖系遺伝子導入法が確立された。同時に、gp91phoxの抗原性が検討され、抗体検出のためのELISA法が作製された。さらに、レトロウイルスベクター挿入による白血病発症の機序がマウスの系で示され、白血病の発症には挿入以外の遺伝子変異も必要であることが示された。臨床研究としては、幹細胞移植を含む我が国のCGDの現状が紹介され、また、諸外国での遺伝子治療の進捗状況も報告された。そして、これらを基にNIHのMalech博士らとの共同研究にてMFGSgp91を用いた遺伝子治療臨床研究実施計画書が作成され、国立成育医療センター内に遺伝子導入のための培養室やco-medicalを含めた病院サイドの実施体制も整備された。
結論
 本研究では、3年間の研究期間内に遺伝子治療実施に必要な実験結果や遺伝子治療に関する情報が入手され、それに基づき実施計画書を作成された。尚、実施計画書は、平成22年1月22日に国立成育医療センター政策医療企画課に提出され、第一回遺伝子治療臨床研究審査委員会が平成22年5月31日に開催される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200923003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒト造血幹細胞への特性及びその由来による未熟性の違いを免疫不全マウスを用いたin vivoの系で明らかにした。特に、遺伝子導入の際に必要とされるファイブロネクチンと細胞膜表面抗原の関係を明らかにし、その成果の一部をHum Gene Ther誌に発表した。また、レトロウイルス挿入による白血病発症のメカニズムを遺伝子改変マウスの系にて明らかにし、その成果をBlood誌に発表して多くの注目を集めた。
臨床的観点からの成果
平成22年1月22日に国立成育医療センターの政策医療企画課に提出した「慢性肉芽腫症に対する造血幹細胞遺伝子治療の実施計画書」は、同年5月31日 国立成育医療研究センター内の遺伝子治療臨床研究審査委員会にて審議される。その後複数回の審議の末、最終的に厚生労働省大臣からの承認が得られた段階で遺伝子治療臨床研究が開始されるが、本遺伝子治療は、有効な治療法が無い慢性肉芽腫症患者にとって朗報であり、また、本遺伝子治療の成果を国際的に発表していくことは最先端の医学の推進の大いに役立つ。
ガイドライン等の開発
 本研究により、我が国において遺伝子治療臨床研究を実施のための基盤整備がなされた。今後は、本遺伝子治療臨床研究を基とすることで、諸外国で行われている数多くの遺伝子治療臨床研究が我が国においても遅滞なく行われると思われ、本研究は貴重な遺伝子治療実施のモデルケースとなる。
その他行政的観点からの成果
 現在、我が国において遺伝子治療臨床研究を行う場合、厚生労働省厚生科学審議会(遺伝子治療臨床研究作業委員会)の審議を受ける。よって、本遺伝子治療を行うことは、行政的観点からも我が国の遺伝子治療臨床研究を推進することとなり、その意義は大きい。
その他のインパクト
 本遺伝子治療の有効性を広く国内に広めるため、医師や他分野の科学者に対して複数の科学系雑誌に遺伝子治療に関する総説を掲載し、また、一般の市民に対しても市民セミナーなどの講演で遺伝子治療の啓発を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
78件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirata Y, Hamanaka S, Onodera M.
Transactivation of the dopamine receptor 3 gene by a single provirus integration results in development of B-cell lymphoma in transgenic mice generated from retrovirally transduced embryonic stem cells.
Blood , 115 (19) , 3930-3938  (2010)

公開日・更新日

公開日
2013-05-14
更新日
-