生殖補助医療の医療技術の標準化、安全性の確保と生殖補助医療により生まれた児の長期予後の検証に関する研究

文献情報

文献番号
200923001A
報告書区分
総括
研究課題名
生殖補助医療の医療技術の標準化、安全性の確保と生殖補助医療により生まれた児の長期予後の検証に関する研究
課題番号
H19-子ども・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 泰典(慶應義塾大学医学部 産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 苛原 稔(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 産科婦人科分野)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療センター研究所 生殖・細胞医療研究部 )
  • 竹下 俊行(日本医科大学附属病院 産婦人科)
  • 齊藤 英和(国立成育医療センター 周産期不妊診療科)
  • 緒方 勤(国立成育医療センター研究所 小児思春期発達研究部)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学医学部 産婦人科)
  • 秦 健一郎(国立成育医療センター研究所 周産期病態研究部)
  • 石原 理(埼玉医科大学 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では第一に生殖補助医療由来児の精神的・身体的発達を含む長期予後調査、第二に生殖補助技術の安全・品質管理、第三に配偶子提供を中心とする新しい親子関係への精神的支援という、三課題を実現する枠組み構築を行うことを目的とした。
研究方法
 長期予後調査および特定不妊治療助成効率検証については日産婦データベースの解析、データベース構築に必要なハードウエアの解析、および各項目に必要なアンケート調査を行った。ARTの安全性検証については実験的検討を行った。
結果と考察
 長期予後調査について、日本産科婦人科学会オンライン登録システムを検証、特に急増する胚凍結治療に対応する新しいデータ構造構築が必要であるなど、変化するART手技に対応するため変更容易なシステムが必要である。ARTデータベースと周産期データベース連結の施策である母子手帳へのARTデータ記入については、クライエントはその必要性を認めているが、自分の子どもに関しては調査を希望しない傾向があった。また海外におけるART児長期予後調査体制および安全管理の一例として英国では、取り違え予防に対して電子識別など新技術導入と勤務者に対する継続的教育により安全管理を確保しており、一方匿名性を撤廃した提供配偶子の確保は精子・卵子双方について引き続き困難な状況で海外渡航により補われていた。
特定不妊治療助成制度については、比較的妊娠しやすい若年症例が治療開始の初回、2回目の治療周期に利用しており、効率よく利用されている。
 ARTの安全性については、Prader-Willi症候群患者の遺伝的発症原因解明を介し、高齢化が罹患率増加に強く関与していること、またARTに関わる因子が発症に関連することをつきとめた。一方周産期母子センターに対して行った卵子提供後分娩調査の結果、卵子提供分娩の全分娩に対する割合は10000例に1例程度で漸増傾向であり、妊娠高血圧の合併が多く、また異常出血の頻度が高いことが示唆され、母子センター担当者の過半数が、周産期母子センターで取り扱うべきであると考えていた。
配偶子提供を中心とする新しい親子関係への精神的支援については、AID施行施設に対する調査を行い、全ての施設において告知・出自を知る権利の重要性を夫婦に説明しており、また全ての施設で告知を考えている夫婦は少数だが認められることを明らかにした。
結論
結論は前項に含めた。

公開日・更新日

公開日
2010-07-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200923001B
報告書区分
総合
研究課題名
生殖補助医療の医療技術の標準化、安全性の確保と生殖補助医療により生まれた児の長期予後の検証に関する研究
課題番号
H19-子ども・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 泰典(慶應義塾大学医学部 産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 苛原 稔(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 女性医学分野)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療センター研究所 生殖・細胞医療研究部 )
  • 竹下 俊行(日本医科大学附属病院 産婦人科)
  • 齊藤 英和(国立成育医療センター 周産期不妊診療科)
  • 緒方 勤(国立成育医療センター研究所 小児思春期発達研究部)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学医学部 産婦人科)
  • 秦 健一郎(国立成育医療センター研究所 周産期病態研究部)
  • 石原 理(埼玉医科大学 産婦人科)
  • 岩崎 美枝子(社団法人家庭養護促進協会 大阪事務所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では第一に生殖補助医療由来児の精神的・身体的発達を含む長期予後調査、第二に生殖補助技術の安全・品質管理、第三に配偶子提供を中心とする新しい親子関係への精神的支援という、三課題を実現する枠組み構築を行うことを目的とした。
研究方法
 長期予後調査および特定不妊治療助成効率検証については日産婦データベースの解析、ARTの安全性検証については実験的検討を行った。その他の項目については主に郵送によるアンケート調査を行った。
結果と考察
 ART児長期予後調査については、現行の日産婦ARTオンライン登録システムには日進月歩のART治療技術に対応する柔軟なシステム構築が必要であるほか、生後28日以降のデータベースを新たに構築する必要がある。一方長期予後調査の必要性をART施行夫婦の80%、ART施設責任者の83%が認めているが、周産期・新生児データベースとの連携に有用な母子手帳や出生届へのART由来妊娠の記載には心理的抵抗が強い。また海外におけるART児長期予後調査体制および安全管理の一例として英国では、取り違え予防に対し電子識別などの新技術導入と勤務者に対する継続的教育により安全管理を確保しており、一方匿名性を撤廃した提供配偶子の確保は精子・卵子双方について引き続き困難な状況である。特定不妊治療助成制度については、比較的妊娠しやすい若年症例が治療開始の初回、2回目の治療周期に利用しており、効率よく利用されている。
 ARTの安全性については、まず生殖補助医療がインプリンティング疾患発症に及ぼす影響を、シルバーラッセル症候群とプラダーウイリ症候群を主たる対象疾患として解析し、生殖補助医療が、高齢出産のほかに、メチル化異常、体外培養、排卵誘発などを介してインプリンティング疾患発症に関与しうることを示唆するデータが得られた。一方我が国に於ける卵子提供分娩の全分娩に対する割合は10000例に1例程度で漸増傾向であり、妊娠高血圧の合併が多く、また異常出血の頻度が高いことが示唆され、母子センター担当者の過半数が、周産期母子センターで取り扱うべきであると考えていた。
 配偶子提供によって形成される親子への精神的支援として、AIDで親となった夫婦のうち告知を考えている夫婦は、6年前に比較して増えている傾向があり、またこれはAID治療機関医師へのアンケートでも裏付けられた。
結論
結論は前項に含めた。

公開日・更新日

公開日
2010-07-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200923001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ARTの安全性について、Prader-Willi症候群患者の遺伝的発症原因解明研究より、出産年齢の高齢化はtrisomy typeの第15染色体母親性ダイソミー患者の割合増加に強く関与している、高齢出産とは別の生殖補助医療に関わる因子がPWSの発症に関連するとの結果を得た。また我々が確立した異なる染色体上に散在するインプリント関連領域を網羅的に解析する系を用い、いくつかの稀な発生異常の同定を行うとともに、ART後妊娠のIUGR症例の胎盤を解析、DNAメチル化異常は検出されなかったとの結果を得た。
臨床的観点からの成果
周産期母子センターに対して行った卵子提供後妊娠・分娩の予後調査の結果、我が国における卵子提供妊娠・分娩の全分娩に対する割合は10000例に1例程度で漸増しており、妊娠高血圧、異常出血の頻度が高いことが示唆され、母子センター担当者の過半数が周産期母子センターで取り扱うべきであると考えていた。我が国におけるAID施行施設に対する調査では、回答が得られた全施設において告知・出自を知る権利の重要性を夫婦に説明しており、また全施設で告知を考えている夫婦は少数だが認められることが推察された。
ガイドライン等の開発
該当する事項はない。
その他行政的観点からの成果
国および地方自治体が行っている特定不妊治療助成制度については、日本産科婦人科学会ART登録データ中本制度への登録があるデータは27%、年齢層では35-39歳群が最も多く、続いて30-34歳群が多かった。治療周期あたりの妊娠率・生産分娩率はともに利用群で非利用群に比して高かった。治療周期あたりの生産分娩率もやはり利用群で高く、比較的妊娠しやすい症例が治療開始の初回、2回目の治療周期に助成制度を利用していることが多いことが推測され、本制度が効率よく利用されていると結論できた。
その他のインパクト
該当する事項はない。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kagami M, Nagai T, Fukami M, et al.
Sylver-Russell syndrome in a girl born after in vitro fertilization: partial hypermethylation at the differentially methylated region of PEG1/MEST.
Journal of Assisted Reproduction and Genetics , 24 (4) , 131-136  (2007)
原著論文2
Kagami M, Sekita Y, Nishimura G, et al.
Deletions and epimutations affecting the human chromosome 14q32.2 imprinted region: implications for the phenotypic development in paternal and maternal uniparental disomy for chromosme 14.
Nature Genetics , 40 (2) , 237-242  (2008)
原著論文3
Yamazawa K, Kagami M, Ogawa M, et al.
Placental hypoplasia in maternal uniparental disomy for chromosome 7.
American Journal of Medical Gneteics A , 146 (4) , 514-516  (2008)
原著論文4
Hosoki K, Ogata T, Kagami M, et al.
Epimutation (hypomethylation) affecting the chromosome 14q32.2 imprinted region in a girl with upd (14)mat-like phenotype.
European Journal of Human Genetics , 16 (8) , 1019-1023  (2008)
原著論文5
Yamazawa K, Kagami M, Nagai T, et al.
Molecular and clinical findings and their correlations in Silver-Russell syndrome: implications for the critical role of IGF2 as the growth determinant and the differential imprinting regulation of the IGF2-H19 domain in bodies and placentas.
Journal of Molecular Medicine , 86 (10) , 1171-1181  (2008)
原著論文6
Kagami M, Yamazawa K, Matsubara K, et al.
Placentomegaly in paternal uniparental disomy for human chromosome 14.
Placenta , 29 (8) , 760-761  (2008)
原著論文7
Yamazawa K, Kagami M, Fukumi M, et al.
Monozygotic female twins discordant for Silver-Russell syndrome and hypomethylation of the H19-DMR.
Journal of Human Genetics , 53 (10) , 950-955  (2008)
原著論文8
da Rocha ST, Edwards CA, Ito M, et al.
Genomic imprinting at the mammalian D1K1-Dio3 domain.
Trends in Genetics , 24 (6) , 306-316  (2008)
原著論文9
Ogata T, Kagami M, Ferguson-Smith AC
Molecular mechanisms regulating phenotypic outcome in paternal and maternal uniparental disomy for chromosome 14.
Epigenetics , 3 (4) , 181-187  (2008)
原著論文10
de Mouzon J, Lancaster P, Nygren KG, et al.
World collaborative report on assisted reproductive technology,2002.
Human Reproduction , 24 (9) , 2310-2320  (2009)
原著論文11
Chambers GM, Sullivan EA, Ishihara O, et al.
The economic impact of assisted reproductive technology: a review of selected developed countries.
Fertility and Sterility , 91 , 2281-2294  (2009)
原著論文12
Zegers-Hochschild F, Adamson GD, de Mouzon J, et al.
The International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology (ICMART) and the World Health Organization (WHO) revised Glossary on ART Terminology 2009.
Human Reproduction , 24 , 2683-2687  (2009)
原著論文13
Zegers- Hochschild F, Adamson GD, de Mouzon J, et al.
International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology (ICMART) and the World Health Organization (WHO) revised Glossary on Art Terminology 2009.
Fertility and Sterility , 92 , 1520-1524  (2009)
原著論文14
Kajihara T, Uchino S, Suzuki M, et al.
Increased ovarian follicle atresia in obese Zucker rats in associated with enhanced expression of the forkhead transcription factor FOXO1.
Medical Molecular Morphology , 42 , 216-221  (2009)
原著論文15
Hosoki K, Kagami M, Tanaka T, et al.
Maternal uniparental disomy 14 syndrome demonstrates Prader-Willi syndrome-like phenotype.
Journal of Pediatrics , 155 (6) , 900-903  (2009)
原著論文16
Kobayashi H, Yamada K, Morita S, et al.
Identification of the mouse paternally expressed imprinted gene Zdbf2 on chromosome 1 and its imprinted human homolog ZDBF2 on chromosome 2.
Genomics , 93 (5) , 461-472  (2009)
原著論文17
Takashima S, Takehashi M, Lee J, et al.
Abnormal DNA methyltransferase expression in mouse germline stem cells results in spermatogenic defects.
Biology of Reproduction , 81 , 155-164  (2009)
原著論文18
Shoji M, Tanaka T, Hosokawa M, et al.
The TDRD9-MIWI2 complex is essential for piRNA-mediated retrotransposon silencing in the mouse male germline.
Developmental Cell , 17 , 775-787  (2009)
原著論文19
Kobayashi H, Yamada K, Morita S, et al.
Identification of the mouse paternally expressed imprinted gene Zdbf2 on chromosome 1 and its imprinted human homolog ZDBF2 on chromosome 2.
Genomics , 93 , 461-472  (2009)
原著論文20
Henckel A, Nakabayashi K, Sanz LA, et al.
Histone methylation is mechanistically linked to DNA methylation at imprinting control regions in mammals.
Human Molecular Genetics , 18 , 3375-3383  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-