施設高齢者を対象にしたロボット・セラピーの方法論 -ロボット・セラピーの手引き開発に関する研究

文献情報

文献番号
200922020A
報告書区分
総括
研究課題名
施設高齢者を対象にしたロボット・セラピーの方法論 -ロボット・セラピーの手引き開発に関する研究
課題番号
H21-認知症・若手-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
和田 一義(首都大学東京 システムデザイン研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 薫(首都大学東京 人間健康科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、認知症の新たなケア手法として、動物型ロボットとの触れ合いによる心のケア、“ロボット・セラピー”の効果的な実施方法を実現するための手引き開発を目的とした。
研究方法
 ロボット・セラピーでは、実施者のわずかな対応の違いが利用者の行動に影響を及ぼし、実施者自身が介入の良さ/悪さに気付きにくいという問題がある。そこで、観察に基づき介入事例を収集、整理分析することにより、手引きを作成する。また、作業療法士に対するアンケート調査、本邦の医学専門雑誌に掲載されているペットロボットに関する文献調査により、ロボット・セラピーの留意点、課題を検討する。
 次に、作成した手引きを高齢者施設へ配布し、手引き読了前後にてロボット・セラピーを複数回実施し、実施者ならび利用者の行動観察、及び、実施者に対する聞き取り調査により手引きの有効性について予備的な調査を行う。
 なお、本研究は、首都大学東京健康福祉学部の研究安全倫理委員会の承認を受け、その下で実施された。
結果と考察
 都内5カ所の施設にて64回にわたり観察を行い、332例の介入事例を収集した。そして、収集した事例を基に、全7章、31ページからなる手引きを作成した。文献調査、作業療法士に対する調査より、ロボット・セラピーは対象者の精神面への良好な効果が期待できる一方、ロボットの使用に際して実施者による適切な支援が必要であり、それら情報をまとめた手引き書等の必要性が再確認された。
 また、手引き有効性検証のための予備的調査として、聞き取り調査を行い、10名中8名の実施者より「参考になった」との意見があった。一方、表現の改善、利用者の症状に合わせた対応や活用事例の追加などの要望もあった。観察による調査は、実施者1名、利用者2名を対象に行われ、手引き読了後、実施者の介入行動の促進、利用者の笑顔の増加が確認された。
結論
 観察によりロボット・セラピーの事例を収集、整理分析することにより、ロボット・セラピーの手引きを作成した。また、文献調査、作業療法士に対する調査より、手引きの必要性を再確認した。さらに、手引き有効性検証のための予備的調査を行い、効果的なロボット・セラピーを実現する可能性を持つことが示唆された。今後は、より多くの実施者、利用者について有効性検証のための調査を行う。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
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