医療現場や医療機関間等における情報利活用の環境整備に向けた医療用語の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
202222024A
報告書区分
総括
研究課題名
医療現場や医療機関間等における情報利活用の環境整備に向けた医療用語の標準化に関する研究
課題番号
21IA1020
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
今井 健(東京大学 大学院医学系研究科 疾患生命工学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 映善(国立大学法人愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 香川 璃奈(筑波大学医学医療系)
  • 明神 大也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、これまで医療分野の標準用語集・コードセットの策定が進められ、厚生労働省標準規格も制定されている。疾患では標準病名マスターの使用が広がっているが、薬剤でのHOT9コード、検査でのJLAC10コードについては共に2割弱程度の普及率に留まっており、十分利活用されていない。また人体部位、アレルギー、症状・所見、処置、生活機能、患者基本情報関連などの領域では、国内標準用語・コードセットが存在しておらず、診療情報の利活用上長年の課題となっていた。
そこで、本研究では健康医療情報の利活用のための標準的な医療用語集を領域ごとに整理し、医療情報の利活用の推進や次世代の規格である HL7 FHIRを用いた医療文書等への適用に向けた方法、課題を明らかにすることを目標とする。
研究方法
海外国内での標準用語集の活用実態については文献・ヒアリングにより調査を行った。領域ごとの標準用語集案の策定とHL7 FHIRを用いた医療文書への適用については、HL7 FHIR国内導入検討WGにおける議論と密接に連携し検討を行った。医療現場等での具体的な活用事例に基づいたシミュレーションについては、先行研究レビューと研究班内の議論により方式の検討を行った。
結果と考察
昨年度まで (1) 海外国内での標準用語集の活用実態調査、(2) 領域ごとの標準用語集案の策定とHL7 FHIRを用いた医療文書への適用検討、(3) 医療現場等での具体的な活用事例に基づいたシミュレーションを行い、特に (2) については国内で不足している人体部位領域の標準用語体系案 (J-ANAT) を策定している。本年度ではさらにこれらを進めると共に対象領域を拡充し、人体部位用語と共に問題となっていた症状所見用語領域について調査を行い、国内の標準用語集案を策定した。
調査の結果、これまでの我が国の症状所見分野についての国内の有力な用語リソースは (A) ICD-11 Foundation 和訳中の症状所見用語 (8,347語)、(B) 標準病名マスター中の症状所見用語 (1,952語)、(C) MEDIS 症状所見マスター中の症状所見用語 (1,303語)、(D) 電子カルテから機械的に抽出された語を収集した万病辞書中の症状所見用語 (2,056語)、などが考えられた。この中で最も語数が多いのは ICD-11 Foundation 中の症状所見用語であり、これは ICD-11 Foundation URI にてIDが付与され、またFoundationは複数の上位概念を許す階層関係によって体系化されたオントロジーとなっている。そこで今後の我が国の用語管理上、このICD-11 Foundation中の症状所見をベースとし、このオントロジー構造に他の用語を吸着し、紐づけるような整理が最も適切と考えられた。ICD-11 Foundation にない症状所見用語については該当する Foundation 用語の同義語、あるいは下位概念として国内で追加して管理するのが望ましい。
そこで ICD-11 Foundation以外の症状所見用語リソース (B)(C)(D) について、ICD-11 とのマッピングを行った。ICD-11 は 全ての用語プールである Foundation、そこから切り出された分類体系である MMS からなり、それぞれコードを持っている。Foundation は最も細かな用語概念を参照する際に用い、MMS は少し粗い粒度での分類・集計用途に用いられるものである。本研究ではこの Foundation、MMS双方の粒度を対象とし、元の用語から Post-Coordination を用いてマッピングを行った。またその際には意味的に等価「=」粒度の大小「>」「<」の関係も付与した。
結果として(A)〜(D)の4つを合わせると、全体で 9,156語、このうち2つ以上のリソースに現れる重複語は 561語しかなく、重複を除くと 8,514語の標準症状所見用語集案(J-SAF)が得られた。これらは全て ICD-11 Foundation、MMSの両方のレベルで Post-Coordination にて表現されており、互いに紐付けが可能となっている。またFoundation中の修飾語との組み合わせにより、より多くの用語概念が表現可能である。
結論
本年度は、昨年までの成果に加え領域ごとの標準用語集案の策定の対象拡張を行い、主に症状所見に関する国内標準用語集(案) J-SAF の策定を行った。
J-SAFは ICD-11 Foundation ベースの体系(構造)を有する国内の標準症状所見用語コーディングシステムとして今後の基盤となる貴重なリソースである。

公開日・更新日

公開日
2023-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202222024B
報告書区分
総合
研究課題名
医療現場や医療機関間等における情報利活用の環境整備に向けた医療用語の標準化に関する研究
課題番号
21IA1020
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
今井 健(東京大学 大学院医学系研究科 疾患生命工学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 映善(国立大学法人愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 香川 璃奈(筑波大学医学医療系)
  • 明神 大也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、これまで医療分野の標準用語集・コードセットの策定が進められ、厚生労働省標準規格も制定されている。疾患では標準病名マスターの使用が広がっているが、薬剤でのHOT9コード、検査でのJLAC10コードについては共に2割弱程度の普及率に留まっており、十分利活用されていない。また人体部位、アレルギー、症状・所見、処置、生活機能、患者基本情報関連などの領域では、国内標準用語・コードセットが存在しておらず、診療情報の利活用上長年の課題となっていた。
そこで、本研究では健康医療情報の利活用のための標準的な医療用語集を領域ごとに整理し、医療情報の利活用の推進や次世代の規格である HL7 FHIRを用いた医療文書等への適用に向けた方法、課題を明らかにすることを目標とする。
研究方法
海外国内での標準用語集の活用実態については文献・ヒアリングにより調査を行った。領域ごとの標準用語集案の策定とHL7 FHIRを用いた医療文書への適用については、HL7 FHIR国内導入検討WGにおける議論と密接に連携し検討を行った。医療現場等での具体的な活用事例に基づいたシミュレーションについては、先行研究レビューと研究班内の議論により方式の検討を行った。
結果と考察
米国ではSNOMED-CTはmeaningful-use Stage2の達成要件として、いくつかの項目をコーディングするための用語集として、約90%の病院に実装されていることが判明した。
対して、国内では厚生労働省標準規格として定められている標準用語集(コードセット)は限定的であり、標準病名マスターは電子カルテを導入する病院では導入が進んでいるものの、医薬品HOTコードマスター、臨床検査マスターなどはまだ普及率が低い実態が明らかとなった。
標準病名マスターについては今後ICD-11日本語版との統合が大きな課題と考えられ、また、HOTコード、JLAC10コードについては未だ比較的普及率が低いが、令和4年3月に新たに4つ厚生労働省標準規格に追加されたFHIR記述仕様にて参照されていることから、これらを皮切りに普及が向上するものと考えられる。
その他の領域については、特に身体部位については、多くのFHIRリソース・プロファイルから参照され、需要が高いにも関わらずこれまで国内の標準用語集が存在してこなかった。ICD-11のX章(拡張コード) 中の身体部位用語を活用し、J-ANATの基本的な枠組みを作成すると共に、外保連試案の部位用語やJJ1017とICD-11とのマッピングを作成し、研究班として標準用語集案 J-ANATの策定を行った。またアレルギー用語集として策定が進むJ-FAGYについては、ICD11のアレルギー用語を追加収載することとされた。処置については、FHIRではProcudureリソース定義で、国内の複数の用語セットを使用用途に応じてSlicingで選択する方式が妥当と考えられた。
症状所見についても、ICD-11 Foundation 和訳中の症状所見用語と標準病名マスター中の症状所見用語、MEDIS 症状所見マスター中の症状所見用語、万病辞書中の症状所見用語をICD-11コードで対応づけた標準用語体系であるJ-SYFの策定を行った。J-ANATもJ-SYFも共にICD-11をバックボーンに持ち、国内の既存リソースを尊重しながらもICD-11コードにて互いの紐付けを行うもので、本研究の提案方式の大きな特徴である。
医療現場等での具体的な活用事例に基づいたシミュレーションについては、MINDSライブラリを対象に、構造体系を有する標準用語集をガイドラインの検索利便の向上に利用するシナリオについて検討を行い有効な方式と考えられた。
結論
本研究では、(1)国内外の標準用語集の活用実態の現状調査、(2)領域ごとの標準用語集案の策定とHL7 FHIRを用いた医療文書等への適用に向けた検討、(3)医療現場等での具体的な活用事例に基づいたシミュレーションという、具体的な目標それぞれについて、(1) SNOMED-CTに関する実態調査、(2) 病名、薬剤、検査、身体部位、アレルギー、症状所見などを対象とした国内標準用語集のあり方とFHIR仕様での使い方、(3)診療ガイドラインの利便性の改善等に向けた医療用語集の活用をターゲットとしたシミュレーション方式の検討、を行った。各領域での標準用語案を策定すると共に、特に身体部位、症状所見については国内標準用語集案であるJ-ANAT、J-SYFの策定を行った。これらは ICD-11 Foundation ベースの体系(構造)を有する国内の標準用語コーディングシステムとして今後の基盤となる貴重なリソースである。

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202222024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健康医療情報の利活用のための標準的な医療用語集を領域ごとに整理し、次世代の診療情報交換規格である HL7 FHIR を用いた医療文書等への適用に向けた方法・課題の分析を行った。また国内で標準用語集が不足している代表領域のうち、身体部位・症状所見についてICD-11をバックボーンに据えた標準用語セット案 (J-ANAT、J-SAF)をそれぞれ策定すると共に、診療ガイドラインの検索利便性向上に向けた医療用語集の利活用シミュレーションを行った。
臨床的観点からの成果
我が国においては個々の領域で目的に応じて粒度とカバー範囲が異なる用語セットが開発・使用されてきた経緯があり、身体部位や症状所見でも複数の用語集が存在している。本研究ではICD-11 Foundation の体系をバックボーンに据え個々の用語集とのマッピングを行うことで、ICD-11コードにて統合的に対応づける方式を採用した。これにより、臨床現場での目的に応じた個々の用語集使用という従来の利便性を最大限損なわず、後に個々の用語の紐付けを行うための基盤が整った。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
診療情報利活用の推進に向け、身体部位用語や症状所見用語は多くのFHIRリソース・プロファイルから参照される用語セットであるが、我が国ではこの領域の標準用語セットに乏しく大きな課題となっていた。本研究の成果は我が国の体系(構造)を有する標準用語コーディングシステムの不足領域を補う貴重なリソースである。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
今井 健
ICD-11 の用語集としての活用と国内用語集との整合性担保に向けた課題
医療情報学 , 42 (Suppl.) , 462-467  (2022)

公開日・更新日

公開日
2023-07-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
202222024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,990,000円
(2)補助金確定額
2,990,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 202,800円
人件費・謝金 0円
旅費 112,000円
その他 1,985,200円
間接経費 690,000円
合計 2,990,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-05-17
更新日
-