要介護認知症の危険因子・抑制因子の探求に関する前向き疫学研究

文献情報

文献番号
200922019A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護認知症の危険因子・抑制因子の探求に関する前向き疫学研究
課題番号
H21-認知症・若手-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山岸 良匡(国立大学法人筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 朝田 隆(国立大学法人筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで脳血管疾患の予防対策を長期間継続してきた茨城県と秋田県の2地区において、1981年から1994年までの循環器疾患健康診査データと、2000年以降の介護保険データを突合して、コホート内症例対照研究を行い、要介護認知症の危険因子・抑制因子の探求を行うこととしている。本年度は、対象地域のうち茨城県の地域住民について2005年 3月まで要介護認知症発症を追跡し、主に抗炎症・抗酸化物質、血清脂質・脂肪酸を測定し、先行的な分析を行った。
研究方法
1984年から1994年までの茨城県某農村地域の基本健康診査の受診者のうち、2005年3月末までに要介護認知症を発症した179人を症例とした。また対照として同時期の健診受診者で、症例の認定日に生存している者を、健診受診年、健診受診年齢、性を1対2で症例とマッチさせた。これらの症例対照について、健診受診時の血清(非空腹時採血)をもとに、高感度C反応蛋白(hs-CRP)、ホモシステイン、各種脂肪酸並びに脂質を測定し、要介護認知症との関連を条件付きロジスティックモデルにより分析した。さらに要介護認知症を、脳卒中既往の有無別に分けた分析を併せて行った。
結果と考察
hs-CRPについては、脳卒中既往に関わらず要介護認知症発症との有意な関連は認められなかった。血清ホモシステインと脳卒中既往を伴う認知症との間に正の関連が認められた(1標準偏差増加当たりのオッズ比3.37(1.13-10.1))。この関連は脳卒中を伴わない認知症では認められなかった。血清LDL及びnon-HDLコレステロールについては、いずれも最も高いカテゴリにおいて認知症発症との間に関連が認められた。一方、HDLコレステロールについても正の関連が見られた。トリグリセライド値については特定の傾向を示さなかった。脳卒中既往の有無別の分析では、HDLコレステロールを除き、脳卒中既往を伴わない認知症よりも脳卒中既往を伴う認知症において、最も高いカテゴリにおけるオッズ比が高かった。血清脂肪酸に関しては、飽和脂肪酸、単価不飽和脂肪酸、ω-6系不飽和脂肪酸については、特定の傾向を示さなかったが、ω-3系不飽和脂肪酸が要介護認知症に対して抑制的に働く可能性が示され、特にαリノレン酸が1標準偏差当たりのオッズ比0.70(0.55-0.89)と強い負の関連を示した。この関連は、特に脳卒中を伴わない認知症においてより顕著に認められた
結論
要介護認知症の発症に対して、血清ホモシステイン及びLDLコレステロールの高値と血清ω-3系不飽和脂肪酸(特にαリノレン酸)の低値が促進的に作用する可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-