がんゲノム医療の発展に資する情報連携基盤の構築に向けた標準規格の開発研究

文献情報

文献番号
202222020A
報告書区分
総括
研究課題名
がんゲノム医療の発展に資する情報連携基盤の構築に向けた標準規格の開発研究
課題番号
21IA1016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 達也(国立研究開発法人 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 隆志(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所 ゲノム生物学研究分野)
  • 福田 博政(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター 情報利活用戦略室)
  • 玉井 郁夫(国立研究開発法人国立がん研究センター がんゲノム情報管理センターネットワーク・システム管理室)
  • 須藤 智久(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター)
  • 白石 友一(国立がん研究センター 研究所 ゲノム解析基盤開発分野)
  • 加藤 護(国立研究開発法人国立がん研究センターバイオインフォマティクス部門)
  • 高阪 真路(国立がん研究センター 研究所 細胞情報学分野)
  • 大熊 裕介(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
  • 柴田 大朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究支援センター 生物統計部)
  • 大江 和彦(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 企画情報運営部)
  • 土井 俊祐(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 山下 芳範(福井大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2019年6月、遺伝子パネル検査を用いたがんゲノムプロファイリング(以下、「CGP」)検査が保険収載された。保険診療では、解析により得られたシークエンスデータ及び臨床情報等を、患者の同意に基づき、医療機関等から国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(以下、「C-CAT」)に提出することとされている。
がんゲノム医療の普及に伴い、検査件数の増加が見込まれる中、情報登録を行う医療機関の負担軽減は喫緊の課題である。
本研究では、令和3年度を中心に、HL7 FHIR準拠の標準規格に関する検討を行い、今年度は、東京大学医学部附属病院と福井大学医学部附属病院の協力を得て、FHIR形式によるデータ連携の運用シミュレーションを行い、がんゲノム医療中核拠点病院等とC-CAT間の情報連携の標準規格仕様案をとりまとめ、全国のがんゲノム医療中核拠点病院等におけるシステム実装に資することを目指す。
研究方法
本研究は、(1)情報連携規格の現状調査、(2)各病院におけるデータ記述方法に関する調査、(3)HL7 FHIRの標準規格仕様案の策定、の3つの課題について検討する。
(1)情報連携規格の現状調査
令和3年度に、HL7 ver.2、HL7 ver.3、HL7 CDA、HL7 FHIR、CDISC標準、ISO13606、SS-MIX2、DICOM等の情報連携規格に関する調査を行った。
令和4年度は、医療現場における活用方法等を念頭に置いた医療従事者向けの資料の作成を行う。
(2)データ記述方法の標準化
 令和3年度に、がんゲノム医療中核拠点病院等や電子カルテベンダーを対象に、がんゲノム医療中核拠点病院等の電子カルテでのデータ記述方式や病院での運用実態等についての調査を行った。令和4年後は、調査結果を分析し、がんゲノム医療中核拠点病院等におけるデータ記述方法の標準化に関する検討を行う。
(3)HL7 FHIRの標準規格仕様案の策定
 上記の調査結果を踏まえて、がんゲノム医療中核拠点病院等とC-CAT間の情報連携におけるHL7 FHIR の適用性を検討し、HL7 FHIR標準規格仕様案を策定し、東京大学医学部附属病院及び福井大学医学部附属病院の協力を得て、運用シミュレーションを行う。シミュレーション結果を踏まえ、システム実装に向けた課題を検討する。
結果と考察
結果
(1)情報連携規格の現状調査
情報連携規格を整理した資料は技術的な内容が多く、情報技術職以外の医療従事者にとっては理解が困難な内容となっている。医療従事者向けとするため、医療現場における活用方法を主に記載し、技術論は簡潔に表現することで、医療情報技術を専門としない医療従事者にとっても、理解しやすい内容とした。
(2)データ記述方法の標準化
昨年度実施した、がんゲノム医療に携わる医療機関および電子カルテベンダーに対して行ったアンケート調査の結果を分析した。分析結果は、関連学会において報告し、医療情報技術に関する研究者、実務者や臨床腫瘍学に携わる医療従事者等に向けた情報発信を行った。
(3)HL7 FHIRの標準規格仕様案の策定
 昨年度作成したがんゲノム医療において登録される臨床情報収集項目をFHIR形式で記述するためのマッピングに関する仕様等を利用し、がんゲノム臨床情報収集項目が収載されているODMデータをFHIR形式に変換し送信する運用シミュレーションを行い、C-CAT側に用意したFHIRサーバに対して、REST APIを用いてFHIRドキュメント形式のデータを送信し、C-CATでのデータの登録と参照が可能であることを確認した。本研究の範囲では、FHIRリソースの分解登録ができない等の課題も確認されたが、がんゲノム臨床情報収集項目の情報連携にFHIRデータが利用できる可能性が示された。

考察
本研究において、がんゲノム臨床情報収集項目FHIR記述仕様案による情報連携において、HL7 FHIR形式のデータ連携システムが有用であることが示された。今後、がんゲノム領域において、HL7 FHIRの利用が進めば、システム間の相互運用の促進や診療支援に資する人工知能の開発等の二次活用に貢献することも期待される。
一方で、実際の運用に向けては、FHIRリソースの分解登録ができない、電子カルテ上のデータ抽出に用いるテンプレートデータの管理等の課題も示された。課題解決のためには、実運用に向けたさらなる検討が進むことが求められる。
結論
がんゲノム医療は全国で普及しつつあり、医療機関の負担軽減とともに、C-CATに登録された情報の利活用推進に資するよう、情報連携システムの開発が求められる。
本研究において、HL7 FHIR標準規格システムが有用である可能性が示されたことから、今後、がんゲノム医療中核拠点病院等での実装に向けたさらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202222020B
報告書区分
総合
研究課題名
がんゲノム医療の発展に資する情報連携基盤の構築に向けた標準規格の開発研究
課題番号
21IA1016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 達也(国立研究開発法人 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 隆志(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所 ゲノム生物学研究分野)
  • 福田 博政(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター 情報利活用戦略室)
  • 大垣内 多徳(国立研究開発法人国立がん研究センター がんゲノム情報管理センターネットワーク・システム管理室)
  • 玉井 郁夫(国立研究開発法人国立がん研究センター がんゲノム情報管理センターネットワーク・システム管理室)
  • 須藤 智久(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター)
  • 白石 友一(国立がん研究センター 研究所 ゲノム解析基盤開発分野)
  • 加藤 護(国立研究開発法人国立がん研究センターバイオインフォマティクス部門)
  • 高阪 真路(国立がん研究センター 研究所 細胞情報学分野)
  • 大熊 裕介(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
  • 柴田 大朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究支援センター 生物統計部)
  • 大江 和彦(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 企画情報運営部)
  • 土井 俊祐(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 山下 芳範(福井大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 2019年6月、がんゲノムプロファイリング(以下、「CGP」)検査が保険収載された。保険診療におけるCGP検査の算定においては、解析により得られた遺伝子のシークエンスデータ及び臨床情報等を患者の同意に基づき、医療機関等から国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(以下、「C-CAT」)に提出することとされている。
 がんゲノム医療の普及に伴い、検査件数の増加が見込まれる中、情報登録を行う医療機関の負担軽減は喫緊の課題である。本研究は、医療機関の負担軽減のために、がんゲノム医療に携わる病院(以下、「がんゲノム医療中核拠点病院等」)とC-CAT間の情報連携におけるHL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resource)規格の有用性を検討する。
 初年度を中心に、HL7 FHIR準拠の標準規格に関する検討を行い、2年次には東京大学医学部附属病院と福井大学医学部附属病院の協力を得て、FHIR形式によるデータ連携の運用シミュレーションを行い、がんゲノム医療中核拠点病院等とC-CAT間の情報連携の標準規格仕様案を作成し、全国のがんゲノム医療中核拠点病院等におけるシステム実装に資することを目的とする。
研究方法
本研究は、(1)情報連携規格の現状、(2)各病院におけるデータ記述方法に関する調査、(3)HL7 FHIRの標準規格仕様案の策定からなる、3つの課題について検討した。
(1)情報連携規格の現状調査
 初年度に、医療機関間の情報連携規格に関する現状調査とがん種の分類について現状の整理を行った。2年次は、初年度に得られた調査結果を、医療情報を専門としない医療従事者向けの資料の作成を行った。
(2)データ記述方法の標準化
 初年度に、がんゲノム医療中核拠点病院等や電子カルテベンダーを対象に、がんゲノム医療中核拠点病院等の電子カルテでのデータ記述方式や病院での運用実態等について調査を行った。2年次は、調査結果を分析し、がんゲノム医療中核拠点病院等におけるデータ記述方法の標準化に関する検討を行った。
(3)HL7 FHIRの標準規格仕様案の策定
 初年度には、上記の調査結果を踏まえて、保険診療で実施されるCGP検査において、がんゲノム医療中核拠点病院等とC-CAT間の情報連携におけるHL7 FHIR の適用性を検討した。2年次にはHL7 FHIR標準規格仕様案を策定し、東京大学医学部附属病院及び福井大学医学部附属病院の協力を得て、運用シミュレーションを行うとともに、システム実装に向けた課題の検討をおこなった。
結果と考察
結果
(1)情報連携規格の現状調査
初年度には、HL7 ver.2、HL7 ver.3、HL7 CDA、HL7 FHIR、CDISC標準、ISO13606、SS-MIX2、DICOMを対象とした調査を行った。2年次には、情報連携規格に関する医療従事者向けの資料を作成した。
(2)データ記述方法の標準化
 がんゲノム医療に携わる医療機関185施設(回答率79.4%)から回答を得た。電子カルテデータをSS-MIX2などの標準規格で出力するシステムは、44%(82施設)で採用されていた。電子カルテからの入力補助システム(テンプレート機能など)は13.5%(25施設)で採用されていた。電子カルテベンダー5社中、3社からはC-CATへのデータ入力に際し、医療機関より入力補助システム対応の要望があったと回答した。
(3)HL7 FHIRの標準規格仕様案の策定
 初年度は臨床情報収集項目の全項目をFHIR形式で記述するためのマッピングに関する仕様とFHIR形式でデータを送受信するためのデータ作成方法を策定した。2年次には、マッピングに関する仕様等を利用し、がんゲノム臨床情報収集項目が収載されているODMデータをFHIR形式に変換し送信する運用シミュレーションを行った。FHIRドキュメント形式のデータを送受信とC-CATでのデータ登録と参照が可能であることを確認した。

考察
 本研究において、HL7 FHIR形式のデータ連携システムが有用であることが示された。今後、がんゲノム領域において、HL7 FHIRの利用が進めば、システム間の相互運用の促進や診療支援に資する人工知能の開発等の二次活用に貢献することも期待される。
 一方で、実際の運用に向けては課題も示された。課題解決のためには、実運用に向けたさらなる検討が進むことが求められる。
結論
 がんゲノム医療は全国で普及しつつあり、医療機関の負担軽減とともに、C-CATに登録された情報の利活用推進に資するよう、情報連携システムの開発が求められる。
 本研究において、HL7 FHIR標準規格システムが有用である可能性が示されたことから、今後、がんゲノム医療中核拠点病院等での実装に向けたさらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202222020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がんゲノム医療における情報連携に関するHL7 FHIRの記述仕様等について日本医療情報学会等において成果発表をおこない、高い関心を得た。
臨床的観点からの成果
保険診療におけるがんゲノム医療に必要とされる情報登録の負担を軽減することで、がんゲノム医療の一層の進展が期待される。また、がんゲノム医療の情報利活用の向上にも貢献し、新たな治療法や医薬品の開発に資することが期待される。
ガイドライン等の開発
特記事項無し。
その他行政的観点からの成果
全国医療情報プラットフォームの創設に向けた検討や全ゲノム解析等実行計画に基づくゲノム医療の推進に向けた検討が進んでおり、研究成果の活用に向けた取組を検討する。
その他のインパクト
特記事項無し。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
202222020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
6,495,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,326,518円
人件費・謝金 109,400円
旅費 465,324円
その他 3,093,894円
間接経費 1,500,000円
合計 6,495,136円

備考

備考
自己資金136円

公開日・更新日

公開日
2023-12-14
更新日
-