「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」最終評価と次期計画策定に資する全国データの収集と歯科口腔保健データの動向分析

文献情報

文献番号
202222018A
報告書区分
総括
研究課題名
「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」最終評価と次期計画策定に資する全国データの収集と歯科口腔保健データの動向分析
課題番号
21IA1014
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(北海道医療大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 克郎(日本歯科大学東京短期大学)
  • 田野 ルミ(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
1,805,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、現行の基本的事項の最終評価と次期計画策定に必要な疫学知見を提供することを目的とする。前年度で得られた知見をもとに、歯・口腔の健康格差の可視化、政府統計データ分析による歯科保健指標の将来推計を行い、次期の基本的事項の策定や目標値設定に資する学術知見を提示する。 
研究方法
①歯科保健諸指標の将来予測:過去20年間の歯科疾患実態調査、国民健康・栄養調査、学校保健統計調査、地域保健・健康増進事業報告、厚生労働科学研究報告書・厚生労働省事業報告での歯科口腔保健データを用いた。3点以上の時系列データが得られる場合、直線回帰モデルの当て嵌めを行い2032年での予測値を求めた。
②公的統計データによる地域格差分析:国民健康・栄養調査と学科校保健統計調査の二次利用申請を行い、都道府県ごとの歯科関連項目に関して地域格差を明らかにした。③歯科医療サービス利用状況分析:Web調査の手法を用いて、かかりつけ歯科医の保有状況の地域差とCOVID-19パンデミック以降の歯科受診抑制が口腔健康状態に与える影響を調べた。
結果と考察
①歯科保健諸指標の将来予測:第2次プランで将来予測が可能であった指標は、齲蝕に関する指標、歯数に関する指標、歯肉炎に関する指標、障害児・者および要介護高齢者への定期的歯科検診に関する指標、過去1年間の歯科検診受診者に関する指標であった。歯周炎および咀嚼に関する指標については、3時点以上のデータを得ることはできたが、一定の傾向が確認できず直線回帰モデルを用いた予測値の算出は実施できなかった。
②公的統計データによる地域格差分析:国民健康・栄養調査の分析の結果、「80 歳で20 歯以上の自分の歯を有する者の割合」、「60 歳で24 歯以上の自分の歯を有する者の割合」、および「40歳以上における自分の歯が19歯以下の者の割合(年齢調整)」について地域格差が明確にみとめられた。学校保健統計調査の結果、中高生のう蝕の地域差はzスコアにおいて明確に示すことができた。一方、歯肉や歯垢の状況はう蝕ほどの地域差は認められなかった。
③歯科医療サービス利用状況分析:地方部において、かかりつけ歯科医をもつ者は、もたない者に比べて、世帯年収の高い者ほど多かった。COVID-19パンデミック以降に歯科を受診していない者は受診している者に比べて、歯間清掃の習慣のある者が少なく、歯・口腔に関する自覚症状を訴えた者が多かった。
結論
次期基本的事項の目標値の設定に、本研究で得られた将来予測値は大きく寄与する。また、歯・口腔の健康に関する地域格差について可視化を進めることにより、都道府県レベルで明らかにすることができた。かかりつけ歯科医の保有状況の地域間格差と経済状態の関連性とともに、COVID-19パンデミックによる受診抑制が、口腔状態の悪化に関与していることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202222018B
報告書区分
総合
研究課題名
「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」最終評価と次期計画策定に資する全国データの収集と歯科口腔保健データの動向分析
課題番号
21IA1014
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(北海道医療大学 歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 克郎(日本歯科大学東京短期大学)
  • 田野 ルミ(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第1次)の最終評価と次期計画策定に必要な疫学知見を提供することを目的とする。令和3年度は要支援者への歯科口腔保健サービスの提供状況に関するレビュー分析、歯科保健行動に関する全国調査、口腔機能に関する国の公的データに関する二次分析を行い、厚生科学審議会地域健康増進栄養部会・歯科口腔保健の推進に関する専門委員会での最終評価を行うための基礎データを提供する。令和4年度は、令和3年で得られた知見をもとに、歯・口腔の健康格差の可視化、政府統計データ分析による歯科保健指標の将来推計および歯科医療サービス利用状況に関する分析を行い、次期の基本的事項の策定や目標値設定に資する学術知見を提示する。
研究方法
(1)要支援者への歯科口腔保健サービスの提供分析:医学中央雑誌データベース等を用いて、関連する調査研究を系統的に抽出した。
(2)歯科保健行動の全国的な把握:Web調査の手法を用いることにより、全国規模で歯科保健行動の現状を把握した。
(3)口腔機能に関する二次データを用いた分析
①国民健康・栄養調査による分析:平成26年度から令和元年度「国民健康・栄養調査」の調査票情報を用いた。
②特定健康診査 標準的質問票での「咀嚼」に関する項目による分析:2021年に公開された第6回NDBオープンデータに収載されている平成30年度の特定健診の標準的質問票への回答に関するデータを二次利用した。
(4)歯科保健諸指標の将来予測:過去20年以内の歯科歯科に関する公的統計データ等を用いた。3点以上の時系列データが得られる場合、直線回帰モデルを用いて2032年での予測値を求めた。
(2)歯科口腔保健に関する公的統計データによる地域格差分析:①国民健康・栄養調査-現在歯数の分析を行った。基本的事項(第二次)に採用予定である「40歳以上における自分の歯が19歯以下の者の割合(年齢調整)」については、平成27年平滑化人口を用いて算出した。対象者が居住する都道府県、および市郡番号別に検討を行った。②学校保健統計調査-学校保健統計調査の健康状態調査票の二次利用申請によって得た中高生の歯・口腔の健康に関するデータを用いた。都道府県間の相対位置を可視化するために、各都道府県でのzスコアを求めた。
(3)歯科医療サービス利用状況と口腔保健状況分析:Web調査の手法を用いた。かかりつけ歯科医の保有状況と歯科受診状況を目的変数とし、関連要因を多重ロジスティック回帰分析によって抽出した。
結果と考察
要支援者に対する歯科口腔保健サービスの提供状況に関するレビュー分析の結果、全国規模で障害者・児施設と要介護高齢者施設での歯科検診提供状況を調べている研究を抽出し、過去の関連調査と同等レベルの調査設計がなされていることを確認した。歯科保健行動に関する全国的な状況について、定期歯科健診の受診率は55.8%であった。その一方、新型コロナウイルス感染拡大によって、歯科検診を控えた者と回答したものが全体で17.8%に達していた。口腔機能の動向については、国民健康・栄養調査による咀嚼良好者の割合は平成29年では76.2%であったが、令和元年では71.5%と低下した。一方、平成30年の特定健診の咀嚼に関する質問項目への回答状況の分析では、咀嚼良好者の割合は78.4%であった。また、咀嚼良好者の都道府県別の状況についても明らかにした。
 将来予測が可能であった指標は、齲蝕に関する指標、歯数に関する指標、歯肉炎に関する指標、障害児・者および要介護高齢者への定期的歯科検診に関する指標、過去1年間の歯科検診受診者に関する指標であった。歯周炎および咀嚼に関する指標については直線回帰モデルを用いた予測値の算出は実施できなかった。次に、国民健康・栄養調査による成人期・高齢期の歯の喪失状況を調べたところ、地域差が明確にみとめられた。また、学校保健統計調査による中高生の歯・口腔の健康に関する地域格差についてzスコアを算出することによって可視化できた。歯科医療サービス利用状況については、地方部でかかりつけ歯科医をもつ者は、もたない者に比べて、世帯年収の高い者で多かった。
結論
要支援者への歯科口腔保健サービスの提供状況、歯科保健行動の現在の状況、咀嚼状況に関する全国調査の結果を集約し、基本的事項(第1次)の中間評価以降の動向を可視化できた。また、歯・口腔の健康に関する地域格差について可視化を進めることにより、都道府県レベルで明らかにすることができた。かかりつけ歯科医の保有状況の地域間格差と経済状態の関連性とともに、COVID-19パンデミックによる受診抑制が、口腔状態の悪化に関与していることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202222018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
COVID-19感染拡大前後の歯科保健行動や受診行動の変化について全国調査を行うことによって、感染症流行時の歯科保健サービスの提供状況のあり方にも寄与する学術知見を得た。これらの研究の成果はInternational Journal of Environmental Research and Public Health等の学術誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
本研究で得られた知見は、歯科口腔保健での1次予防対策に用いられるため、最終的には齲蝕および歯周疾患に代表される歯科疾患の有病状況の改善につながる。将来予測の結果、齲蝕については乳歯・永久歯とも大きく改善する一方、歯周病および口腔機能については十分な改善傾向が認められなかった。今後の歯科医療提供体制のあり方を検討するうえで、本研究で得られた歯科疾患と口腔機能の将来予測は基盤的な指針を提供するものと考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究班で実施した目標値設定に至る分析課程については、厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会歯科口腔保健の推進に関する専門委員会による歯・口腔の健康づくりプランの説明資料(令和5年度中に発行の予定)に収載され、全国の地方自治体での歯・口腔の健康づくり計画に活用されることになった。
その他行政的観点からの成果
令和3年度の研究知見は、第8回・第9回歯科口腔保健の推進に関する専門委員会(平成4年1月22日および2月24日開催)にて活用された。また、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項最終評価報告書(平成4年10月11日発出)においても本研究の知見が収載された。令和4年度の研究知見は第15回歯科口腔保健の推進に関する専門委員会(平成4年12月23日開催)にて活用された。また、本研究班で得られた将来推計値に基づく目標値は、令和5年度に公表される歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第2次)にも活用される。
その他のインパクト
研究知見を広く発信するために、第81回日本公衆衛生学会総会(2022年10月開催)での地域歯科保健活動に関するシンポジウムにて、本研究事業で得られた結果を発表した。また、第82回日本公衆衛生学会総会(2023年10月開催)でも、関連する歯科口腔保健シンポジウムを持ち、本研究事業で得られた結果を公衆衛生学の研究者だけでなく、地域保健にかかわる専門職に対して広く発信する。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
6件
専門委員会での議論3件、最終評価報告書作成1件、歯・口腔の健康づくりプラン推進のための説明資料作成、告示目標作成1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
第81回および第82回日本公衆衛生学会総会にて、本研究課題と関連する歯科口腔保健シンポジウムを開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Oshima K, Miura H, Tano R, et al.
Factors Associated with regular dental checkups discontinuation during the COVID-19 pandemic: A nationwide cross-sectional web-based survey in Japan
Int J Environ Res Public Health , 19 (5) , 2917-2917  (2022)
10.3390/ijerph19052917

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
2024-06-18

収支報告書

文献番号
202222018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,346,000円
(2)補助金確定額
2,346,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 836,491円
人件費・謝金 17,825円
旅費 99,500円
その他 851,352円
間接経費 541,000円
合計 2,346,168円

備考

備考
自己資金168円

公開日・更新日

公開日
2024-02-06
更新日
-