文献情報
文献番号
202222016A
報告書区分
総括
研究課題名
救急救命士が行う業務の質の向上に資する研究
課題番号
21IA1012
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学 医学部 救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 畑中 哲生(救急振興財団 救急救命九州研修所)
- 田邉 晴山(財団法人救急振興財団救急救命東京研修所 )
- 水野 浩利(札幌医科大学医学部救急医学講座)
- 安田 康晴(広島国際大学 保健医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成3年より運用されている救急救命士制度において、医学、医療の絶え間ない進歩・発展にともない救急救命処置の範囲についてもその状況に応じて適切に見直す必要があるなかで、厚生労働省の予算事業「救急救命処置検討委員会」において追加の検証が必要と評価された項目について、消防本部の協力を得ながら会議形式での議論、実態調査、前向き観察研究などにより課題の解決を行うことを目的として研究を行った。
研究方法
①心肺停止を対象とした「自動式人工呼吸器による人工呼吸」について、救急救命処置として追加するにあたっての指示要件:後の検討に向けて救急救命士による人工呼吸器の使用に関する厚生労働省の定めた規定、救急隊による人工呼吸器の使用に関する消防庁の規定の状況を整理した。
②「乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液」、「エピネフリンの投与」、「食道閉鎖式エアウエイ、ラリンゲアルマスクによる気道確保」について、特定行為の指定を解除するにあたっての、包括指示下で実施可能な範囲と具体的指示を必要とする範囲等と求められるMC体制:検討にあたって、具体的指示要請に対して医師が介入した事例についての調査を5消防機関に対して実施した。
③救急救命処置(特定行為)として「アナフィラキシーに対するアドレナリンの筋肉内投与」を追加するにあたっての、アナフィラキシーの判断基準、投与対象、必要な手順、ヒューマンエラーの防止策、必要な講習等の詳細の提示については、実際のアドレナリン投与は行わない形で、救急救命士によるアナフィラキシーの病態判断、およびアドレナリンの適応判断に関する精度についての前向き観察研究を実施することとし、次年度の研究参加団体の公募、症例登録の開始に向けて体制を整えた。
④「特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持」の見直し:在宅療法継続中の傷病者の気管切開チューブ事故抜去事例に対するチューブの再挿入に関しての実際のプロトコール作成を念頭においた課題の抽出、平成4年の救急救命処置検討委員会報告書の見直しに向けた現況の把握と課題の抽出を行った。
②「乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液」、「エピネフリンの投与」、「食道閉鎖式エアウエイ、ラリンゲアルマスクによる気道確保」について、特定行為の指定を解除するにあたっての、包括指示下で実施可能な範囲と具体的指示を必要とする範囲等と求められるMC体制:検討にあたって、具体的指示要請に対して医師が介入した事例についての調査を5消防機関に対して実施した。
③救急救命処置(特定行為)として「アナフィラキシーに対するアドレナリンの筋肉内投与」を追加するにあたっての、アナフィラキシーの判断基準、投与対象、必要な手順、ヒューマンエラーの防止策、必要な講習等の詳細の提示については、実際のアドレナリン投与は行わない形で、救急救命士によるアナフィラキシーの病態判断、およびアドレナリンの適応判断に関する精度についての前向き観察研究を実施することとし、次年度の研究参加団体の公募、症例登録の開始に向けて体制を整えた。
④「特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持」の見直し:在宅療法継続中の傷病者の気管切開チューブ事故抜去事例に対するチューブの再挿入に関しての実際のプロトコール作成を念頭においた課題の抽出、平成4年の救急救命処置検討委員会報告書の見直しに向けた現況の把握と課題の抽出を行った。
結果と考察
②の調査について、静脈路確保の6.1%、エピネフリン投与の10.1%、器具による気道確保の6.7%で具体的指示に際して医師の介入があったが、基礎疾患の状況等に応じた特定行為の差し控え指示や薬剤投与量の上限に関する介入が大半を占め、プロトコル違反を原因としたものはなかった。③アナフィラキシーの病態判断およびアドレナリンの適応判断に関する精度についての前向き観察研究においては、(1)観察研究に関する詳細の策定、(2)救急救命士がアナフィラキシーを判断するために使用する観察カードの策定、(3)アナフィラキシーの判断とアドレナリンの適応等について学ぶための研修プログラムの作成、(4)観察研究の実施に関する倫理審査について検討を進めた。課題または将来的に改善を期待したい点として、救急業務へ与える影響の軽減、研究実施状況の特殊性と倫理審査手続き上の課題、ICT技術の活用が挙げられた。
結論
以上の研究結果より、救急救命処置検討委員会において実施検証が必要と評価された項目について本研究で検討し、知見の収集や実証実験の結果をふまえて、厚生労働省の定める「救急救命処置の範囲」を医療の進歩に応じたものに更新することが期待できる。
公開日・更新日
公開日
2024-06-05
更新日
2024-08-08