文献情報
文献番号
202222014A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅医療を必要とする患者像の検討と地域特性に合わせた在宅医療提供体制の構築に関する研究
課題番号
21IA1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 佐方 信夫(国立大学法人筑波大学 医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野)
- 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
- 川越 雅弘(公立大学法人埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
- 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
- 金 雪瑩(キン セツエイ)(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
- 伊藤 智子(国立大学法人筑波大学 医学医療系)
- 孫 瑜(ソン ユ)(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,656,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和4年度においては次の項目を目的とした。研究1 データ分析:(1) 市町村の医療介護突合データを用いて、在宅医療におけるアウトカム指標(再入院、外来通院、要介護の変化等)を検討し、そのアウトカム指標に対する在宅医療の効果を検証する分析モデルの構築を検討する。(2) NDB・介護DBの利用申請ならびに分析環境の調整を進める。(3) 全国調査データ(国民生活基礎調査、中高年縦断調査等)を用いて、在宅要介護者の実態把握を進める。研究2 実態調査:ヒアリング調査を実施し、結果をまとめる。研究3 レビュー:効果的な在宅医療体制について、地域における先進事例をレビューする。
研究方法
研究1-(1):つくば市の医療介護突合データを用い、在宅医療に求められる4つの医療機能(退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、看取り)に関する各指標を要介護度および難病等の有無別に検討した。研究1-(2):NDB・介護DBの取得手続きを進め、承認を得た。研究1-(3):国民生活基礎調査の世帯票・健康票を用い、乳がん検診未受診の要因を記述した。研究2:高齢者に在宅医療が導入される際の経緯およびその状態像について、急性期、回復期病院の退院調整職員やケアマネージャーに対しインタビュー調査を行った。研究3:在宅医療整備における先進自治体等の事例について、事例・情報収集し、参考となる仕組み・制度等についてレビューを行った。
結果と考察
研究1-(1):要医療群に分類される患者は要介護度に関わらず急変時に対応が必要になる例や死亡例、在宅看取りの割合が多かった。また、要医療群に分類されない患者においても要介護度が重度である患者は急変時に対応が必要になる例や死亡例、在宅看取りの割合が多かった。一方で、要支援の患者は急変時の対応が必要になる症例や死亡例も少なかった。研究1-(3):手助けや見守りの要否と介護認定の有無別にみた乳がん検診受診のオッズ比(95%信頼区間)は、手助けや見守りが不要な群に対し、手助けや見守りが必要かつ介護認定なし群で1.53(1.36-1.71)、介護認定あり群で2.14(1.81-2.54)であった。研究2:在宅医療利用に対する受療者側のきっかけ・要因として本人の意思や心身の状態に伴った要因が見いだされた。家族側のきっかけ・要因としては、「家族の希望」のほか、「家族のサポート力」が要因として見いだされた。一方で、医療介護体制側のきっかけ・要因としては、「かかりつけ医との連携」「訪問看護ステーション等からの提案」「高齢者施設からの要望」といった連携やシステムに基づく要因が抽出された。研究3:我が国における在宅医療の先進事例としては、「ICTを活用した医療介護連携体制の構築」および「在宅医の地域医療連携(病診連携、診診連携、多職種連携)」の2つが主な取り組みとして挙げられた。
以上の結果を統合して考察する。研究1-(1)のつくば市データの分析結果より指定難病、末期の悪性腫瘍や在宅での医療処置を行っている患者のおいては要介護度に関わらず、指標から見た医療的対応が行われていた。またそうした特定の疾患や日常的に医療処置を行っていない者においては、要介護度が重度であることと指標から見た医療的対応とは関連していたまた研究1-(3)においては要介護状態にあると乳がん検診が受けにくい実態が全国データで明らかとなり、要介護度が高いと受診行動がとりづらく、そうした点を在宅医療で補っている状況が示唆された。一方で研究1-(1)において、要介護度が要支援の患者は要介護状態や医療的対応の必要性の点からは在宅医療の必要性は乏しいと考えられ、医療的対応の必要性と要介護状態以外の在宅医療の利用理由がある可能性が示唆された。これに対し、研究2のヒアリング調査からは、医療的対応の必要性でも要介護状態でもない在宅医療の利用背景として、「家族側」あるいは「医療介護体制側」があると見いだされた。専ら、医療的対応の必要性あるいは要介護状態が在宅医療利用の主な背景であることが研究2ヒアリング調査より明らかとなったが、そうした主な理由以外の「家族側」「医療介護体制側」という特徴的な理由が明らかになったことは重要な結果であると言える。特に「医療介護体制側」の利用理由としては、「施設の介護体制上、必要」という理由や「今後の円滑な在宅療養の定着のため」といったこれまで明らかになっていなかった内容がヒアリング調査より聴取され、こうした点のより深い検証が重要であると考えられる。
以上の結果を統合して考察する。研究1-(1)のつくば市データの分析結果より指定難病、末期の悪性腫瘍や在宅での医療処置を行っている患者のおいては要介護度に関わらず、指標から見た医療的対応が行われていた。またそうした特定の疾患や日常的に医療処置を行っていない者においては、要介護度が重度であることと指標から見た医療的対応とは関連していたまた研究1-(3)においては要介護状態にあると乳がん検診が受けにくい実態が全国データで明らかとなり、要介護度が高いと受診行動がとりづらく、そうした点を在宅医療で補っている状況が示唆された。一方で研究1-(1)において、要介護度が要支援の患者は要介護状態や医療的対応の必要性の点からは在宅医療の必要性は乏しいと考えられ、医療的対応の必要性と要介護状態以外の在宅医療の利用理由がある可能性が示唆された。これに対し、研究2のヒアリング調査からは、医療的対応の必要性でも要介護状態でもない在宅医療の利用背景として、「家族側」あるいは「医療介護体制側」があると見いだされた。専ら、医療的対応の必要性あるいは要介護状態が在宅医療利用の主な背景であることが研究2ヒアリング調査より明らかとなったが、そうした主な理由以外の「家族側」「医療介護体制側」という特徴的な理由が明らかになったことは重要な結果であると言える。特に「医療介護体制側」の利用理由としては、「施設の介護体制上、必要」という理由や「今後の円滑な在宅療養の定着のため」といったこれまで明らかになっていなかった内容がヒアリング調査より聴取され、こうした点のより深い検証が重要であると考えられる。
結論
令和4年度の研究結果から、在宅医療利用の理由としては、主に受療者の医療ニーズやADL上の課題があることが示唆された。一方で、それ以外にも「家族側」「医療介護体制側」の理由もあることが示唆され、今後、こうした理由をより検証していくことが必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2023-07-05
更新日
-