災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動期間及び質の高い活動内容に関する研究

文献情報

文献番号
202222012A
報告書区分
総括
研究課題名
災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動期間及び質の高い活動内容に関する研究
課題番号
21IA1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
太刀川 弘和(国立大学法人筑波大学 医学医療系臨床医学域 災害・地域精神医学)
研究分担者(所属機関)
  • 五明 佐也香(獨協医科大学 医学部)
  • 丸山 嘉一(日本赤十字社医療センター 国内医療救護部)
  • 高橋 晶(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学)
  • 辻本 哲士(滋賀県立精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
830,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DPATの活動は要領やマニュアルに即して行われているが、一方で活動開始や活動終了時期についての基準は明確でない。このため、被災県と支援を行うDPAT事務局の間で活動開始の判断にしばしば意見の相違が生じた。本研究は、DPAT活動の開始・終了基準の提案、先遣隊以外のDPATの役割を明確化し、災害時のDPATの活動期間及び質の高い活動内容を定めることを目的とする。また、新型コロナウイルス感染症におけるDPATの活動実績の調査を実施し、DPATの位置づけのための課題を明確化させる基礎資料として用いることを目的とする。
研究方法
今年度は以下の研究を実施した。
1.DPAT活動開始・終了基準案を検討するためのシミュレーション研修、
インタビュー調査
2.先遣隊以外のDPATの活動を検討するためのインタビュー調査
3.「精神保健医療版 災害診療記録/J-SPEED簡易ユーザーガイド」の作成
結果と考察
各分担班研究の結果から、昨年度作成をしたDPAT活動開始・終了基準案に対して実際にDPATが基準案を用いて活動を開始し、終結することができるといった意見が多く認められた。一方で、特に大雨洪水等の特別警報が発令された際にDPAT調整本部を立ち上げることに対し、違和感をもった都道府県もあった。これは自治体が特別警報に対しての想定が今までなかったことが要因として挙げられた。
 また、先遣隊以外のDPATの活動に関しては、被災地での精神科医療の提供、困難ケース対応への助言、被災した医療機関への専門的支援、支援者支援等の多様なニーズに対応できることが望まれていることが示唆された。
結論
今年度の活動によって、昨年度作成をしたDPAT活動開始・終了基準案が現場での判断基準として使用できることが示唆された。今回提案された基準案を共有したうえで、自治体ごとに特色を持った基準を作成することも重要であると考える。また、今回作成をしたJ-SPEED簡易ユーザーガイドを使用し、正しい情報入力・蓄積をすることで今後更なる解析を行い、精神保健医療ニーズを的確に捉えることができると考える。

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202222012B
報告書区分
総合
研究課題名
災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動期間及び質の高い活動内容に関する研究
課題番号
21IA1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
太刀川 弘和(国立大学法人筑波大学 医学医療系臨床医学域 災害・地域精神医学)
研究分担者(所属機関)
  • 五明 佐也香(獨協医科大学 医学部)
  • 丸山 嘉一(日本赤十字社医療センター 国内医療救護部)
  • 高橋 晶(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学)
  • 辻本 哲士(滋賀県立精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
災害急性期からの精神科医療ニーズに組織的に対応するために設立された災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動は、活動要領やマニュアルに即して行われているが、活動開始や活動終了時期についての基準は明確ではない。参集基準は活動マニュアルに記述されているが、活動開始は被災都道府県の要請によるとされ、要請の基準はない。このため、被災県とDPAT事務局の間で活動開始の判断にしばしば意見の相違が生じた。また活動終了時期は、被災県とDPATにより、都度判断されることになっている。さらに、DPATは国が訓練・養成を行い発災直後より活動を展開する先遣隊と、主に都道府県が養成してその後の活動を展開する地域のDPATがあるが、後者の定義や役割は不明確である。このため災害によっては、こころのケアチームとして長期に活動を継続する場合もあれば、早期に活動を終了することもあり、自治体と活動内容のコンセンサスが得られていない。そこで本研究では、DPAT、活動連携機関、自治体それぞれの立場から、DPAT による精神医療活動の開始・終了基準、ならびに先遣隊以外のDPATの役割を明確化し、災害時のDPATの活動期間及び質の高い活動内容を定めることを目的に研究を行った。
また、今般の新型コロナウイルス感染症について、2022年以降、変異株の流行などもあってこれまでの想定を上回る規模・スピードで感染拡大が生じ、病院や介護施設等でのクラスター等も発生し、その対応として DPAT の活動も行われた。今後のDPATの活動に活かすためにも、その実績や課題を早急に明らかにする必要があると考える。そのため対応に関する実態調査を実施し、課題を明らかにすることも目的とした。
研究方法
研究期間に以下の研究を実施した。
・DPAT活動開始・終了基準案の作成・提案
・DPAT活動の開始基準と終結基準の認識の調査、並びに先遣隊以外のDPATの運用に関してのアンケ―ト調査
・新型コロナウイルス感染症に対するDPAT活動のアンケート調査、ならびにヒアリング調査
・DPAT活動開始・終了基準案を検討するためのシミュレーション研修、インタビュー調査
・先遣隊以外のDPATの活動を検討するためのインタビュー調査
・「J-SPEED簡易ユーザーガイド」の作成
結果と考察
研究の結果、以下の点が示された。
1. DPAT活動開始・終了基準案の作成
2. 先遣隊以外のDPATの役割: 研究期間中に事務局が整理をし、先遣隊以外のDPATを「都道府県DPAT」と呼称し、概念を明確化した。また、インタビュー調査等から、被災地での精神科医療の提供、困難ケース対応への助言、被災した医療機関への専門的支援、支援者支援等の多様なニーズに対応できる役割が望まれていることがわかった。
3.新型コロナウイルス感染症へのDPAT活動調査:DPATがクラスター対応をすべきだと考えている自治体は全国で半数に満たず、実際に活動した自治体はさらに少数であったこと、ただし、活動した自治体では、災害精神医療チームであるDPATならではの活動が有用で、精神病棟の対応はDPAT以外の支援チームでは困難であることがわかった。課題として事前の感染症対策のトレーニングや自治体による補償、および平時からの他医療チームとの連携の重要性が示された。
4.他の研究成果:ダイヤモンド・プリンセス号の支援内容分析、「J-SPEED簡易ユーザーガイド」の作成を行った。
結論
2年間にわたる今研究によって、DPATに求められるニーズや課題を明確化でき、「DPATの活動開始・終了基準案」、「J-SPEED簡易ユーザーガイド」を成果物として作成できた。また新興感染症拡大に対してDPAT活動の有用性が確認できた。今回提案された基準案を共有し、今後自治体ごとのDPATガイドライン策定や、国のDPAT活動要項の改定時に参照し、質の高い活動に反映してほしい。

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202222012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
DPATマニュアルの文献調査、自治体・隊員・精神保健福祉センターのアンケート調査、インタビュー調査を行い、DPAT活動の開始・終了に関わる多面的な情報を収集できた。また、過去災害のDPAT活動に関する診療データ(J-SPEED)を分析し、災害早期のメンタルヘルス支援の重要性を確認し、学会発表や論文発表を行った。特に、ダイヤモンドプリンセス号検疫活動の際の乗客・職員のメンタルヘルス分析は、 Int J Disaster Risk Reduct. 誌に掲載され、国内外から大きな反響を得た。
臨床的観点からの成果
各班の調査結果を踏まえて、DPAT活動の開始・終了基準試案を作成した。同案が実災害時に適用できるものか、DPAT統括者・事務担当者研修の受講者に対して、基準案に基づくシミュレーション訓練並びにアンケート調査を実施した。結果として、DPATが基準案を用いて活動を開始可能と評価ができた。
ガイドライン等の開発
各班の調査結果を踏まえて、「DPAT活動の開始・終了基準(試案)」を作成した。同案はDPAT活動要項改定時に反映される方向になった。またJ-SPEED入力をより効率的にするために「精神保健医療版 災害診療記録/J-SPEED簡易ユーザーガイド」を作成し、事務局ホームページに掲載することになった。
その他行政的観点からの成果
令和3年度途中で、厚生労働省の依頼で新型コロナウイルス感染症対応におけるDPAT活動の自治体等への調査も別途実施した。結果、DPATがクラスター対応をすべきだと考えている自治体は全国で半数に満たず、実際に活動した自治体はさらに少数であった。ただし、活動した自治体では、災害精神医療チームであるDPATならではの活動が功を奏しており、特に精神病棟の対応は他の支援チームでは困難と考えられた。
その他のインパクト
ダイヤモンドプリンセス号のDPAT活動に関して取材を受け、東京新聞 こちら特報部, 2023年1月1日号に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
21件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
DPAT活動開始・終了基準案、精神保健医療版 災害診療記録/J-SPEED簡易ユーザーガイド
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirokazu Tachikawa, Tatsuhiko Kubo, Sayaka Gomei, et al
Mental health needs associated with COVID-19 on the diamond princess cruise ship: A case series recorded by the disaster psychiatric assistance team
Internatinal Journal of Disaster Risk Reduction , 81 (103250)  (2022)
10.1016/j.ijdrr.2022.103250
原著論文2
Yui Yumiya, Odgerel Chimed-Ochir, Akihiro Taji, et al
Prevalence of Mental Health Problems among Patients Treated by Emergency Medical Teams: Findings from J-SPEED Data Regarding the West Japan Heavy Rain 2018
Int J Environonmental Research and Public Health , 19 (18) , 11454-  (2022)
10.3390/ijerph191811454

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
2024-06-11

収支報告書

文献番号
202222012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,078,000円
(2)補助金確定額
1,078,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 134,355円
人件費・謝金 33,900円
旅費 171,160円
その他 490,585円
間接経費 248,000円
合計 1,078,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-02-06
更新日
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