データ駆動で地域の実情に応じて医療提供体制構築を推進するための政策研究

文献情報

文献番号
202222009A
報告書区分
総括
研究課題名
データ駆動で地域の実情に応じて医療提供体制構築を推進するための政策研究
課題番号
21IA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 進(京都大学 医学研究科)
  • 原 広司(横浜市立大学 国際商学部)
  • 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
  • 猪飼 宏(京都府立医科大学 附属病院)
  • 廣瀬 昌博(神戸大学 医学部)
  • 佐々木 典子(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究の目的は、NDBデータや病床機能報告など様々な多施設・大規模データを活用し、医療提供の実態を定量的に見えるようにし、地域医療計画、地域医療構想を含め、地域の実情に応じて医療提供体制構築を推進する政策に役立つ指標、ツール、エビデンス等を創出することにある。そのために、【1】病床機能報告による病床機能評価指標の研究開発と全国諸地域での実測、および、【2】地域医療の質指標の研究開発と全国諸地域での実測を行う。さらに、【3】感染症対応の医療システムの把握、【4】機能分化・機能連携推進取組みの評価に関する知見を生み出す。
研究方法
【1】2021年度の病床機能報告の病棟票を使い、病床機能の評価指標を開発した。加えて、重症度・医療看護必要度も指標として活用し、人口あたり病床機能を定量化し地域の分布を把握した。さらに、病床機能の分類を検討し4群に分け、都道府県毎および二次医療圏毎の構成を示した。
【2】2014~2020年度の厚生労働省NDBデータを用いて二次医療圏単位で算出した急性心筋梗塞症例に対する緊急PCI(経皮的冠動脈インターベンション)実施症例などの指標の改訂版を算出し、急性心筋梗塞症例に対する緊急PCI(経皮的冠動脈インターベンション)実施割合の二次医療圏単位の経時変化を、集団軌跡モデルを用いて分析した。
【3】地域医療システムの感染症対応に関して、多施設DPCデータを用い、長期化しているCOVID-19の影響、特に集中治療室(ICU)におけるCOVID-19受け入れが非コロナ患者の診療に及ぼす影響について分析した。
【4】地域医療システムにおける医療連携と医療提供の質・効率との関係性を調べるため、6年分(2014~19)の国保・後期高齢者医療制度レセプトデータを用い、大腿骨頸部骨折症例を抽出し、医療機関連携のネットワーク分析を行った。
結果と考察
【1】医療機能の評価指標を開発して地域別の病床機能分布を可視化し、一般病床を①高度高密度急性期、②高密度急性期、③急性・亜急性期混在、④非急性期の4群に分類することができた。その都道府県ごとの分布では、地域間のばらつきは、高密度機能ニーズに対応する①②ではほぼなく、③④では大きかった。③④において地域医療構想における地域の実情への配慮が重要と考えられる。
【2】2014年度から2020年度の二次医療圏の急性心筋梗塞に対する緊急PCI実施割合の経時的変化の集団軌跡モデルによる分析の結果、多くの二次医療圏で大きな変化がない一方で、いくつかの二次医療圏の指標値は改善されていた。
【3】多施設DPCデータを用い集中治療に関してCOVID-19の中期的な影響を分析した結果、COVID-19を多く受け入れた病院ほど、COVID-19以外の集中治療患者の減少が多い傾向が見られた。一方でCOVID-19以外の集中治療患者のリスク調整死亡率のCOVID-19流行に伴う上昇は認められなかった。
【4】大腿骨頸部骨折症例のネットワーク分析の結果、各患者が入院した医療機関のネットワーク上の中心性とその患者の入院日数は負の関係にあり、医療連携が強い医療機関に入院した患者は短い入院日数で退院していることが示された。
結論
大規模データを活用し、医療提供の実態を地域別、疾患別に、また連携について可視化し、地域の実情に応じた医療提供体制構築の推進に向けて、以下の如く指標・ツールや知見を得た。
【1】開発した病床機能の指標により、全国諸地域の病床機能分布の実態を定量的に明らかにすることができた。県間のばらつきは、高密度の機能領域でほとんどなく、急性期・亜急性期混在領域と非急性期においてはかなり大きかったことから、地域医療構想において、地域の実情への配慮が重要と考えられる。
【2】NDBを活用し、全国の二次医療圏の医療の質指標の開発・算出し、7年間の経年変化を可視化した結果、質指標の全体の底上げと地域間ばらつきの減少がみられた。集団軌跡モデリングにより急性心筋梗塞のPCI実施割合の二次医療圏単位の経年変化は4群に分類され、低値群では専門的医師数など医療資源不足、上昇群では循環器拠点の形成が推察された。
【3】集中治療室診療において、COVID-19診療の負担が大きくても、質は悪化していなかったものの、その負担が大きいほど患者数の減少が見られ、診療負担への配慮が制度上重要と考えられた。
【4】医療連携の強さが医療の効率化に関与していることが、現実の大規模データから示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
2023-06-16

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
2023-06-16

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202222009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,370,000円
(2)補助金確定額
6,370,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 941,319円
人件費・謝金 1,723,617円
旅費 131,800円
その他 2,103,275円
間接経費 1,470,000円
合計 6,370,011円

備考

備考
自己資金11円

公開日・更新日

公開日
2024-02-28
更新日
-