人口動態や地域の実情に対応するへき地医療の推進を図るための研究

文献情報

文献番号
202222008A
報告書区分
総括
研究課題名
人口動態や地域の実情に対応するへき地医療の推進を図るための研究
課題番号
21IA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小谷 和彦(自治医科大学 地域医療学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 隆浩(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 井口 清太郎(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 総合地域医療学講座)
  • 小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
  • 松本 正俊(広島大学大学院 医系科学研究科)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 佐藤 栄治(宇都宮大学 地域デザイン科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国のへき地医療は医療計画の一事業として対策されてきている。人口減少と超高齢化が進むへき地の実相に即して医療提供体制を構築する必要がある。2022(令和3)年度(初年度)に引き続いて、本年度(3年計画の2年目)は以下のテーマについて取り組んだ:(1)距離構成指標種による医療機関へのアクセス、(2)へき地医療機関におけるオンライン診療を含む情報通信技術(ICT)の普及要因、(3)オンライン診療に携わる看護の確立、(4)国内外のへき地医療の情報整理。
研究方法
(1)距離構成指標種による医療機関へのアクセス;地理情報システム(GIS)を用いて、1)栃木県と広島県の2次救急医療機関へのアクセスについて、直線距離と道路距離による圏域を作成し、その圏域内人口を比較した。2)栃木県内の無医地区・準無医地区と中核地(宇都宮市の町丁字)とにおいて、最寄りの病院までの直線(空間)距離と道路距離とを求め、距離構成指標間の差(道直差)を算出した。(2)へき地医療機関におけるオンライン診療を含むICTの普及要因;ICTを導入または検討中のへき地医療拠点病院(9施設)に対し、半構造化インタビュー調査を実施した。ICT活用の促進要因・阻害要因を中心に聴取し、得られた内容から逐語録を作成して質的帰納的に分析した。(3)オンライン診療に携わる看護の確立;ICTを活用した看護実践を行っているへき地診療所の看護師に、半構造化インタビュー調査を行った。実践効果と課題について逐語録を作成して質的帰納的に分析した。(4)国内外のへき地医療の情報整理;メンタル・ヘルス問題は高頻度にみられることから、文献データベースを検索し、世界のへき地における精神疾患に対する遠隔メンタル・ヘルス・ケアに関するランダム化比較試験を抽出した。
結果と考察
(1)距離圏域に含まれる人口;栃木県、広島県ともに空間距離と道路距離では圏域内人口に差がみられ、0.5kmから10kmまでのいずれの圏域においても空間距離圏域の人口は道路距離圏域のそれよりも多かった。空間距離が10km以内であっても道路距離で10kmを越える(すなわち道路距離では10km以内で二次救急医療機関に到達し得ない)住民が多数みられた。2)へき地に関する道直差;栃木県の無医地区・準無医地区と宇都宮市の道直差は、無医地区・準無医地区で大きく、宇都宮市との差は10倍強であった。(2)ICT活用の促進要因として、<人材育成>、<インセンティブ>、<運用規則・ガイドラインの整備>、<誰もが使いやすいシステム作り>、<地域ぐるみの連携>、<現場の苦手意識の克服>、<行政の相談窓口>、<住民の理解>、<コンサルタント起用>、<トラブル対応要員の整備>の10カテゴリが抽出された。阻害要因として、<予算の問題>、<人的問題>、<運用上の問題>の3カテゴリが抽出された。(3)ICTの使用で、患者の安心が得られやすいことが効果として挙げられた。また、医師との連絡手段が確保され、看護師も安心感を得られていた。課題として、即時の連絡が通例とみなされるきらいのあることや、看護師に求められる知識や技術のレベルの向上が語られた。(4)メンタル・ヘルスの不調、不眠症、うつ病、統合失調症に関する6つの研究報告が得られ、全ての研究で、遠隔メンタル・ヘルス・ケアが症状を効果的に改善することが示されていた。
結論
へき地医療の体制の考案に資する知見が得られた。(1)直線(空間)距離と道路距離とを対比した結果を考え合わせると、医療アクセスの精緻な評価に道路情報を含めて検討する必要性が示唆された。無医地区の設定等にも考慮され得る。(2)へき地でのICTの普及には、特にICT関連人材の必要性が浮き彫りになった。行政機関等を含めた大きな枠組みでの対処(研修機会の提供等)が求められる。(3)オンライン診療では看護師の役割が大切で、医療に安心感を与えること、また看護師の研修等の支援の必要性が示唆された。(4)遠隔メンタル・ヘルス・ケアの導入は、今後の検討事項であり得る。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202222008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,995,000円
(2)補助金確定額
2,995,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 250,276円
人件費・謝金 1,240,917円
旅費 481,090円
その他 427,719円
間接経費 595,000円
合計 0円

備考

備考
その他の収入2円

公開日・更新日

公開日
2024-02-06
更新日
-