アルツハイマー病の危険因子の解明と予防に関する大規模ゲノム疫学研究

文献情報

文献番号
200922006A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の危険因子の解明と予防に関する大規模ゲノム疫学研究
課題番号
H20-認知症・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清原 裕(九州大学 大学院医学研究院環境医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 神庭 重信(九州大学 大学院医学研究院精神病態医学分野)
  • 岩城 徹(九州大学 大学院医学研究院神経病理学分野)
  • 中別府 雄作(九州大学 生体防御医学研究所個体機能制御学部門脳機能制御学分野)
  • 久保 充明(独立行政法人理化学研究所横浜研究所ゲノム医科学研究センター基盤技術開発グループ)
  • 城田 知子(中村学園大学 食物栄養学科)
  • 熊谷 秋三(九州大学 健康科学センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
51,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
福岡県久山町で行われた心血管病の疫学調査(久山町研究)において、耐糖能異常がアルツハイマー病(AD)をはじめ認知症発症に与える影響を健診成績及び剖検組織の病理学的検討を用いて明らかにする。ゲノム疫学研究の手法によりゲノムワイド研究およびマイクロアレイ解析によってADの遺伝的危険因子を特定する。さらに、食事・運動の面からの介入試験を行い、その予防手段の確立を図る。
研究方法
①1985年に久山町で行われた認知症調査の受診者を17年間追跡し、耐糖能異常と認知症発症の関係を検討した。②この調査の受診者のうちの連続剖検例を対象に、耐糖能異常とADの病理学的変化との関連について調べた。③脳血管性認知症に関係の深い脳梗塞とPDE4D遺伝子多型との関連を検討した。④ADの遺伝的因子に関するゲノムワイド研究を行うために、AD患者のDNAサンプル収集を開始した。⑤久山町の剖検脳から採取したRNAサンプルを用いて、マイクロアレイ解析を行った。⑥ADモデル動物を導入した。⑦1988年に久山町で行われた認知症調査の受診者を17年間追跡し、大豆製品摂取や運動習慣の有無と認知症発症との関係について検討した。
結果と考察
①久山町の追跡調査の成績では、耐糖能異常はAD発症の有意な危険因子であった。②連続剖検の病理学的検討では、耐糖能異常、特にインスリン抵抗性が老人斑の形成に関与していた。さらに、APOEε4を有し負荷後血糖が高い群では老人斑を有するリスクが相乗的に上昇した。③日本人においてPDE4D遺伝子内の多型と脳梗塞の間に関連を認めなかった。④ゲノムワイド研究用にAD患者650例からDNAサンプルを収集した。⑤剖検脳から採取したRNAを用いてマイクロアレイ解析を行い、遺伝子発現のプロファイリングが可能であると判断した。⑥3つの変異遺伝子のトランスジェニックマウス(3xTgAD)のヘテロ接合体胚を入手し、Non-Tgおよび3xTgADホモマウスを樹立した。⑦大豆製品摂取の多い群や運動習慣を有する群ではAD発症のリスクが有意に低かった。一方、大豆製品摂取や運動習慣の有無とVD発症との間に有意な関連はなかった。
結論
久山町における疫学調査では,耐糖能異常がAD発症の有意な危険因子であった。さらに、栄養や運動習慣によりAD発症のリスクが低下することが示唆された。ADの関連遺伝子の探索および食事・運動の面からの介入試験の準備を行った。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-