地域医療構想を踏まえた在宅医療の充実についての政策研究

文献情報

文献番号
202222004A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療構想を踏まえた在宅医療の充実についての政策研究
課題番号
20IA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 劉 寧(リュウ ネイ)(産業医科大学 医学部)
  • 藤本 賢治(産業医科大学産業保健データサイエンスセンター)
  • 野元 由美(米田 由美)(学校法人産業医科大学 産業保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,132,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国は医療計画策定にあたって在宅医療の提供体制を着実に整備するための4つの医療機能(退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、看取り)を指針で示しており、これらを評価するための構造・経過・結果に関する指標群の提案を行っている。本研究ではこれらの指標群を、介護保険制度で収集しているデータをもとに作成することを試みた。また、このような指標群が設定されたとしても、在宅医療を推進する環境要因が整備されなければ、その推進は難しい。そこで、本研究では医療及び介護保険のレセプトデータを用いて、在宅医療の推進に関連する要因の分析を行った。
研究方法
分析に用いたレセプトは国内7自治体における2019年度の国民健康保険及び後期高齢者医療制度のレセプト及び介護レセプト、そして内閣府の見える化プロジェクトで公開されているSCR(標準化レセプト比)、厚生労働省・介護保険事業状況報告、日本医師会・地域医療情報システムにおける対特定施設定員数のデータである。レセプトについては個人単位で連結して、医療・介護サービスの利用状況が時系列で分析出来る仕様とした。これらのデータを用いて、以下の3つの研究を行った。
(1) 地域医療計画における在宅関連評価指標(構造、経過、結果)の検討: レセプトおよびSCRを用いて、在宅医療に係る構造・経過・結果の指標群を作成した。
(2) 訪問診療の提供量に関連する要因の生態学的研究: 二次医療圏別の在宅医療関連データセットを作成し、変数間の相関分析及び共分散構造分析を行った。
(3) 人口構造の変化に伴う医療介護の推計量に基づく在宅ケアの在り方の検討方法に関する研究: 産業医科大学公衆衛生学教室で開発した国立社会保障・人口問題研究所の日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)と厚生労働省の患者調査及び介護保険事業報告の公開データ基づいて、傷病別の入院および外来患者数、要介護度別利用者数(サービス種別も含む)を推計するツール(AJAPAおよびNewCarest)を用いて、地域別に在宅医療のあり方を考える方法論を作成した。
結果と考察
本研究の結果以下のことが明らかとなった。
(1) 地域医療計画における在宅関連評価指標(構造、プロセス、アウトカム)の検討: レセプト情報を用いて構造(例えば、退院支援として退院時共同指導を行っている施設数)、経過(例えば退院支援としての退院前在宅療養指導管理料の算定状況、日常の療養支援としての訪問診療の実施状況、急変時の対応としての緊急往診の算定状況、看取りとしての在宅ターミナル加算算定状況など)、結果(例えば、退院支援の結果としての入院・入所後の在宅復帰率、日常の療養支援の結果としての訪問診療の1年継続率など)の各指標を作成することの可能性が示された。
(2) 訪問診療の提供量に関連する要因の生態学的研究: 慢性期の患者は入院、介護施設入所、在宅のいずれかで対応されており、これらのサービス間にはトレードオフ関係があることが明らかとなった。各地域は3つの資源の状況に応じて、在宅医療の在り方を考える必要がある。訪問診療の提供量が多い二次医療圏は、診療所の外来医療、往診、訪問看護、在宅介護サービスの提供量が多く、また緊急往診や緊急時の他職種によるカンファレンスが多く行われていた。さらに、サービス付高齢者施設などの特定施設の定員数が多い地域では訪問診療の提供量が多くなっていた。
(3) 人口構造の変化に伴う医療介護の推計量に基づく在宅ケアの在り方の検討方法に関する研究: AJAPAやNewCarestといった人口動向とそれに伴う医療介護需要の変化を推計するツールとSCRを組み合わせて分析することで、各地域特性にあった慢性期医療介護の施策の方向性を具体的に検討することが可能になる。
結論
本研究によって、在宅医療を評価・推進するための構造、経過、結果の各指標群が医療保険、介護保険のレセプト情報を用いて作成できることが示された。厚生労働省は、NDBとして医療保険レセプトを、そして介護データベースとして介護保険レセプト情報を収集しており、したがって、本研究で採用したロジックを用いることで、二次医療圏単位、市町村単位のデータを整備することが可能である。これらの指標が地域医療計画、介護保険事業計画に展開されることで、これらの計画の実効性の向上が期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202222004B
報告書区分
総合
研究課題名
地域医療構想を踏まえた在宅医療の充実についての政策研究
課題番号
20IA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 劉 寧(リュウ ネイ)(産業医科大学 医学部)
  • 藤本 賢治(産業医科大学産業保健データサイエンスセンター)
  • 野元 由美(米田 由美)(学校法人産業医科大学 産業保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国は在宅医療の提供体制を着実に整備するための4つの医療機能(退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、看取り)を指針で示しており、これらを評価するための構造・経過・結果に関する指標群の提案を行っている。本研究ではこれらの指標群を、医療保険と介護保険制度で収集しているデータをもとに作成することを試みた。また、医療及び介護保険のレセプトデータを用いて、在宅医療の推進に関連する要因の分析を行った。
研究方法
分析に用いたレセプトは国内7自治体における2019年度の国民健康保険及び後期高齢者医療制度のレセプト及び介護レセプト、そして内閣府の見える化プロジェクトで公開されているSCR(標準化レセプト比)、厚生労働省・介護保険事業状況報告、日本医師会・地域医療情報システムにおける特定施設定員数のデータである。レセプトについては個人単位で連結して、医療・介護サービスの利用状況が時系列で分析出来る仕様とした。これらのデータを用いて、以下の5つの研究を行った。
(1) 地域医療計画における在宅関連評価指標(構造、経過、結果)の検討: レセプトおよびSCRを用いて、在宅医療に係る構造・経過・結果の指標群を作成した。
(2) 訪問診療の提供量に関連する要因の生態学的研究: 二次医療圏別の在宅医療関連データセットを作成し、変数間の相関分析及び共分散構造分析を行った。
(3) 人口構造の変化に伴う医療介護の推計量に基づく在宅ケアの在り方の検討方法に関する研究: 産業医科大学公衆衛生学教室で開発した傷病別の入院および外来患者数、要介護度別利用者数(サービス種別も含む)を推計するツール(AJAPAおよびNewCarest)を用いて、地域別に在宅医療のあり方を考える方法論を作成した。
(4) 要介護度別にみた在宅医療利用者の介護サービス利用状況の分析: 2019年10月に要支援1以上で介護サービスを利用している在宅医療利用患者を抽出し、当該患者の在宅系及び通所系介護サービスの利用状況を年齢階級別に分析した。
(5) 年齢階級別にみた在宅医療の現状に関する検討: 上記データから、在宅医療を受けている患者を抽出し、当該患者の主な傷病の罹患状況及び医療・介護サービスの利用状況を年齢階級別に分析した。
結果と考察
 レセプト情報を用いて構造(例えば、退院支援として退院時共同指導を行っている施設数)、経過(例えば退院支援としての退院前在宅療養指導管理料の算定状況、日常の療養支援としての訪問診療の実施状況、急変時の対応としての緊急往診の算定状況、看取りとしての在宅ターミナル加算算定状況など)、結果(例えば、退院支援の結果としての入院・入所後の在宅復帰率、日常の療養支援の結果としての訪問診療の1年継続率など)の各指標を作成することの可能性が示された。
また、慢性期の患者は入院、介護施設入所、在宅のいずれかで対応されており、これらのサービス間にはトレードオフ関係がある。各地域は3つの資源の状況に応じて、在宅医療の在り方を考える必要がある。訪問診療の提供量が多い二次医療圏は、診療所の外来医療、往診、訪問看護、在宅介護サービスの提供量が多く、また緊急往診や緊急時の他職種によるカンファレンスが多く行われていた。さらに、サービス付高齢者施設などの特定施設の定員数が多い地域では訪問診療の提供量が多くなっていた。
年齢階級別に在宅医療の現状を分析した結果では、在宅医療の内容が年齢階級によって大きく異なっていることがあきらかとなった。未成年は周産期に起因する病態(脳性まひなど)や先天奇形によって障害を得た者の割合が高く、そのために呼吸器疾患や過緊張による消化管症状、長期の臥床による皮膚疾患などの健康問題を持っていた。他方、65歳以上高齢者の場合、ほとんどが介護保険サービスを利用しており、傷病としては糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病とともに心不全と認知症の有病率が高くなっていた。
結論
本研究によって、在宅医療を評価・推進するための構造、経過、結果の各指標群が医療保険、介護保険のレセプト情報を用いて作成できることが示された。また、その促進のためには傷病の違いに配慮したケアマネジメントを行うこと、在宅医療が行いやすい環境整備(プライマリケア体制や在宅医療の行いやすい住環境の整備)が必要であることが明らかとなった。
 ただし、慢性期の患者は入院、介護施設入所、在宅のいずれかで対応されており、これらのサービス間にはトレードオフ関係があることが本研究で明らかとなった。各地域は3つの資源の状況に応じて、在宅医療の在り方を考える必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202222004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究によって、在宅医療を評価・推進するための構造、経過、結果の各指標群が医療保険、介護保険のレセプト情報を用いて作成できることが示された。また、その促進のためには傷病の違いに配慮したケアマネジメントを行うこと、在宅医療が行いやすい環境整備(プライマリケア体制や在宅医療の行いやすい住環境の整備)が必要であることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
臨床的観点としては、在宅医療を促進するために、訪問看護の提供体制があることが重要であることが改めて確認された。病態別の訪問看護の在り方を検討するための臨床研究の端緒になることが期待される。
ガイドライン等の開発
現時点ではまだ本研究の成果は関連の審議会やワーキングループでは取り上げられていないが、在宅医療を推進するための必要条件を明らかにした研究であり、地域医療計画を検討する委員会等で研究成果が活用されることが期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究では介護レセプトと医療レセプトを連携したデータベースを用いて分析を行った。そのため、在宅医療を促進するための介護側の体制についてもエビデンスを構築した。したがって、本研究結果が介護保険事業計画の立案にあたっても参考にされることが期待される。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
202222004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,071,000円
(2)補助金確定額
4,034,000円
差引額 [(1)-(2)]
37,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 406,562円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 2,688,900円
間接経費 939,000円
合計 4,034,462円

備考

備考
千円未満切り捨て

公開日・更新日

公開日
2024-02-28
更新日
-