医師確保計画を踏まえた効果的な医師偏在対策の推進についての政策研究

文献情報

文献番号
202222001A
報告書区分
総括
研究課題名
医師確保計画を踏まえた効果的な医師偏在対策の推進についての政策研究
課題番号
20IA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
  • 小谷 和彦(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 松本 正俊(広島大学医学部)
  • 岡崎 研太郎(国立大学法人九州大学・大学院医学研究院地域医療教育ユニット)
  • 片岡 仁美(臼井 仁美)(岡山大学病院 ダイバーシティー推進センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,337,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医師確保計画の進捗のモニタリング・評価を行うための戦略・指標をとりまとめるとともに、都道府県の医師確保策について情報収集を行い、効果が期待される施策を分析することにある。本年度は、(1)医師確保事例集の作成と分析、(2)我が国における地域枠医学生・医師の地域への長期定着意向に関する因子、(3)医師少数区域への勤務に対する検討、(4)地域医療に従事する女性医師の確保をめぐる諸課題についての検討を行った。
研究方法
(1)医師確保事例集の作成と分析
各都道府県の医師確保計画担当部署に対して、共通フォーマットによる医師確保事例の提供を依頼、取りまとめを行い、研究班からのコメントを付した上で事例集として都道府県に配布した。
(2)医師少数区域への勤務に対する検討
2012年から2018年までの医師・歯科医師・薬剤師統計に登録された医師のうちで、追跡不可、データの不備、2次医療圏の設定変更等があった者を除外した集団を対象にした。医師偏在指標の医師少数区域に移動に関するCox比例ハザードモデルを用い、2012年(ベースライン)要因を検討した。
(3)我が国における地域枠医学生・医師の地域への長期定着意向に関する因子に関する分析
2022年2月から3月にかけて実施した、オンライン質問紙「医学生/医師のキャリア形成と地域医療に関するアンケート」調査の質問項目の中から、予備的な分析に基づき、地域への長期定着意向と関連する可能性のある因子を選択した。ロジスティック回帰分析により、地域への長期定着意向について、上記の選択因子との関連で粗および調整済みオッズ比と95%信頼区間を推定した。
(4)地域医療に従事する女性医師の確保をめぐる諸課題についての検討
「医学生/医師のキャリア形成と地域医療に関するアンケート」の回答データを用い、義務年限中の地域医療勤務の義務履行に影響するライフイベントおよびキャリアプランを探った。また、2021年度に実施したアンケート調査結果を地域医療に従事する女性医師の確保をめぐる諸課題についての検討する観点から分析した。
結果と考察
(1)医師確保事例集の作成と分析
40 都府県から協力が得られ、計159 事例が収集された。主な対象領域を回答した事例を集計したところ、産科医の確保、へき地における医師確保を主な目的とする事例がそれぞれ29 事例と最も多く、次いで、医師少数区域・小児科医の確保を目的とするものが各23 事例と続いた。
(2)医師少数区域への勤務に対する検討
対象者の2012年時点の平均年齢は48歳、男性割合は82%、外科系診療科に勤務した割合は20%であった。医師少数区域に勤務した医師の割合は11%であった。 医師少数区域の医師は、医師多数区域や中程度区域に勤務した医師と比較して平均年齢は高く、男性の割合は高かった。病院に勤務する医師の割合は低く、外科系に勤務する割合は高かった。専門医を保有する割合は低かった。医師少数区域の勤務経験の有意な正の予測要因は、若年、男性、外科系勤務であった。負の予測要因は専門医保有であった。
(3)我が国における地域枠医学生・医師の地域への長期定着意向に関する因子に関する分析
学生(地域枠学生、自治医科大学学生)では現在の学生生活への満足度、大学医局への所属意向、総合診療や家庭医療への興味、高校生への地域枠(自治医大)の勧め、キャリア形成プログラムの総合評価が長期定着意向と相関しており、医師(地域枠医師・自治医科大学卒業医師)では現在の研修環境への満足度、大学医局への所属意向、高校生への地域枠(自治医大)の勧め、が長期定着意向と相関する因子であった。
(4)地域医療に従事する女性医師の確保をめぐる諸課題についての検討
地域医療勤務義務履行に影響するライフイベントとキャリアプランを検討したアンケート調査の解析では、学生、医師ともに、女性の結婚と出産に関する悩みがあることおよび見通しが立たないことが、地域医療勤務義務履行の不確かさの高まりと関連していることが示唆された。
結論
本研究を通じ、医師確保事例集の作成と分析、医師少数区域への勤務に対する検討、我が国における地域枠医学生・医師の地域への長期定着意向に関する因子、地域医療に従事する女性医師の確保をめぐる諸課題についての検討を行い、医師確保計画を踏まえた効果的な医師偏在対策の推進に必要な様々な知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202222001B
報告書区分
総合
研究課題名
医師確保計画を踏まえた効果的な医師偏在対策の推進についての政策研究
課題番号
20IA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
  • 小谷 和彦(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 松本 正俊(広島大学医学部)
  • 岡崎 研太郎(国立大学法人九州大学・大学院医学研究院地域医療教育ユニット)
  • 片岡 仁美(臼井 仁美)(岡山大学病院 ダイバーシティ推進センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医師確保計画の進捗のモニタリング・評価を行うための戦略・指標をとりまとめるとともに、都道府県の医師確保策について情報収集を行い、効果が期待される施策を分析することにある。具体的には、(1)医師確保計画を踏まえた効果的な医師偏在対策の推進についての政策研究、(2)医師不足地域(医師少数スポット、医師少数区域)への医師確保策や勤務に関する研究、(3)我が国における地域枠医学生・医師のキャリア形成プログラム等に関する調査、(4)地域医療に従事する女性医師の確保をめぐる諸課題に関する検討、(5)都道府県別医師数の推計方法に関する検討、(6)医師偏在指標の改善についての検討 の6つの分野について検討を行った。
研究方法
(1)医師確保計画を踏まえた効果的な医師偏在対策の推進についての政策研究
各都道府県が策定した医師確保計画を収集し、特徴的な医師確保施策を抽出・分析した。都道府県の医師確保計画担当部署を対象に質問紙調査・ヒアリング調査を行った。都道府県から医師確保事例の提供を受け、事例集の作成と分析を行った。
(2)医師不足地域(医師少数スポット、医師少数区域)への医師確保策や勤務に関する研究
医師確保計画から医師少数スポットの設定に関する情報を得て分析を行うとともに、医師届出票情報の利用について厚生労働省に申請・許可を得て、特定機能病院と地域医療支援病院に勤務する医師の従たる従事先の実態を集計・分析した。
(3)我が国における地域枠医学生・医師のキャリア形成プログラム等に関する調査
各都道府県が策定したキャリア形成プログラムを収集し考察を加えた。2022 年に「医学生/医師のキャリア形成と地域医療に関するアンケート」調査を実施した。
(4)地域医療に従事する女性医師の確保をめぐる諸課題に関する検討
地域枠卒業生の義務履行状況とライフイベントに関する調査の計画、地域枠卒業生の義務履行状況とライフイベントの関係について既存の資料を基に分析した。「医学生/医師のキャリア形成と地域医療に関するアンケート」の回答データを用い、義務年限中の地域医療勤務の義務履行に影響するライフイベントおよびキャリアプランを探った。
(5)都道府県別医師数の推計方法に関する検討
厚生労働省に医師届出票情報の提供の申出を行い、許可を得て、医師届出を行わない年における都道府県別医師数の推計方法に関する検討を行った。
(6)医師偏在指標の改善についての検討
本研究班内に医師偏在指標の現在の運用状況を踏まえ、医師偏在指標検討小委員会を設置、小委員会において、医師偏在指標の概念の評価と整理を行い、第 8次医療計画に向けた課題を検討した。
結果と考察
(1)医師確保計画を踏まえた効果的な医師偏在対策の推進についての政策研究
各都道府県が医師確保に向けて抱える課題は様々であり、その取組内容も多種多様であること等を明らかとした。また、個別事例の検討から、注目すべきポイントを抽出した。
(2)医師不足地域(医師少数スポット、医師少数区域)への医師確保策や勤務に関する研究
専門医の保有が医師少数区域の勤務経験の負の予測因子であったことは、専門医取得を予定している医師が取得前に医師少数区域に勤務した実態を表していることが理由の一つとして考えられた。へき地や遠隔地での医師定着に向けたキャリア形成支援の重要性を示唆する所見が得られた。
(3)我が国における地域枠医学生・医師のキャリア形成プログラム等に関する調査
 調査結果は、都道府県や大学が卒前卒後の教育研修プログラムやキャリア形成プログラムの改訂をする際に、基礎資料として参考になると考えられた。今後、こうしたプログラムがより充実した内容のものになることで、地域枠・自治医科大学卒業医師の長期にわたる地域への定着意向が高まることが期待される。
(4)地域医療に従事する女性医師の確保をめぐる諸課題に関する検討
将来自身のキャリアに影響しうるライフイベント=不安要素とならず、ライフイベントがいつ起こったとしてもキャリアを確実につなぐことができるという確証を持つことが重要である。そのためには、ロールモデルの存在、支援体制の整備とその周知は大きな意義がある。
(5)都道府県別医師数の推計方法に関する検討
 医師届出の行われない年の都道府県別医師数の推計には、医師確保計画の詳細な評価を行う上で一定の限界がある可能性が高いと考えられた。
(6)医師偏在指標の改善についての検討
小委員会において議論された論点や方向性を参考にしつつ、国から各都道府県へ丁寧な助言がなされることが望ましいと考えられた。
結論
本研究を通じ、医師確保計画を踏まえた効果的な医師偏在対策の推進に必要な様々な知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202222001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医師の確保は、医療政策上の重要課題の一つであり、諸外国においても重要な課題となっている中、我が国が新たに医療計画の中で定めることとなった医師確保計画について研究を進めることが出来たことは、専門的・学術的にも意義のある成果であったと考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究は、政策研究であり、臨床研究には該当しない。
ガイドライン等の開発
医師確保計画策定ガイドライン改訂に向けた諸課題を検討した、令和4年5月11日、6月16日、8月10日に開催された厚生労働省の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」において、本研究班の研究成果の一部が紹介されており、医師確保計画策定ガイドライン ~第8次(前期)~ の策定に貢献した。
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」の3回の会議において4課題について研究班の成果が紹介された。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
202222001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,637,000円
(2)補助金確定額
5,637,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,042,410円
人件費・謝金 2,730,625円
旅費 73,145円
その他 490,820円
間接経費 1,300,000円
合計 5,637,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-02-28
更新日
-