オーダーメードな肝炎ウイルス感染防止・重症化予防ストラテジーの確立に資する研究

文献情報

文献番号
202221009A
報告書区分
総括
研究課題名
オーダーメードな肝炎ウイルス感染防止・重症化予防ストラテジーの確立に資する研究
課題番号
21HC2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
四柳 宏(東京大学 医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野)
研究分担者(所属機関)
  • 森岡 一朗(日本大学 医学部小児科学系 小児科学分野)
  • 酒井 愛子(茨城県立こども病院 小児医療・がん研究センター/国立国際医療研究センター ゲノム医科学プロジェクト)
  • 惠谷 ゆり(大阪府立母子保健総合医療センター 消化器・内分泌科)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 磯田 広史(佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター)
  • 河野 豊(徳島大学  大学院医歯薬学研究部 実践地域診療 医科学)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 井上 貴子(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 田中 聡司(国立病院機構大阪医療センター 消化器内科)
  • 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
  • 奥新 和也(東京大学 医学部附属病院)
  • 堤 武也(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
14,785,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では小児・医療従事者(医科および歯科)などハイリスク集団を対象にその感染状況やHBワクチン実施率などの現状把握、過去の施策の効果検証を行い、これらの集団における特性やリスク因子の分析を行う。また、その結果を参考にそれぞれの集団ごとの実情に応じて、e-learning等の教育・啓発資材の開発・改修及びそれらの展開を行う。さらに、ワクチンなどを含めた感染防御策に関する資材の作成などを行い、それぞれの集団に対し対応策の提案を行うことで、新規感染者の発生を効果的に抑制しうる政策企画立案に資する研究を実施する。
 研究の評価には肝炎の疫学状況の把握が必要である。ウイルス肝炎のうちA型、E型は4類、B型、C型は5類の全数報告疾患であるが、診療にあたるのが主に消化器内科医であることもあり、十分な報告が行われていないことが指摘されてきた。そこで国立感染症研究所における届出状況、健康保険データベースをもとにした肝炎患者数の推計などによりできるだけ正確に状況を把握する。
研究方法
1. 小児分野
・救急外来における小児検体の収集・ウイルスマーカーの測定開始の準備を行い、開始する。
・保育施設におけるe-learningを実施する。
・名古屋市立医科大学のエコチル拠点における検体収集・測定を継続する。
2. 成人分野
・医療従事者・事務職員を対象にe-learningを実施する準備をし、開始する。
・肝炎コーディネーターを対象にe-learningを実施する準備を行い、開始する。
・高齢者施設職員を対象にe-learningを実施する準備を行い、開始する。
・歯科領域におけるe-learningを作成する。
3. ワクチンデータベース分野
・医療従事者のワクチン接種に関するデータを収集し、データベースを更新する。
4. 疫学分野
・肝炎情報センターに届け出のある肝炎症例の収集・解析を行う。
・CDXを用いた急性肝炎の症例把握のパイロット研究を行う。
・健康保険データベースを用いた急性肝炎症例の解析を行う。
(倫理面への配慮)
 1、2、3に関しては前研究班からの継続案件ではあるが、研究計画に修正が加えられており、再度の倫理申請を行った。4に関しては倫理上の申請は不要である。
結果と考察
結果1. 小児分野
・多施設でのHBワクチン定期接種後の疫学調査を進め、現時点での測定結果をまとめた。
・保育施設勤務者に対するe-learningの実施の準備を完了した。
2. 成人分野
・成人に対するe-learningの実施にあたっての倫理申請を行い、実施の準備を完了した。
・歯科医療従事者に対するe-learning教材作成のためのアンケートを行い、肝炎ウイルスの感染経路・標準予防策の認知度などをまとめた。
・HBV再活性化の感度・有効性・簡便さにおいて有効な検査法に関して血液・腫瘍内科の専門家を中心とした組織を立ち上げ、ウエブ会議を行った。
3. データベース分野
・エコチル検診を受診した8歳児におけるHBVへの感染状況を、ワクチンを受けた児、受けていない児それぞれについて調査し、前者では感染はほぼ見られないことを示した。
4. 疫学分野
・コロナ禍での肝炎を含めた感染症の発生状況の調査を行い、E型肝炎は増加しつつあるものの他のウイルス肝炎の発生状況は減少したままであること、B型肝炎の発生状況には大きな変化がないことを示した。
・データベースに基づき、医療施設に対する肝炎治療の実績収集の準備を終えた。また、血液透析に関わる重回帰分析の結果、C型急性肝炎の発症数と血液透析の発症数との関係が比較的強いことが示された。
・CDXを用いた疫学研究を東京大学医科学研究所附属病院で開始した。今後多施設で実施の予定である。
・データベースに基づいたB型肝炎発生状況の追加調査として、日本病院会への調査の準備を行った。

結論
1. ワクチン定期接種の導入は小児におけるB型肝炎ウイルスへの感染を減らしてきている。今後エコチル調査と連動してワクチンの効果が明らかにされるものと思われる。
2. 福祉相談員においては肝炎の認知度は高いが不十分な点もあることが示唆された。
3. 医療従事者のうち、ワクチン接種で得たHBs抗体が消えやすい群の特徴が明らかになりつつある。
4. データベース研究からコロナ禍で性感染症以外の疾病が一時的に大きく減っていることが示唆された。
5. 血液透析とHCV感染の関連が確認された。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202221009Z