肝炎総合政策の拡充への新たなアプローチに関する研究

文献情報

文献番号
202221006A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎総合政策の拡充への新たなアプローチに関する研究
課題番号
20HC2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 是永 匡紹(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 玉城 信治(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 大座 紀子(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
  • 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
  • 瀬戸山 博子(熊本労災病院 消化器内科)
  • 西井 正造(公立大学法人横浜市立大学 先端医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
24,131,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップにおいて、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、改善策を提示しにくい状況である。
本研究班では以下を主な目的とした。①先行研究班(指標班)で作成した肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業、医療の程度と質を評価する指標を継続調査する。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)(2011年、2017年、2018年、2020年実施)の結果を比較解析することで、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、受検行動規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。④一般国民に対する波及力の高い肝炎啓発方法の確立を目指して新規エディテインメント資材を開発する。
研究方法
肝炎医療指標、病診連携指標は全国肝疾患診療連携拠点病院(以下、拠点病院)と肝疾患専門医療機関(以下、専門医療機関)を対象に実施した。専門医療機関に対しては、施設認定要件と肝炎医療、病診連携状況調査を兼ね備えた内容の調査を、前年度と同じ10都道府県を対象に実施した。自治体に関しては、厚労省の自治体事業調査結果から指標関連結果を抽出し指標値を算出、評価した。拠点病院事業指標については各指標の経年推移を解析した。
令和2年度に実施した受検率全国調査(国民調査2020)を解析し、非認識受検・認識受検を規定する要因、かかりつけ医の役割等を明らかにした。
多施設共同でウイルス肝炎患者コホートを設定し、B型、C型慢性肝疾患におけるマルコフモデルによる肝病態の推移解析を行った。B型肝炎における肝線維化指標として、HBV RNA、MREの有用性を解析した。
肝炎啓発エデュテインメント資材(肝炎すごろく)を用いて、一般住民、医療関係者を対象に事前・事後テストを実施し学習効果を評価した。
結果と考察
肝炎医療指標、自治体事業指標、拠点病院事業指標
拠点病院においては高いレベルで均てん化された肝炎医療が提供されていた。肝硬変患者に対する上部消化管内視鏡検査、栄養相談の実施率は低く、COVID-19の影響が示唆された。専門医療機関においても多くのウイルス肝炎患者が治療を受けている実態が明らかになった。診療連携指標は専門医療機関とかかりつけ医の診療連携に比べて、専門医療機関と拠点病院との診療連携率は低かった。自治体事業指標は過去3年間の指標調査結果を解析し論文化した。拠点病院事業指標では、啓発活動、研修事業においてWEBを活用した形式で実施数・参加者数ともに回復傾向であった。
国民調査2020の解析
国民調査2020における認識受検率は、HBV 17.1%、HCV 15.4%で前回よりも低い値であった。また、検査認識受検率はHBV 71.1%、HCV 59.8%で前回からほぼ変化なしであった。かかりつけ医を持っているものは全体で61%であり、高齢なほど高い傾向がみられた。また健康診断で「要再検」となったときの対応は、20・30代は家族・友人に相談やインターネットで情報収集が多かったが、50代以上はかかりつけ医を受診するものが多かった。受診行動におけるかかりつけ医の重要性が示唆された。
肝硬変移行率評価指標(マルコフモデルでの解析)
マルコフモデルによるC型肝炎の病態推移解析では、肝炎治療により、肝線維化進行、肝病態進行、肝発癌が抑制されることが示され、 慢性肝炎>代償性肝硬変>非代償性肝硬変の順に治療による肝線維化抑制へのインパクトがあることが示唆された(論文報告)。B型肝炎においてHBV RNAと病態との関連性は明らかではなかった。肝癌のある症例と肝癌のない症例を比較すると肝癌のある症例において有意にMREによる肝硬度が高く、肝硬度の測定によって発癌リスク症例を同定することが出来た。
肝炎啓発エデュテインメント資材の開発
肝炎啓発ツールとして「肝炎すごろく」を開発した。一般の参加者において、すごろくプレイ後のテスト正答率がプレイ前と比べて有意に向上した。肝炎ウイルスの感染経路に関する設問の正答率が最も大きく向上した。肝炎すごろくのNPS値が高値であったことから、肝炎すごろくはEdutainment資材として機能している可能性が示唆された。
結論
拠点病院向け肝炎医療(29指標)、専門医療機関向け肝炎医療(16指標)、診療連携(6指標)、自治体事業(19指標)、拠点病院事業(20指標)を継続調査した。外部委員を含めた指標検討委員会委員を対象に指標結果報告会を実施した。指標結果を各施設、都道府県の担当者で共有し、課題を明らかにすることで、医療・政策の均てん化が推進される。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202221006B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎総合政策の拡充への新たなアプローチに関する研究
課題番号
20HC2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 是永 匡紹(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 玉城 信治(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 大座 紀子(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
  • 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
  • 瀬戸山 博子(熊本労災病院 消化器内科)
  • 西井 正造(公立大学法人横浜市立大学 先端医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップにおいて、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、改善策を提示しにくい状況である。
本研究班では以下を主な目的とした。①先行研究班(指標班)で作成した肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業、医療の程度と質を評価する指標を継続調査する。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)(2011年、2017年、2018年、2020年実施)の結果を比較解析することで、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、受検行動規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。④一般国民に対する波及力の高い肝炎啓発方法の確立を目指して新規エディテインメント資材を開発する。
研究方法
肝炎医療指標、病診連携指標は全国肝疾患診療連携拠点病院(以下、拠点病院)と肝疾患専門医療機関(以下、専門医療機関)を対象に実施した。専門医療機関に対しては、施設認定要件と肝炎医療、病診連携状況調査を兼ね備えた内容の調査を、前年度と同じ10都道府県を対象に実施した。熊本県の専門医療機関を対象としたパイロット調査を行った。厚労省の自治体事業調査結果から指標関連結果を抽出し自治体指標値を算出、経年評価した。拠点病院事業指標の経年推移を解析した。
令和2年度に実施した受検率全国調査(国民調査2020)を解析し、非認識受検・認識受検を規定する要因、かかりつけ医の役割等を明らかにした。
多施設共同でウイルス肝炎患者コホートを設定し、B型、C型慢性肝疾患におけるマルコフモデルによる肝病態の推移解析を行った。B型肝炎における肝線維化指標としてMREの有用性を検討した。
肝炎啓発エデュテインメント資材(肝炎すごろく)を開発・制作し、一般住民、医療関係者を対象に事前・事後テストを実施し学習効果を評価した。
結果と考察
肝炎医療指標、自治体事業指標、拠点病院事業指標
拠点病院においては高いレベルで均てん化された肝炎医療が提供されていた。重要指標の中で未達成指標の障壁因子を明らかにした。専門医療機関においても多くのウイルス肝炎患者が治療を受けている実態が明らかになった。熊本県専門医療機関(一次医療機関を含む)でも同様であった。診療連携指標はCOVID-19の影響で改善を認めなかった。診療連携にICTを利用している拠点病院は約30%であった。自治体事業指標は過去3年間の指標調査結果を解析し論文化した。拠点病院事業指標では、啓発活動、研修事業においてWEBを活用した形式で実施数・参加者数ともに回復傾向であった。
国民調査2020の解析
国民調査2020における認識受検率は、HBV 17.1%、HCV 15.4%で前回よりも低い値であった。また、検査認識受検率はHBV 71.1%、HCV 59.8%で前回からほぼ変化なしであった。かかりつけ医を持っているものは全体で61%であり、高齢なほど高い傾向がみられた。また健康診断で「要再検」となったときの対応は、20・30代は家族・友人に相談やインターネットで情報収集が多かったが、50代以上はかかりつけ医を受診するものが多かった。受検したことを忘れている既受検者数を補填すると、検査受検経験率はHBV 85.5%、HCV 76.4%であった。
肝硬変移行率評価指標(マルコフモデルでの解析)
マルコフモデルによるC型肝炎の病態推移解析では、肝炎治療により、肝線維化進行、肝病態進行、肝発癌が抑制されることが示され、 慢性肝炎>代償性肝硬変>非代償性肝硬変の順に治療による肝線維化抑制へのインパクトがあることが示唆された(論文報告)。B型肝炎において、MREによる肝硬度は肝癌合併例は非合併例に比べて有意に高く、肝硬度測定によって発癌リスク症例を同定可能であった。
肝炎啓発エデュテインメント資材の開発
肝炎啓発ツールとして「肝炎すごろく」を開発した。学習効果を検証するために実施した事前・事後テストでは、プレイ後のテスト正答率がプレイ前と比べて有意に向上した。肝炎すごろくのNPS値が高値であったことから、肝炎すごろくはEdutainment資材として機能している可能性が示唆された。
結論
拠点病院向け肝炎医療(29指標)、専門医療機関向け肝炎医療(16指標)、診療連携(6指標)、自治体事業(19指標)、拠点病院事業(20指標)を継続調査した。外部委員を含めた指標検討委員会委員を対象に指標結果報告会を実施した。指標結果を各施設、都道府県の担当者で共有し、課題を明らかにすることで、医療・政策の均てん化が推進される。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202221006C

収支報告書

文献番号
202221006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
31,370,000円
(2)補助金確定額
31,370,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,172,980円
人件費・謝金 7,823,900円
旅費 382,688円
その他 11,751,432円
間接経費 7,239,000円
合計 31,370,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-04-30
更新日
-