関節構成支持体(靭帯、半月板)損傷に対する細胞移植を必要としない組織再生と臨床応用の研究

文献情報

文献番号
200921041A
報告書区分
総括
研究課題名
関節構成支持体(靭帯、半月板)損傷に対する細胞移植を必要としない組織再生と臨床応用の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-長寿・若手-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 祐介(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 脇谷滋之(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 寺井秀富(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
運動器痛の一つであり、本邦1千万人を超えている変形性膝関節症(膝OA)は予防的治療がなく、高価な人工関節置換術によって、医療費高騰が危惧される。膝OAの初期病因である靭帯、半月板損傷に対して機能的な靭帯、半月板再建方法は2次的膝OA発症を減少させ、医療費削減すると考えられる。現在の靭帯再建術、半月板損傷の治療は不十分で正常に類似した組織学的再生修復による再建が必要と考える。細胞移植なしにサイトカインであるBMPを用いた方が簡易、安価であり実用性が高いと考えられる。白色家兎を用いた研究計画をした。
研究方法
1,半腱様筋腱にBMP注入6週後に前十字靱帯再建術を行う。術後1,2カ月後にCT撮影を行い、骨癒合の進行を評価する。組織学的評価、力学的評価を行い、臨床応用の可能性を探る。
2,BMP注入腱を直接再建材料に用いる1期的手術モデルを作成後1,2ヶ月にレントゲン、組織学的評価、力学的評価、軟骨評価 を行う。
結果と考察
1,ACL再建術後2ヶ月の肉眼像ではBMP+群で同様の組織が骨孔内を占拠していた。組織像にて移植骨と母床骨は骨癒合しており、正常組織に近い様相を呈し、一部に
タイドマークの出現も見られたことから組織学的にはenthesis構造が保たれていた。破断強度は
BMP群で有意に強く、新生BTBを用いた前十字靭帯再建術は機能的にも優れていると考えられた
2,術後4週・8週ともに、Low-dose群では関節軟骨の変性は内側半月板切除群と比べ軽度であった
rhBMP(-)群と比較して、移植腱が軟骨化していた。High-dose群は術後8週において
移植腱の一部が骨化しており、関節軟骨変性も進行した。rhBMP-2を腱に注入すると局所的に軟骨
細胞が多数出現することで半月板様組織を呈する一方、高濃度であれば骨化まで誘導された。
結論
1,rhBMPを用いることによって腱を直接骨化させ、膝蓋腱のごとくのエンテーシス組織を新生することが動物実験レベルで可能となった。これを用いることで、ドナー部位の短所を補い、かつ、より正常に近似した組織学的な再建が出来ると考えられた。
2,rhBMPを用いた腱内注入によって、関節外では骨化まで誘導されてしまうが、関節内内環境では軟骨化で維持され、半月板様組織再建が動物実験レベルで可能となった。これによって関節軟骨変性抑制手術の可能性が広がった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200921041B
報告書区分
総合
研究課題名
関節構成支持体(靭帯、半月板)損傷に対する細胞移植を必要としない組織再生と臨床応用の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-長寿・若手-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 祐介(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 脇谷 滋之(大阪市立大学 大学院医学研究科 )
  • 寺井 秀富(大阪市立大学 大学院医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の生活の質(QOL)を障害する運動器痛の一つである変形性膝関節症(膝OA)に対して末期では高価な人工膝関節置換術の選択にならざるを得ない。膝OAの病因に靭帯損傷、半月板切除後など関節不安定性に由来する2次的関節症が指摘されている。靭帯・半月板損傷に対してより正常に類似した機能と組織学的修復、再建が必要と考えられる。この研究では細胞移植ではなくサイトカインのBMPを用いた新しい靭帯再建術と半月板再建術の確立を目的としている。
研究方法
1,骨靱帯結合部の自家移植材の作成技術の確立
白色家兎の半腱様筋腱をナイロンで4箇所結紮し、その間にrhBMP(15ug)を注入した。注入6週後にその移植腱複合体を使用してACL再建術を行った。X-P、CT、各種染色でenthesis構造の再現と骨癒合を検索した。引き抜き試験にて最大破断強度を測定した。
2,半腱様筋腱内での腱内軟骨化モデルの作成と半月板再建術の確立
内側半月板切除後、移植腱の関節部分のみにrhBMP-2溶液10ulを注入した家兎半腱様筋腱を関節内に移植した。rhBMP-2を容量によって群分けした。組織採取し、soft X ray、各種染色を行い、スコアリングした。
結果と考察
1,ACL再建術後2ヶ月ではBMP+群での組織が移植骨と母床骨は骨孔内を占拠し、骨癒合が得られていた。骨靭帯移行部では正常組織に近い様相を呈しenthesis構造が保たれていた。破断強度はBMP群で有意に強く、新生BTBを用いた前十字靭帯再建術は機能的にも優れていると考えられた。
2,術後4週・8週ともに、Low-dose群では関節軟骨の変性は内側半月板切除群と比べ軽度で、移植腱が軟骨化していた。High-dose群は術後8週において移植腱の一部が骨化しており、関節軟骨変性も進行した。rhBMP-2を腱に注入すると局所的に軟骨細胞が多数出現することで半月板様組織を呈する一方、高濃度であれば骨化まで誘導された。
結論
1,この技術を応用することでより正常構造に近い生理的組織構造を有した靭帯再建術が行われることが期待できる。その一方、今回の方法では2期的手術を余儀なく行う必要があり、1期的な再建技術の確立が必要と考えられる。また、より臨床応用に向けて大型動物を使用した研究が必要と考えられる
2,関節内環境によって移植腱の腱内軟骨化が生じ、組織学的に半月板様組織の再生が確認できた。一方、BMPの量が多くなると骨化まで誘導され、関節軟骨変性を助長する可能性が示唆された。長期モデルにおける軟骨変性抑制効果を確認する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921041C

成果

専門的・学術的観点からの成果
骨形成蛋白であるBone Morphogenetic Protein(BMP)を使用することによって、靭帯を骨および軟骨に誘導することができることを動物レベルで明らかとなった。細胞移植を用いると莫大な費用がかかるが、サイトカインのみで正常に近い再建が出来ることは意義深い。
臨床的観点からの成果
臨床現場では正常に近い再建術を行うことは困難である。また移植に人工靭帯、人工半月板を使用するには今のところエビデンスレベルが低い状態である。その観点からすると、サイトカインを付加することによって正常に近い再建術の可能性が広がり、意義深い。しかしながら現在のところ本邦ではBMPの臨床治験が行われていないために、今後臨床治験含め、臨床応用が可能となる研究を行う必要がある。
ガイドライン等の開発
今回の研究では動物実験を行っており、臨床応用のレベルに達することが出来なかった。
BMPの臨床治験がスタートすれば、積極的に治験に参加していく予定である。
その他行政的観点からの成果
介護予防推進に向けて大きな課題となっている膝痛予防、治療の可能性を広げた点では評価をいただいたが、この術式の普及に関して2期的手術における患者への侵襲度、満足度等の評価と改善が課題である。
その他のインパクト
2008、2009年度の日本整形外科学会基礎学術集会、2008年度のアメリカ整形外科学会において、学会発表を行い、評価を得た。2010年The 7th Combined Meeting of the Orthopaedic Research Societiesにて New Investigator Recognition Awardsを受賞した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-