文献情報
文献番号
202221002A
報告書区分
総括
研究課題名
ネットワーク社会における地域の特性に応じた肝疾患診療連携体制構築に資する研究
課題番号
21HC1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(国立大学法人 金沢大学 医薬保健学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 井戸 章雄(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 磯田 広史(佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター)
- 井出 達也(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
- 日浅 陽一(愛媛大学大学院 医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
- 寺井 崇二(新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野)
- 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,731,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝炎対策には居住地域による取り組みの違いがみられ、より良い肝炎医療を提供するためには、地域の特性に応じた対策を構築する必要がある。研究代表者金子は、先行研究において、肝炎診療の地域差の改善には、Information and Communication Technology(以下ICT)等を利用することが極めて有用であることを報告した。本研究では、先行研究で必要性と有用性が示されたICT等を駆使して、地域の特性を生かした肝炎患者の診療連携体制を確立する方法論やモデルケースを創出する。
研究方法
本研究には、肝炎診療連携へのICT等の応用を開始している愛媛、佐賀、石川及び県土が広い、島嶼部を有する、人口密集地を有するなどICT等の応用が喫緊の課題である鹿児島、福岡、新潟、各県の拠点病院の研究分担者が、以下のように各県毎に様々な方式で肝炎診療連携にICT等を活用する。さらに疫学班(研究代表者 田中純子)と連携し、各都道府県の肝炎診療連携体制の現状や問題点を様々なパラメーターを用いて比較分析する。また政策拡充班(研究代表者 考藤達哉)と連携し、肝炎患者の病診連携指標を用いて評価する。
結果と考察
今年度は、初年度に引き続き石川県は、いしかわ診療情報共有ネットワーク、佐賀県はピカピカリンク、福岡県(久留米地域)はアザレアネット、愛媛県はHiMEネット、新潟県(佐渡島)はさどひまわりネット、といった地域医療情報ネットワーク(以下、地域ネット)、鹿児島県はケーブルテレビといった既存のICT等の肝炎診療連携への応用を行った。石川県では、拠点病院の肝臓専門医が、IDリンクで診療情報を閲覧しつつZoomを用いて非指定医療機関のC型肝炎患者をオンライン診療行い、肝炎治療の公費助成診断書を記載した。この取り組みにより、これまで抗ウイルス療法を受けられなかった患者に対して、抗ウイルス療法を導入できた。さらに、佐賀県では、Zoomを用いて拠点病院の医師が遠隔地の医療機関の腹部エコー検査をリアルタイムで支援する取り組みを開始した。このようにオンライン会議システムを利用することで、拠点病院の肝臓専門医が拠点病院から出張することなく、遠隔地の肝炎ウイルス患者行い、良質な肝炎診療の提供につなげることができた。愛媛県では、初年度、肝癌に対する分子標的薬、レンバチニブを服用中の患者を対象にHiMEネットのSNSアプリを用いた薬薬連携を開始したが、今年度は、C型肝炎患者に対する抗ウイルス療法を受ける患者にも対象を拡大した。これにより、診察医の処方意図、副作用のモニタリング等に関して、処方医と薬剤師間で迅速な情報共有が可能になった。一方、福岡県筑後地区では、地域ネットの肝炎診療連携への応用を模索したが、地域ネットの認知度が低い、あるいは地域ネットへの参加医療機関が少ない、など問題点が浮き彫りになった。新潟県佐渡島では、地域ネット利用した島民の肝炎ウイルス感染状況の把握を行うことができ、さらに地域ネットを利用した地域連携パスを構築することで今後島内の肝炎診療連携の効率化を図る。鹿児島県には利用可能な地域ネットが存在しなかったため、島嶼部において世帯加入率の高いケーブルテレビを用いた啓発活動を開催し、島民から一定の評価をえた。奄美大島におけるICT等を利用した肝炎診療連携を計画した。ICT等を利用したウイルス性肝炎の啓発を行い、肝炎ウイルス検査の受検率が上昇した。肝炎情報センターの考藤班員は、拠点病院を対象にICT利用状況調査を行った。ICTを利用している施設は21施設(29.6%)、そのうち肝炎診療連携にICTを利用している施設は6施設(28.6%)にとどまっており、ICTの普及度・認知度が低いことを明らかにした。しかし、ICTを活用している施設は、未使用の施設と比較して、紹介率、逆紹介率、診療連携率は有意に高く、ICTの普及度・認知度を高めることが肝炎診療連携を促進する可能性が示唆された。広島大学田中班員は、様々なパラメーターから都道府県毎の肝炎対策をレーダーチャートにより視覚化した。また令和4年度、全体研究として分担研究者が所属する医療機関を含む全国計10の医療機関で、肝炎ウイルス患者を対象とした「肝炎ウイルス検査結果および治療歴記録の携帯に関しての患者意識調査」を行い、計1408名から回答をえた。
結論
班員が各都道府県で、地域ネットやケーブルテレビなどの様々なICT等を肝炎診療連携への利用を図った。肝炎診療連携の改善における有用性が示されたが、様々な問題点も明らかなになった。次年度も、それぞれの地域でICT等の肝炎診療連携への応用を拡充し、効果検証を行い、長所や短所を明らかにする。また疫学班、政策拡充班と連携し、ICT等を用いた様々な取り組みの有用性を検証していく。
公開日・更新日
公開日
2024-03-29
更新日
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