腰痛の診断、治療法に関する研究:痛み・しびれの可視化技術の確立並びに、MRIを用いた脊髄投射路及び末梢神経イメージング法の確立

文献情報

文献番号
200921039A
報告書区分
総括
研究課題名
腰痛の診断、治療法に関する研究:痛み・しびれの可視化技術の確立並びに、MRIを用いた脊髄投射路及び末梢神経イメージング法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-長寿・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
戸山 芳昭(慶應義塾大学 医学部整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 雅也(慶應義塾大学 医学部整形外科 )
  • 石井 賢(慶應義塾大学 医学部整形外科 )
  • 百島 祐貴(慶應義塾大学 医学部放射線診断科)
  • 紺野 愼一(福島県立医科大学 整形外科)
  • 牛田 享宏(愛知医科大学 学際的痛みセンター)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所 生体組織工学)
  • 岩崎 幹季(大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学(整形外科))
  • 玉置 憲一(実験動物中央研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、最新のイメージング技術を駆使して、高齢者の腰痛や神経障害をきたす疾患の早期診断、病態の解明、予後予測などを可能とする画像診断技術の確立を目指すことである。
研究方法
1)拡散テンソル投射路撮影(DTT)による神経投射路の可視化:①サル損傷脊髄のDTTを撮像し運動機能評価と組織学的検討を行った。②頚椎・頚髄疾患患者のDTTを撮像し神経症状の重症度と比較検討した。
2)分子標的イメージング:神経障害部位の炎症・疼痛の可視化に必要なMRIプローブの作製を行った。
3)functional MRIを用いた腰痛に対する脳内変化の可視化:①腰痛患者と腰痛のない対照群で仮想腰痛体験をしながらfMRIを撮像した。②慢性腰痛患者と正常対照群に対して腰痛刺激下にfMRIを撮像した。
4)腰椎変性疾患を対象とし中間位、最大前後屈位、最大両回旋位の5体位で、CT撮影を行い、画像解析処理による腰椎椎間運動の3次元解析を行った。
結果と考察
1)サル損傷脊髄に対するDTT、また頚髄疾患患者に対する術前後のDTTにより損傷後の機能予後を評価できることが示唆された。本研究により神経投射路の可視化が可能になれば、神経障害の早期診断や予防、さらには手術治療の適応のタイミングや予後予測につながり、脊椎脊髄による神経機能障害を軽減できる可能性がある。
2)炎症と疼痛の可視化に必要な分子標的プローブの作製に成功した。今後、疼痛・炎症に特異的に発現する分子や受容体に着目して、DDS技術を駆使してMRI分子プローブを作製する予定である。
3) fMRIを用いた腰痛に対する脳内変化は、腰痛患者では仮想腰痛タスクを視認した際、腰痛誘発刺激を行った際に健常者とは異なるパターンの脳活動が検出された。本研究では患者に潜む心理的要因を脳機能画像診断により明らかにし、これまで施策が遅れていた慢性疼痛の病態の解明と客観的評価の構築が実現できることが期待できる。
4)腰椎変性疾患と正常腰椎との微細な3次元椎間運動の相違を見出し、その椎間挙動パターンを分類し、臨床所見との相関関係を検討した結果、従来の modalityでは限界のあった生体腰椎の微細な椎間運動を3D-CTを用いたボリュームレジストレーション法により3次元的かつ高精度で捉えることができた。今後症例を重ねて腰椎不安定性の新たな評価や腰痛の病態解明につながる可能性がある。
結論
最新のイメージング技術を駆使することにより、高齢者の腰痛や神経障害をきたす疾患の早期診断、病態の解明、予後予測などを可能にできる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-