非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者に合併する腫瘍への包括的対策に関する研究

文献情報

文献番号
202220029A
報告書区分
総括
研究課題名
非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者に合併する腫瘍への包括的対策に関する研究
課題番号
21HB2005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
四柳 宏(東京大学 医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 晋(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターエイズ先端医療研究部)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院)
  • 照屋 勝治(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター臨床研究センター)
  • 木内 英(東京医科大学 臨床検査医学分野)
  • 三田 英治(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター) 消化器科)
  • 高橋 俊二(公益法人がん研究会有明病院 総合腫瘍科)
  • 渡邉 珠代(石川県立中央病院 免疫感染症科)
  • 茂呂 寛(新潟大学医歯学総合病院・感染管理部)
  • 藤井 輝久(広島大学 病院輸血部)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 統括診療部)
  • 古賀 道子(東京大学医科学研究所感染症分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染者、ことに血液凝固因子製剤による感染者が悪性腫瘍に罹患した場合、HIVへの感染期間が長いため、非感染者さらに性交渉による感染者に比べ、抗腫瘍免疫が十分に働かないことが想定される。実際肝細胞癌患者の予後も非感染者に比べ不良の傾向がある。従って早期診断・治療が大切であるが身体障害、精神的負担などから検診を受検している感染者はごく一部であり、健康診断の方法を見直す必要がある。
 血液凝固因子製剤による感染者は血液凝固異常の治療・関節内出血に伴う身体の不自由・HIV感染症に罹患したことによる精神的苦痛など数多くの障害を抱えている。悪性腫瘍を合併した場合、適切な医療機関を受診することが困難である場合もある。
 以上のようにHIV感染者、ことに血液製剤による感染者に対しては健康診断の受検、適切な医療への紹介、精神的サポートなどの課題がある。こうした課題に包括的に取り組むための制度構築と実践が本研究班の目的である。
研究方法
1. 健康診断受検のための制度設計の構築と運用
・各ブロック拠点施設での検診プログラム・受検実態に関してブロック拠点施設全体に対して調査を行う
・検診受診についての問題点を感染者への聞き取り調査から明らかにする。
2. 悪性腫瘍診断時・診断後の診療支援
・感染者に合併した悪性腫瘍について全国調査を行う。
・感染者の罹患した悪性腫瘍に関する情報を収集し、診断上・治療上の問題を抽出する。
・症例の比較的多い肝疾患・消化器疾患に関して現状調査を行う。
・感染者が悪性腫瘍に罹患した際の受診・受診後の問題点に関して情報を収集する
3. 悪性腫瘍罹患に伴う精神的ケア
・2で収集した問題点を参考にして感染者の支援に関する問題点をまとめる
・患者の精神面での支援に際して必要な体制を整える
4.支援・疾患に関する広報
・令和3年度に行った患者・かかりつけ医向きの案内を継続する。特に肝細胞癌に対する注意喚起を行う。(倫理面への配慮)
結果と考察
1. 健康診断受検のための制度設計の構築と運用
・各ブロック拠点施設での検診プログラム、受検実態に関して調査を行った。
・ブロック拠点での検診事業に加え、ブロック拠点に通院していない被害者に対して、必要な検査を受ける体制を組むことの大切さがわかった。
2. 悪性腫瘍診断時・診断後の診療支援
・感染者に新たに発生した悪性腫瘍はブロック拠点からは肝細胞癌1名(再発1名、死亡1名)、膵癌1名であった
・全国調査を行い、施設の35%、患者の50%を把握しているものと推定された。2015年1月から2021年12月の7年間で合計37名の悪性腫瘍患者の発生が確認された。このうち15名が肝細胞癌であった。
3. 悪性腫瘍罹患に伴う精神的ケア
・医療機関の体制に関して(1)困ったときに相談できる人(コーディネーターナース)がいない、(2)
ACCやブロック拠点病院のような濃厚な関わり(救済医療)が受けられない、といった問題があり、被害者の精神的不安につながっていることが指摘された。
・診断当初は冷静に受け止めていても、闘病が長く続く中で「いつまで抗ガン剤等が使えるか」「この先の治療方法はあるのか」等の不安、合併症の辛さなど本人の精神的負担が増強し、家族にも負担になっていることが指摘された。
結論
血液凝固因子製剤による感染者における健康診断・発見された悪性腫瘍に関する実態調査を行った。悪性腫瘍を合併した患者に対する精神的問題点の把握、支援・情報提供を行った。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202220029Z