非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究

文献情報

文献番号
202220028A
報告書区分
総括
研究課題名
非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究
課題番号
21HB2004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤谷 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 田沼 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 大金 美和(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院)
  • 茂呂 寛(新潟大学医歯学総合病院・感染管理部)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター臨床研究センター)
  • 柿沼 章子(社会福祉法人はばたき福祉事業団)
  • 石原 美和(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学研究科)
  • 長江 千愛(聖マリアンナ医科大学 小児科)
  • 木村 聡太(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
60,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、非加熱血液製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養上の問題点の実態を多くの側面から調査し支援すると共に、適切な医療・ケア・支援を長期にわたり地域格差なく提供できる体制の構築に貢献する事が目的である。
研究方法
サブテーマを5課題設定した研究。
結果と考察
●サブテーマ1医学的:医学的管理・医療連携・受療支援
①ACC救済医療室が病病連携を行った症例の検討を行った。医学的には肝疾患関連の支援症例が多く、福祉や医療費に関する情報の支援を行った症例も多かった。
➁北海道地区では個別リハビリ検診虚血性・虚血性心疾患スクリーニングテストを行い、「北海道薬害被害者支援プロジェクト」での連携を行った。新潟地域では、県内の関連職員を対象とした研修を実施し、新潟医療関連感染制御コンソーシアムの事業に、「HIV 診療体制の構築」の追加がなされた。
③福岡では、県社会福祉士会、県精神保健福祉士協会、県介護支援専門員協会、県医療ソーシャルワーカー協会、県介護福祉士会の5つの職能団体との連携を開始し、県精神科病院協会と福岡県介護学会での講演を行った。「第1 回福岡県HIV サポーター連携カンファレンス」をオンライン開催。
④大金らは、コーディネータナースの症例分析から、2段階(医療チーム内でのステップ1、他施設との連携によるステップ2)より成る個別支援モデルを作成し、その観点から、医療・情報収集シート/療養支援アセスメントシート、福祉・介護情報収集シート/療養支援アセスメントシートを改訂した。
●サブテーマ2:運動機能・ADLの低下予防
①国立国際医療研究センターを含む全国5施設にてリハビリ検診を実施し、94名が参加、運動機能の低下、ADLの低下、交通手段の利用困難が認められた。運動機能及びADL評価に基く運動指導を行うとともに運動指導動画を製作してスマートフォン・PCで利用できるようにした。
➁関節機能に関する患者参加型オンラインイベントを開催。
③理学療法士向けのハイブリッド研修会を開催。
●サブテーマ3:神経認知障害・心理的支援
薬害HIV 感染者の生きがいについての横断的研究を、審査委員会承認後、リクルートを開始した。薬害HIV 感染症患者のメンタルヘルス研修会、ブロック拠点病院の心理職を対象とした“薬害HIV 感染症患者の心理臨床情報交換会をオンラインで開催した。
●サブテーマ4:生活実態・生活レベルでの健康維持
全国12 名の患者に聞き取り調査をおこない、必要な医療機関への相談ができていないことがわかり、支援した。12名で安否確認アプリを利用した日常生活の実態調査を継続し、不安・疑問の相談対応につなげることが出来た。ipad を用いた生活状況調査は専用アプリを用いて19名で継続的に実施し、医療者への相談・訪問診療・検査入院の勧奨などにつながった。医療行為を伴わない健康訪問相談は9 名に実施、各種支援や健康状態や生活環境の悪化予防に寄与した。生活居住環境実践モデル調査では、A食費を中心とした生活費の経年上昇が明らかとなった。知的障害のあるケースでは、親の死後在宅で生活できる支援の充実と施設の必要性が明らかとなった。ファイナンシャルプランについて3本の動画を作成してWEBで公開し、さらに2名にファイナンシャルプランナーの個別相談支援を提供した。
●サブテーマ5:QOL 調査
血友病患者の全国規模のウェブによるQOL調査は600件余りを回収し、解析に入っている。いっぽう、石原らの構造的インタビューの結果、25年前に比し、抑うつ傾向は改善傾向にあるも、半数は「正常」に至っておらず、生活満足度は上昇、身体症状は増加していた。
結論
【考察】HIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築にあたっては、血友病・HIV・肝炎に対する対応のみならず、生活習慣病や合併症併存症を含めた多病化に対する予防的対応と対応、運動機能障害の低下に由来する日常生活動作や社会参加の障害への支援と低下予防、心理的支援、生活を維持していくことへの支援、加齢に伴う問題解決を支援していくことが必要である。本研究班では、さまざまな直接的間接的サポートの提供の実証研究をしてきた。単に医療機関の外来受診による医療の提供に限局せず、アウトリーチにより問題点を発見し、緩やかに並走して支援しつつ問題解決能力の向上や生活習慣の改善を図る方法の重要性が明らかとなった。長期療養とは単に介護や福祉を受けることを確保するのではなく、疾患の性質上必要な先端的な医療も確保しつつ、介護や生活支援、心理的支援、生きがい支援、経済的支援、今後に対する不安への支援の視点が必要である。多方面からの支援の選択肢があっても、患者によって、それを利用する力やそれができる準備状況かどうかが異なるため、働きかけ方も単一ではなくさまざまな方法を行って支援に結びつけることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202220028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
79,040,000円
(2)補助金確定額
79,040,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 27,277,021円
人件費・謝金 20,342,318円
旅費 969,240円
その他 12,219,401円
間接経費 18,240,000円
合計 79,047,980円

備考

備考
自己資金7,980円を支出した。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
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