在留外国人に対するHIV検査や医療提供の体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202220023A
報告書区分
総括
研究課題名
在留外国人に対するHIV検査や医療提供の体制構築に資する研究
課題番号
22HB1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
北島 勉(杏林大学 総合政策学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沢田 貴志(神奈川県勤労者医療生活協同組合 港町診療所)
  • 宮首 弘子(杏林大学外国語学部)
  • Tran Thi Hue(チャン ティフェ)(神戸女子大学 文学部国際教養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
13,099,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我が国の在留外国人が増加傾向にある。2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行により在留外国人は若干減少したものの、2022年6月末時点で296万人が滞在していた。入国規制の撤廃に伴い、今後、留学生や技能実習生などを中心に再び増加に転じる可能性が高い。在留外国人の多くは20〜30代が多く、性的にも活動的な年齢層であるため、HIVを含む性感染症に感染する者が増加する可能性がある。そこで、本研究では、在留外国人のHIV検査受検促進や陽性者への医療関連サービスへのアクセスの改善をめざし、自治体やNPO等との連携モデルを構築することを目的とする。
研究方法
本研究では、(1)外国人を主な対象とした多言語対応HIV検査会を開催し、(2)HIV及び結核のための多言語通訳の一句性とその利用に関する検討、(3)沖縄県の在住者を対象とした保健行動やHIV検査へのアクセスに関する調査を実施した。
結果と考察
(1)東京都と沖縄県で10回開催した。SNSやアプリなどを活用し広報を行った。検査会の予約サイトには26カ国出身の113人が予約登録を行い、フィリピン、中国など在日人口の多い近隣諸国の出身者が上位を占めた。日本に在留する期間が長く安定性の高いビザを持つ外国人の受検が多い一方で、技能実習生など在留期間の短い外国人は、その人口に比して受検予約者が少ない傾向が認められた。遠隔での通訳は、検査を円滑に進める上で有用であったが、PrEPなど詳細な質問を受ける場面も多く、通訳者に対してもこれまでより詳細の研修が必要であることが示唆された。
(2)COVID-19流行のためオンライン開催とし、全国から66人の参加があった。研修参加者のHIVや結核に関する知識の向上や態度の改善がみられた。英語、中国語、ベトナム語、スペイン語、タイ語については、検査や診療の現場に即したシナリオをもとにしたロールプレイを行い、実践的な研修の機会を提供した。研修修了者で一定のレベルに達している者を保健所等でのHIV検査結果の告知の際に、遠隔通訳として派遣する事業を行った。同事業の開始が年度後半であったため、要請件数が2件であったが、いずれも高い評価を得ることができた。
(3)沖縄県の在留外国人473人と日本人277人から回答を得られた。回答者のうち、沖縄県でHIV検査を受検したのは35.5%、将来HIV検査受検に興味があると回答したのが50%であった。HIV検査受検を促進するために、在留外国人に対して引き続きHIV検査会の開催とその情報提供が必要となることが示唆された。
結論
 COVID-19の感染予防対策を優先した形での研究活動となったが、東京都と沖縄県での在留外国人を対象としたHIV検査会の開催、HIVと結核の診療の場面で活用できる医療通訳者を養成するための研修の開催、養成した医療通訳者を外国人受検者へのHIV検査の結果告知等への派遣事業、沖縄県在住者を対象とした保健行動やHIV検査の受検促進要因に関する調査を実施することができた。
在留外国人を対象としたHIV検査会の開催の経験から、SNSや外国人コミュニティを介して多言語での検査会の広報、予約サイトでの多言語での予約の受付、検査当日の遠隔通訳の提供により、HIV検査やPrEP相談へのアクセスを改善できる可能性があると考える。受検者の4割が初回受検であったことから、これまで受検できなかった層にもリーチしていると考えられるが、受検者の多くが2年以上日本に滞在しており、日本語でのコミュニケーションを一定程度とれる人が多かったことから、滞在期間が短く、日本語力も高くないが検査ニーズがある在留外国人に対してより効率的な広報を検討する必要がある。また、対面受検が難しい人に対してHIV検査を提供する方策についても検討が必要である。
医療通訳者の研修を今年度もオンラインにより実施した。オンライン開催には全国から参加できるというメリットがあり、研修の内容についても対面で実施する内容にほぼ準じたものを提供することができた。COVID-19に関する規制が解除された後は、研修の目的や対象者に応じて、研修の提供方法(オンライン/対面)を選択して実施していきたい。今年度は、研修修了者で一定のレベル以上の者を保健所や研究班のHIV検査会に遠隔通訳として派遣する事業を行った。実際に遠隔通訳をした回数は少なかったが、概ね高い評価を得ることができたことから、この事業を継続し、効果や課題を明らかにしていきたい。
沖縄県で4回実施したHIV検査会への参加者は想定していた数よりも大幅に少なかった。次年度は、沖縄県で実施した調査から見えてきた、HIV検査に関心がある層に対して効果的に検査に関する情報が伝わる方法を検討し、その有効性について検証したい。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202220023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,028,000円
(2)補助金確定額
17,028,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,323,159円
人件費・謝金 3,278,655円
旅費 1,723,875円
その他 6,243,453円
間接経費 3,929,000円
合計 16,498,142円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
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