HIV感染血友病患者の救急対応の課題解決のための研究

文献情報

文献番号
202220022A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染血友病患者の救急対応の課題解決のための研究
課題番号
22HB1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
日笠 聡(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 道生(宗像水光会総合病院 小児科)
  • 天野 景裕(東京医科大学 医学部 臨床検査医学分野)
  • 松本 剛史(三重大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
7,161,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 止血機能異常症の救急診療の各段階(救急搬送・救急医療施設での初時・止血治療製剤の供給・専門施設・患者団体との連携など)における問題点を抽出し、改善策を講じるための基礎資料を作成する。
研究方法
1) 止血機能異常症の救急診療の各段階における問題点の抽出
①救急搬送時
 「救急隊員は、患者の意思疎通ができない状態の場合、患者の所持品から、、病名・治療内容・通院施設などを示す患者カード等を確認するのか?」「確認した場合は、実際に搬送先を変更したり、記載されている施設に問い合わせる事が可能か」等ついて、各自治体の消防本部に対してアンケート調査を実施した。
②救急医療施設での初療時
 救急医療機関に止血機能異常症の患者が搬送された場合、治療薬があるか、専門医がいるか、診療経験があるか、どの程度まで治療可能か、止血治療が可能な紹介先があるか等について、アンケート調査を実施した。
③凝固因子製剤の供給時
 止血機能異常症の治療薬を、メーカーから迅速に供給する方法について調査した。
④血友病診療施設・患者団体との連携時
 救急医療機関から止血機能異常症の診療施設に対して患者の紹介・依頼があった場合、どのような協力が可能か、各種治療製剤の在庫はあるか等について調査した。
2)「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」の作成
 止血機能異常症の鑑別診断、止血治療法、重篤な合併症治療における注意点を網羅的に概説した「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」を作成し、主立った救急医療機関に配布した。
結果と考察
1)止血機能異常症の救急診療の各段階における問題点の抽出
①救急搬送時
 全国の消防本部713箇所に対しアンケートを送付し、時点で508件の回答が得られた。搬送患者の意思疎通ができない場合、患者カード等を所持しているかについて、41.6%は救急隊員のみで、28.6%は第3者の立ち会いがあれば確認するが、29.8%は確認しないと回答した。緊急時患者カード等を確認した場合、45.1%は基本的に当該施設に連絡すると回答したが、11.2%は当該施設には連絡せず、受け入れ可能な施設を探すと回答した。
②救急医療施設での初療時
 全国の救急科専門医指定施設551箇所に対しアンケートを送付し、102件の回答が得られた。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、血友病、フォンビレブランド病(VWD)、後天性血友病A(AHA)の搬送経験のある施設は、それぞれ59.8%、50.5%、38.6%、12.9%、30.7%であった。自施設で止血管理を実施した経験がある施設は、それぞれ44.6%、36.4%、31.0%、10.1%、27.3%であった。第VIII因子製剤、第IX因子製剤、活性化第VII因子製剤、von Willebrand因子含有製剤を在庫している施設はそれぞれ、42.3%、34.7%、34.0%、27.6%であった。
③凝固因子製剤の供給時
 凝固因子製剤メーカー10社に対し、全社から回答が得られた。夜間や休日に緊急で凝固因子製剤の投与が必要な場合、医療機関への製剤を供給する体制を整備しているのは4社の5薬剤のみであった。
④血友病診療施設・患者団体との連携時
 血友病診療連携委員会のメーリングリストに参加している施設に対しアンケート調査を行い、73施設から回答を得た。自施設に受診歴がある患者については、大部分の病院では夜間や休日でも対応が可能であった。しかし、受診歴がない患者については、夜間や休日の対応は困難な施設が大部分を占めた。
2)「救急領域における止血機能異常症の診療ガイド」の作成
 止血機能異常症のオーバービューと血友病、VWD、ITP、TTP、AHAの5つの疾患について、救急医療現場における診断と治療についてまとめた約50頁の診療ガイドを作成し、救急科専門医指定施設に配布した。
結論
 患者の意思疎通ができない状態であれば、救急隊独自では患者カード等を確認しない場合もある上、さらに、確認しても、治療薬や専門医の要る施設に搬送されるとは限らない。
 救急医療機関における止血機能異常症の診療経験、専門医、治療薬剤の在庫はいずれも不十分と考えられた。
 患者頻度、搬送頻度の少ない止血機能異常症の診療体制を良くするための対策としては、①救急医療機関における止血機能異常症診療の理解度を上げること、②救急医療機関と止血機能異常症診療の経験豊富な施設との連携を深めること、③止血機能異常症を診療する医療機関を増やすこと④止血治療に必要な薬剤の救急医療機関への緊急配送体制を確立することなどが考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202220022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,309,000円
(2)補助金確定額
9,144,000円
差引額 [(1)-(2)]
165,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 410,965円
人件費・謝金 997,427円
旅費 0円
その他 5,588,014円
間接経費 2,148,000円
合計 9,144,406円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-06-02
更新日
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