HIV感染血友病に対する悪性腫瘍スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202220020A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染血友病に対する悪性腫瘍スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立のための研究
課題番号
22HB1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 恒二(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 達也(群馬大学)
  • 永田 尚義(東京医科大学 消化器内視鏡学)
  • 下村 昭彦(国立国際医療研究センター病院 乳腺・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
27,687,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、『血友病HIV患者に発生する悪性腫瘍の早期発見、および、最適な治療法を提供すること』である。その目的を達成するためのデータを創出する。
研究方法
HIVおよび血友病に対する治療の進歩により、血友病HIV感染者の予後は、劇的に改善された。一方、患者の高齢化に伴う問題が表面化し、非エイズ関連悪性腫瘍 (NADM) も大きな課題となっている。研究班では、『NADM に対する最適な治療法の創出』に重点を置いた研究を実施するため、HIV治療、放射線治療、内視鏡治療、抗癌剤治療の専門家による研究班を形成する。以下の4項目について、分担者が研究を行い、全員が協力して課題解決に挑む。
分担1. 血友病HIV感染者の癌スクリーニングとがんの早期発見に関する研究
先行研究で確立した血友病HIV患者に対する癌スクリーニングを実施する。対象は、国立国際医療研究センター・エイズ治療・研究開発センターに通院する血友病HIV患者とする。1クールの検査で、甲状腺・前立腺を含んだ胸腹部造影CT、上部消化管内視鏡検査、便潜血、腫瘍マーカーの測定を行う。3年間に2クールの検査を行い、罹患率と年次推移を解析する。
分担2. 肝細胞癌に対する重粒子線治療に関する研究
重粒子線治療は、群馬大学重粒子線医学センターに設置された医用重粒子加速器および照射装置を用いて、1日1回、1回15.0Gy(RBE)、合計4回、総線量60.0Gy(RBE)にて炭素イオン線照射を行う。3年間での予定登録症例数は6例とする。また、当該研究で開発された新規非侵襲的がん治療法を標準化させるため、重粒子線治療専門施設へ、実施施設 (九州国際重粒子線がんセンターおよび大阪重粒子線センターの2協力施設を予定) を拡大する。
分担3. NADMに対する内視鏡治療に関する研究
HIV感染者では、胃癌や大腸がんなどの消化管に発生する悪性腫瘍の頻度が高い。本研究では、血友病HIV患者の内視鏡的処置 (生検、粘膜切除術切除、粘膜下層剥離術など) の安全性・有効性に関わるデータを構築し、さらに申請者らが構築してきた非血友病のHIV患者、非HIV患者とのデータを比較解析することで血友病患者の安全性・有効性の特徴を明らかにする。
分担4. NADM に対する化学療法と分子標的薬に関する研究
血友病HIV患者に発生する NADM に対する最適な治療選択を創出するため、血友病を含むHIV患者の NADM の治療成績と予後を包括的に解析する。3年度目までにデータ解析を完了し、血友病HIV患者で NADM が診断された場合の非侵襲的治療の実施に必要なデータを供出する。
結果と考察
初年度である令和4年度は、それぞれの分担研究者が、研究計画書を作成し、倫理審査等を実施した。以下、それぞれの分担研究毎の結果を示す。
分担1: 血友病HIV患者を対象にした癌スクリーニング検査を行っている。男性被験者に対しては、頸部骨盤を含む造影CT検査、上部消化管内視鏡検査、2日間連続便潜血検査、および、血清腫瘍マーカーによる検査を実施している。今年度、癌スクリーニングの手引書第1版を発行したが、新たに蓄積されるデータにより、改定する予定である。また、HIV持続感染との関連を調べるため、被験者のPBMC を分離し、ddPCR法により、潜伏ウイルス量を定量し、発癌や脳血管障害との関連を調査している。
分担2: 重粒子線治療は、医用重粒子加速器および照射装置を用いて、1日1回、1回15.0 Gy (RBE)、合計4回、総線量60.0 Gy (RBE)にて炭素イオン線照射を行った。門脈一次分枝、門脈本幹、消化管の少なくとも1つと主病変との距離が10mm以下の場合は、1回5.0 Gy (RBE)、合計12回、総線量60.0 Gy (RBE)の線量分割を用いた。さらに、国内広域ネットワーク整備のために、エイズ治療・研究開発センター救済医療室、大阪地区と九州地区の重粒子線治療施設、エイズ拠点病院の代表者らとWeb会議を通じて協議を行った。
分担3: 1施設のデータベースの構築が進んだが、今後2施設の血友病患者の内視鏡データベースも構築する。さらに、非血友病HIV患者、非HIV患者の内視鏡データベースも展開し、血友病患者の内視鏡処置に伴う偶発症率をコントロールと比較することで安全性の提唱を行う。
分担4: HIV患者における癌の発生状況を、ADMとNADMに分類し比較した。今後は非HIV患者における同様の癌との間で予後に違いがないかについて検討を加える予定である。
結論
初年度である令和4年度中に、全ての研究が開始されており、2年度目以降の成果が期待できる。また、前研究班から引き続き行ってきた研究に関しては、その成果を他の医療施設に還元すべく、診療均てん化の強化を開始した。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202220020Z