HIV陽性者に対する精神・心理的支援のための身体科主治医と精神科専門職の連携体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202220017A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV陽性者に対する精神・心理的支援のための身体科主治医と精神科専門職の連携体制構築に資する研究
課題番号
21HB1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
池田 学(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科情報統合医学 精神医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS先端医療開発センター)
  • 橋本 衛(近畿大学 医学部)
  • 仲倉 高広(京都ノートルダム女子大学 現代人間学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,717,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的はHIV陽性者の身体科主治医と精神科医療関係者相互の診療・相談体制の連携・構築を推進し、精神科医療の専門職(精神科医、臨床心理士/公認心理師、精神保健福祉士/社会福祉士、看護師/保健師など)がこの連携に積極的に関与できるようなマニュアルや研修教材を作成する。
本研究は4つの研究チームから構成される.
研究❶コメディカルを対象に、HIVに関する知識・理解を深める啓発研修を行うことで、HIVに対する抵抗感や不安感を軽減し、HIV陽性者の支援を行うことが可能になるかを明らかにする。
研究❷HIV陽性者の精神的心理的健康状態、精神科受診・カウンセリング利用のニーズと阻害要因を明らかにし、陽性者への援助を促進する方法を検討する。
研究❸ARTの進歩によりHIV患者の生命予後は延長し、今後HIV陽性高齢者の増加が予想される。本研究では、HIV陽性高齢者におけるHANDの実態を明らかにし、今後の高齢者対策に役立てる。
研究❹HIV医療と精神科医療の連携に関与する看護・福祉・心理職の技術共有とネットワークを構築する。
研究方法
研究❶2022年12月18日にコメディカルを対象とした研修会を実施し、研修会前後でアンケート調査を実施
研究❷大阪医療センター外来通院中の陽性者500名を対象に、精神症状、受診行動、相談行動などに関して無記名・自記式の調査
研究❸大阪医療センターに通院中の60歳以上のHIV陽性患者100名(予定人数)を対象に、心理検査、頭部MRI検査を実施し、認知機能低下・精神症状を認める患者の割合、認知機能の障害プロフィールを明らかにする
研究❹ブロック拠点病院勤務MSWを対象にHIV医療と精神科医療の連携事例に関与した看護・福祉・心理職の機能と困難さについて分析する
結果と考察
結果
研究❶研修会前は21名、研修会後は17名からアンケートの協力が得られた。専門資格は公認心理師、臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、作業療法士等多職種の参加が得られた。研修会後にHIVへの不安や抵抗感が軽減したと70.6%が回答し、知識を得たことで対応ができると94.1%が回答した。
研究❷対象者245名(49%)中の精神科未受診者のうち、自他が受診の必要性を認識している25名(14.3%)における未受診の理由は、「精神科医にHIV感染症についての偏見があるのではないかと思う」などであった。
研究❸HANDに関する文献レビューで得られた知見を基に「高齢HIV陽性患者の認知機能障害の実態調査」の研究計画書を作成した。現在調査研究開始に向けて、大阪医療センタースタッフと実施手順について調整中である。
研究❹同意が得られたブロック拠点病院勤務MSWとHIV医療から精神科医療へ連携する際のチェック票を作成した。
考察
研究❶昨年度の精神科医の調査結果と同様にコメディカルにおいても、研修会で知識を得ることでHIV陽性者への対応の不安や抵抗感が低下することが示唆された。研修会で得たものは、医師の場合は感染対策や薬物治療等であったが、コメディカルは心理面や直接的な支援方法についてという回答が多かった。
研究❷精神科受診の阻害要因として、精神科医による偏見に対する恐れの存在が推察された。研修等によって精神科医の受け入れを促進し、HIV診療施設との連携を深める必要がある。
研究❸倫理委員会の承認後、速やかに調査開始予定である。
研究❹精神科医療機関との連携を行うMSWがHIV医療から精神科医療へ連携する際のチェック票を作成し、今後、MSWを対象とした模擬事例によるロールプレイイングと、連携のための技術習得・研修を行い、研修前後のMSWの意識調査を実施する予定である。
結論
HIV陽性者の多様な精神疾患や認知機能障害に対して、医師だけではなく多職種がよりHIVの理解を深めるためには知識の普及は効果的である。また、HIV陽性者が精神科による偏見や恐れがあることから、より安心して精神科を受診できるようにするためにも連携に携わる心理士、ソーシャルワーカー、看護師のための教育資材の開発が求められる。

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202220017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,731,000円
(2)補助金確定額
8,731,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,767,890円
人件費・謝金 4,173,775円
旅費 139,890円
その他 635,445円
間接経費 2,014,000円
合計 8,731,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
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