オリンピック・パラリンピック・万博等の外国人の流入を伴うイベントの開催に伴う性感染症のまん延を防ぐための介入方法の確立と国際協力に関する研究

文献情報

文献番号
202220016A
報告書区分
総括
研究課題名
オリンピック・パラリンピック・万博等の外国人の流入を伴うイベントの開催に伴う性感染症のまん延を防ぐための介入方法の確立と国際協力に関する研究
課題番号
21HB1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田沼 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(聖路加国際大学公衆衛生大学院)
  • 杉浦 康夫(国立国際医療研究センター 国際診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,978,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
COVID-19流行により観光目的で訪日する外国人の数が一時的に減っているとはいえ、留学・就業目的で長期滞在している外国人は増えており、セクシャル・ヘルスの分野においても、多言語による対応力を高めておくことは必要である。また、性感染症の予防啓発事業には複数の学問領域にわたる多角的アプローチが必要であり、国際的イベントを人的交流促進かつ社会の関心を惹起する好機ととらえ、性感染症対策を強化することは有効である。Global AIDS Monitoringは、UNAIDSが毎年実施する国別調査で、エイズ対策の進達状況を数十の疫学指標と政策に関する質問で構成される。COVID-19流行により各国のエイズ対策が停滞している今、国際的な指標でエイズ対策の進達状況を評価することは重要である。
本研究では、これらの背景をふまえ、国内外の領域横断的な性感染症対策の比較、訪日外国人に対するHIV・性感染症対策の検討、UNAIDSの指標に基づくエイズ対策に関する政策評価、の3つを目的とする。
研究方法
本研究では1)領域横断的な性感染症対策に関する研究、2)訪日外国人へのセクシャル・ヘルス関連情報の提供に関する研究、3)エイズ対策に関する政策評価に関する研究、の3つの課題に取り組む。
結果と考察
1)領域横断的な性感染症対策に関する研究
セクシャル・ヘルスケアに積極的に取り組む医療機関と支援団体の情報共有ネットワークを構築する目的で、日本エイズ学会と国際エイズケア提供者協会(IAPAC)と合同でFast Track Cities Workshop Japanをオンラインで開催し、国内外から様々な分野の演者らと情報共有・議論を行い、日本のHIV政策の論点を整理した。
2)訪日外国人へのセクシャル・ヘルス関連情報の提供のあり方についての研究
研究班が開発しているセクシャル・ヘルス関連の情報発信サイトTokyo Sexual Health (http://www.tsh.ncgm.go.jp/en/index.html) の多言語化をはかり、視聴者の属性などウェブサイトのアクセス情報を解析した。日本語・英語に続いて最も閲覧された言語サイトはベトナム語で、中国語(簡体字)が続いた。最も閲覧数の多かったページは「経口妊娠中絶薬」で、「セクシャリティとは?」であった。
3)HIV関連政策立案に資する国際協力とエビデンス構築に関する研究
国連合同エイズ計画の世界的HIV疫学調査であるGlobal AIDS Monitoringの疫学指標を精査し日本からの報告のあり方について検討を行った。HIV罹患率やケアカスケード達成率(いわゆる95-95-95指標)に関する疫学推計については、国連合同エイズ計画が開発したSpectrum®というソフトウエアを用いて行った。推定生存HIV感染者数は、2021年末で29,416人、推定HIV感染診断後人数は28,903人であった。その他の疫学指標については、日本が優先して報告すべき14項目を選出した。
結論
課題1ではFast Track Citiesのネットワークを活用することで、海外のエイズ対策について効率よく情報収集することができた。日本ではCOVID-19流行後から保健所等でのHIV検査件数が激減しており、海外で広く普及している郵送検査の積極的活用を急ぐ必要がある。日本の自治体がFast Track Cities に加盟すると、そのような新しい施策の実装が進むものと考えられる。
課題2では、幅広いセクシャル・ヘルスに関する話題が関心をひくことや、多言語、特にベトナム語ページのニーズが高いことが分かった。社会全体で性の健康に関する意識を高め、セクシャルマイノリティへの理解やHIV感染者に対する差別をなくすためには、幅広いテーマを扱い、幅広い層の視聴者を獲得していくことが重要と考えられる。
課題3では、Global AIDS Monitoringの95-95-95の推計に関する感度分析では、ART実施者数の推計や、国内で感染した者と海外で感染した者についての年齢別分布に関する推計の2点が今後の課題と考えられた。COVID-19流行により各国のエイズ対策が停滞している今、エイズ対策の進達・実装状況を評価し、改善のための提言を行うことは極めて重要である。今後も、国際的な指標による政策評価と提言作成を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202220016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,371,000円
(2)補助金確定額
10,371,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 253,019円
人件費・謝金 1,171,767円
旅費 1,513,548円
その他 5,046,852円
間接経費 2,393,000円
合計 10,378,186円

備考

備考
2023年2月の国際学会登録料の支払いにおいてクレジットカードによる立替払いをせざるを得ず、また研究費が不足したため、不足分を研究者の自己資金とした。

公開日・更新日

公開日
2024-05-14
更新日
-