拠点病院集中型のHIV診療から、地域分散型のHIV患者の医療・介護体制の構築

文献情報

文献番号
202220013A
報告書区分
総括
研究課題名
拠点病院集中型のHIV診療から、地域分散型のHIV患者の医療・介護体制の構築
課題番号
21HB1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
猪狩 英俊(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 坂本 洋右(千葉大学 医学部)
  • 鈴木 貴明(千葉大学医学部附属病院薬剤部)
  • 塚田 弘樹(新潟市民病院)
  • 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院 感染制御部)
  • 鈴木 明子(御子神 明子)(城西国際大学 看護学部)
  • 矢幅 美鈴(千葉大学医学部付属病院 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,972,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症患者の予後は改善し、長期生存が可能になった。今後は、介護看取りなどの終末期医療も視野にいれた長期療養体制の整備が求められる。エイズ予防指針、後天性免疫不全症候群に関する長期療養体制構築事業の手引きを元に、長期療養体制について検討を行った。
第1の目的は、長期療養の課題抽出を行い、行政と協働する。モデルケースを設定し、効果的な制度運営に結びつけていく。
第2の目的は、HIV感染症患者の動向を自治体別・年齢別に分析し、長期療養体制の医療基盤を評価する資料とする。
第3の目的は、千葉県HIV拠点病院会議の職種別活動を通して、長期療養に寄与する診療体制、人材育成、地域連携を進める。
研究方法
1 HIV感染症患者の長期療養体制の構築
2 HIV感染症患者の動向分析
3 HIV感染症患者の歯科診療状況調査
4 HIV感染症患者が地域の保険薬局を選択した時に対応できるシステム構築
5 HIV感染症患者の長期療養に必要な地域看護力の向上
6 地域のエイズ拠点病院での診療体制の構築
7 地域病院へのHIV感染症患者診療の連携
8 HIV感染症の透析医療に関する研究
9 HIV感染症患者の長期療養における医療ソーシャルワーカーの役割についての研究
この研究は1と重複するもので共同して行うものである。
結果と考察
1 HIV感染症患者の長期療養体制の構築(5,6,7,8,9と重複)
長期療養体制構築会議の結果、①自立支援医療の課題、②医療従事者への啓発活動、③利用可能な医療リソースの可視化、④HIV感染症患者の意志決定支援、を重点課題とした。
① 自立支援医療の課題 自立支援医療の柔軟運用候補を3例選定し、適応を検討した。地域の医療機関、特に診療所が自立支援(免疫機能障害)の指定取得が課題になった。
② 医療従事者への啓発活動 訪問看護ステーション等の介護・看護関連のサービス事業者を対象に、意見交換会を開催した。また、千葉県庁健康福祉部を通して、千葉県地域包括支援センターにて情報提供を行った。HIV感染症患者の受入に前向きな施設や医療従事者が増えている。
③ 利用可能な医療資源の可視化 千葉県と千葉県透析医会とともに、千葉県HIV透析ネットワークを設置した。透析医療を要する患者の受入と、啓発活動を行う。同様に、千葉県HIV福祉ネットワークの設置の準備作業を進めている。
感染制御部対策向上加算を算定する医療機関による受入が次の課題になる。
④ HIV感染症患者の意志決定支援
 一般に普及しているACP(アドバンスケアプランイング)の導入を検討した。HIV感染症患者の場合、告知の問題が障壁となっている。
2  HIV感染症患者の動向分析
千葉県のHIV感染症患者(2022)は1522人で増加傾向にあった。65歳以上は全体の14.7%であり、徐々に増加している。東京隣接自治体では、半数以上の患者が都内医療機関を受診している。長期療養体制を視野に入れ、受診行動の見直しを勧奨したり、地域での受入体制を見直す必要がある。
千葉市のHIV感染症患者は、高齢化の進行は顕著であるが、地域完結型の受診をしており、長期療養体制を構築しやすいことがわかった。
3  HIV感染症患者の歯科診療状況調査
コロナ対応で定着したフェイスシールドの使い方について分析し、着用の有効性を確認した。
4  HIV感染症患者が地域の保険薬局を選択した時に対応できるシステム構築
地域の保険薬局の薬剤師に対するHIV感染症に関するセミナーを開催した。
5  HIV感染症患者の長期療養に必要な地域看護力の向上
HIV感染症患者の受入困難の理由として、感染対策の知識不足、医師の不在、拠点病院との関係、受け入れの経験がないことが挙げられた。HIV感染者(当事者)による講演会を開催しており、スティグマを軽減するために極めて有効であった。
6 地域のエイズ拠点病院での診療体制の構築
慈恵柏病院では、情報共有、地域への情報発信と診療支援を推進するためにキーとなる看護師・および診療チームを確立した。千葉県も協議の場をもった。
 長期療養体制の研究は愛媛県でも進められている。愛媛県の研究班(研究代表者 高田清式先生)とは2回のオンライン会議を開催した。共通の課題として、高齢HIV感染症患者を他の地域から受入する体制の構築があげられた。その一方で、それぞれの地域での医療体制の独自色があることが分かった。
結論
長期療養体制の構築には、①自立支援医療の課題(制度・医療経済)、②医療従事者への啓発活動(教育)、③利用可能な医療リソースの可視化(広報)へ絞り込み、④HIV感染症患者の意志決定を支援することを重点項目とし取り組んでいくことが重要である。
特に②と③は、行政(千葉県)や関連の医療団体との連携により、一定の成果に繋がってきた。

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202220013Z