文献情報
文献番号
202220011A
報告書区分
総括
研究課題名
地域におけるMSMのHIV感染・薬物使用予防策と支援策の研究
課題番号
21HB1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
樽井 正義(特定非営利活動法人ぷれいす東京 研究・研修部門)
研究分担者(所属機関)
- 生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究・研修部門)
- 大木 幸子(杏林大学保健学部)
- 野坂 祐子(大阪大学大学院 人間科学研究科)
- 塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,055,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
MSMのHIV感染・薬物使用の予防と支援を目的に5つの研究を行う。
(1) MSMを対象としたメンタルヘルスと性行動に関するweb調査:ウェブによる質問紙調査により、現状把握の基礎データを得る。
(2) ゲイコミュニティにおける性行動および予防啓発に関する動向の把握と効果評価:全国6コミュニティセンターによる啓発活動の効果評価を質問紙調査で行う。
(3) MSMを対象とした健康のためのコミュニケーション支援ツールの開発と評価:リスク行動を避けるコミュニケーションスキルの向上をはかる自習ツールを開発する。
(4) 薬物使用の問題を抱えるHIV陽性者への支援のための精神保健福祉センターとのネットワークモデルの検討:センター、HIV診療機関、陽性者支援組織の連携モデルを策定する。
(5) HIV陽性者と薬物使用者への支援策と感染・薬物使用予防策の検討:当事者に有用な予防と支援の情報を整理し、提供の方策を検討する。
(1) MSMを対象としたメンタルヘルスと性行動に関するweb調査:ウェブによる質問紙調査により、現状把握の基礎データを得る。
(2) ゲイコミュニティにおける性行動および予防啓発に関する動向の把握と効果評価:全国6コミュニティセンターによる啓発活動の効果評価を質問紙調査で行う。
(3) MSMを対象とした健康のためのコミュニケーション支援ツールの開発と評価:リスク行動を避けるコミュニケーションスキルの向上をはかる自習ツールを開発する。
(4) 薬物使用の問題を抱えるHIV陽性者への支援のための精神保健福祉センターとのネットワークモデルの検討:センター、HIV診療機関、陽性者支援組織の連携モデルを策定する。
(5) HIV陽性者と薬物使用者への支援策と感染・薬物使用予防策の検討:当事者に有用な予防と支援の情報を整理し、提供の方策を検討する。
研究方法
(1) 出会い系アプリ等を通じて参加者を募集してウェブによる自己回答式アンケートを実施し、6,071人からの回答をデータ解析の対象とした。
(2) アンケートモニター登録の成人男性から2段層化抽出した94,011人にスクリーニング調査を行い、MSM5,459人(5.8%)に本調査を行った。
(3) 4つの自己学習動画教材を開発し、これを用いてオンライン講座とコミュニティ支援者への面接調査を実施し、効果と課題を検討した。
(4) 精神福祉保健センターの相談と回復プログラムの利用者に面接調査を行い、昨年度実施した相談担当職員への面接調査の結果との対応を検討した。
(5) 予防と支援の情報を提供する対象集団を、その必要性と可能性を考慮して特定し、必要とされる情報と提供する方法を検討した。
(2) アンケートモニター登録の成人男性から2段層化抽出した94,011人にスクリーニング調査を行い、MSM5,459人(5.8%)に本調査を行った。
(3) 4つの自己学習動画教材を開発し、これを用いてオンライン講座とコミュニティ支援者への面接調査を実施し、効果と課題を検討した。
(4) 精神福祉保健センターの相談と回復プログラムの利用者に面接調査を行い、昨年度実施した相談担当職員への面接調査の結果との対応を検討した。
(5) 予防と支援の情報を提供する対象集団を、その必要性と可能性を考慮して特定し、必要とされる情報と提供する方法を検討した。
結果と考察
(1) 出会い系アプリ等利用者調査では、2016年の前回調査と比べると、U=Uを知っている人は43.0%から72.3%、PrEPを知っている人は10.6%から72.2%に増え、HIVの新知識の普及が示された。「現在飲んでいる」のはHIV陽性者以外の回答者の7.0%、過去にも飲んだことのない人の61.6% は使いたいと回答した。またコンドームの常用率は20.5%と低く、背景要因の分析が求められる。
(2) モニター登録者調査では、HIV抗体検査の受検経験は39,7%。昨年度のコミュニティセンター利用者中心の調査では68.7%で、コミュニティセンターによる予防啓発活動の効果が示唆された。今回調査でセンターの利用率は全体で18.1%だった。また、コンドーム常用率は約30%で、昨年度の調査の約20%より高かったが、昨年度の回答者の6割は20~30代であったが今年度は4割等であることが要因と考えられる。
(3) コミュニケーションスキルの向上をはかる4つの動画教材、①コミュニケーションのタイプ、②感情の理解、③境界線、④アサーションおよび解説の冊子を作成し、ウェブサイトで公開した。個人による自己学習を目的に開発されたが、加えてワークショップ等グループでの活用の可能性が示唆された。
(4) 精神保健福祉センターの相談と回復プログラムを利用するHIV陽性のMSMへの面接調査により、利用の経緯、利用継続の理由、個人情報(HIV陽性、ゲイ)の開示、課題について調査した。センターでは個別相談(伴走支援)が受けられる優位性、ゲイのネットワーク外であることの利点(知り合いに会わない)と欠点(性の話ができない)等が確認された。
(5) 予防と支援の情報が特に不足しているのは薬物使用者であることから、「声の架け橋プロジェクト(Voice Bridges Project)」の協力を受けて薬物事犯保護観察対象者にパンフレットを配布することし、感染予防(HIV、HBV、HCV)とNGOおよび行政の相談窓口を内容とするパンフレットを作成した。
(2) モニター登録者調査では、HIV抗体検査の受検経験は39,7%。昨年度のコミュニティセンター利用者中心の調査では68.7%で、コミュニティセンターによる予防啓発活動の効果が示唆された。今回調査でセンターの利用率は全体で18.1%だった。また、コンドーム常用率は約30%で、昨年度の調査の約20%より高かったが、昨年度の回答者の6割は20~30代であったが今年度は4割等であることが要因と考えられる。
(3) コミュニケーションスキルの向上をはかる4つの動画教材、①コミュニケーションのタイプ、②感情の理解、③境界線、④アサーションおよび解説の冊子を作成し、ウェブサイトで公開した。個人による自己学習を目的に開発されたが、加えてワークショップ等グループでの活用の可能性が示唆された。
(4) 精神保健福祉センターの相談と回復プログラムを利用するHIV陽性のMSMへの面接調査により、利用の経緯、利用継続の理由、個人情報(HIV陽性、ゲイ)の開示、課題について調査した。センターでは個別相談(伴走支援)が受けられる優位性、ゲイのネットワーク外であることの利点(知り合いに会わない)と欠点(性の話ができない)等が確認された。
(5) 予防と支援の情報が特に不足しているのは薬物使用者であることから、「声の架け橋プロジェクト(Voice Bridges Project)」の協力を受けて薬物事犯保護観察対象者にパンフレットを配布することし、感染予防(HIV、HBV、HCV)とNGOおよび行政の相談窓口を内容とするパンフレットを作成した。
結論
(1) 出会い系アプリ等利用者調査により、MSMのメンタルヘルス、性行動等を調査し、幼少期の逆境体験、ソーシャルサポート等との関連を検討する資料を得た。
(2) 昨年のコミュニティセンター起点の調査に次いで、本年はモニター登録成人男性から2段層化抽出したMSM調査を行い、センターによる啓発活動効果測定の資料とした。
(3) コミュニケーションスキルの自己学習のための動画教材と解説の冊子を作成し、グループでの使用のための支援者向け解説を準備した。
(4) 精神保健福祉センターにおける相談・回復プログラム利用者への面接調査を行い、昨年度の相談担当者への面接調査の結果との対応から、センターの役割を検討した。
(5) 感染予防と支援窓口の情報を薬物事犯保護観察対象者に提供する方策を検討し、提供する情報を整理したパンフレットを作成した。
(2) 昨年のコミュニティセンター起点の調査に次いで、本年はモニター登録成人男性から2段層化抽出したMSM調査を行い、センターによる啓発活動効果測定の資料とした。
(3) コミュニケーションスキルの自己学習のための動画教材と解説の冊子を作成し、グループでの使用のための支援者向け解説を準備した。
(4) 精神保健福祉センターにおける相談・回復プログラム利用者への面接調査を行い、昨年度の相談担当者への面接調査の結果との対応から、センターの役割を検討した。
(5) 感染予防と支援窓口の情報を薬物事犯保護観察対象者に提供する方策を検討し、提供する情報を整理したパンフレットを作成した。
公開日・更新日
公開日
2024-04-01
更新日
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