膝痛患者に対する3.0テスラMRIを用いての高精度画像診断技術の確立と膝痛の増悪因子の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200921028A
報告書区分
総括
研究課題名
膝痛患者に対する3.0テスラMRIを用いての高精度画像診断技術の確立と膝痛の増悪因子の解明に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-長寿・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
越智 光夫(広島大学 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 黒坂 昌弘(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 内尾 祐司(島根大学 医学部)
  • 中田 研(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 佐粧 孝久(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 出家 正隆(広島大学 大学院保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中高年の膝痛を有する患者の画像評価を行い、その経過を調査し、臨床・環境との関連を検討することで、変形性膝関節症の原因となる軟骨損傷およびその予後を把握し、適切な指導や治療法の開発に結実させることを目標とし、本人の運動機能を保全・保持することにより、要介護者を減少させることである。
研究方法
膝痛を有する、または変形性膝関節症患者と診断され、1)膝痛を有する20歳以上80歳未満の外来および入院患者、かつ2)本研究の趣旨に同意し、以下の検査およびアンケートに協力していただける患者を対象とした。対象患者に対し、1)インフォームドコンセントの下、膝痛を有する患者を登録し、その症状、生活様式を記録する。2)レントゲン像を立位伸展位正面、膝関節20度屈曲位正面での関節裂隙を計測する。3)臨床症状、生活様式についての項目は、日本整形外科変形性関節症委員会で使用している骨関節疾患予防検診調査票と診察シート、WORMS法を用いた。これら患者の臨床症状、生活様式を調査し2つのカテゴリーにわかれて進められた。1)初期および中等度の変形性膝関節症に対しては、高解析度を有する3.0T-MRを用いて、通常撮影に加え、荷重位での撮影、造影剤を用いての撮影を行い、経時的に経過を追う。2)高度変形性膝関節症患者に人工膝関節置換術を施行し採取した組織と同一部位のMR像を比較検討する。
結果と考察
軽度および中等度変形性膝関節症に施行した3.0T-MRIに荷重・造影剤を負荷し、初年度、2年目の変化を比較することで、より詳細な軟骨損傷・変性を捉えることができた。
高度変形性関節症に対して、術前MR像と組織像を比較したところ、T2値の延長する部位は、病理組織学的に軟骨変性を示唆する部位と一致していた。
これらより、3.0T-MRIを用いることで、将来的に、軟骨変性の進行の早い症例を初期に捉えられることができ、的確な保存治療や生活様式の指導を提供することできると考えた。
結論
3.0T-MR像は、造影・荷重位撮影法により従来捉えられなかった、より詳細な軟骨損傷を描出できた。また、人工関節置換術時に採取した病理組織像をMR像と対比することで、MR像で示される軟骨損傷の組織学的な変性を推察できた。これらより、早期に変形性膝関節症となる膝痛の増悪因子の特定でき、軟骨損傷の進行を抑え、膝痛による身体活動の低下を防ぐことが可能となることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-02
更新日
-