文献情報
文献番号
202220009A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ予防指針に基づく対策の評価と推進のための研究
課題番号
21HB1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 四本 美保子(根岸 美保子)(東京医科大学 臨床検査医学分野)
- 西浦 博(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科)
- 渡部 健二(大阪大学大学院医学系研究科)
- 桑原 健(大阪医科薬科大学 薬学部 臨床薬学教育研究センター)
- 大北 全俊(東北大学大学院医学系研究科)
- 江口 有一郎(医療法人ロコメディカル ロコメディカル総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
13,746,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成11年に策定された「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(以下、エイズ予防指針という。)」は、エイズの発生動向の変化等を踏まえ、3度の見直しが行われ、直近の改正は平成30年1月から施行され、改正後のエイズ予防指針に基づき、国と地方の役割分担の下、人権を尊重しつつ、普及啓発及び教育、検査・相談体制の充実、医療の提供などの施策に取り組まれてきた。本研究班は平成30年改定の現エイズ予防指針に基づき、陽性者を取り巻く課題等に対する各種施策の効果等を経年的に評価し、一元的に進捗状況を把握し、課題抽出を行い、次回の改定に資することが主な目的である。
研究方法
次の8班で構成した。1.「エイズ予防指針の施策実施の評価と課題抽出に関する研究(研究分担者:四本美保子)」内に各分野専門家で構成される委員会を設け、課題一覧の作成、課題一覧とこれまでの事業及び研究、各種ガイドラインとの関連性の整理、課題の抽出等の作業を段階的に進めた。各種課題の解決策の検討を行った。海外で効果が明らかにされているHIV感染予防のPrEPについても検討を行った。2. HIV陽性者のケアカスケードの推計と将来予測は重要であり、「日本におけるケアカスケードの推定に関する疫学研究(西浦博)」で実施した。3.最近、効果に優れたARTによって「U=U」という臨床研究に裏打ちされた新しい考え方が出現し、HIV感染症のイメージを大きく変えつつあり、倫理的側面からの研究を含め「HIV領域の倫理的課題に関する研究(大北全俊)を実施した。4.治療によって慢性疾患となり、他への感染も実質的に無視出来る実状を、国民の大半が正しく理解していないことが前回の世論調査で示され、有効な啓発方法の検討を「一般若年層を対象とした有効な啓発方法の開発研究(江口有一郞)」で行い、有効であれば予防指針に提示する。5.医療現場でも未だにHIVに対する診療忌避が散見され、医学生や薬学生への卒前・卒後のHIV教育プログラムの必要性を「医学教育に効果的なHIV教育プログラムの開発研究(渡部健二)」あるいは6.「薬剤師のHIV感染症専門薬剤師育成プログラムの開発研究(桒原健)」で検討した。7.診療所の一般診療医の意識についてのアンケート調査や、8.学校での授業を補完するeラーニングサイトの開発も行った。以上の研究成果から、最終的にエイズ施策推進に資する事とする。
結果と考察
1 U=Uや「PrEPを含むコンビネーション予防」、治療の進歩による疾患概念の変化に応じた新医療体制構築などを改正指針に反映すべきと考えた。 2 令和2、3年の年間新規感染者数は954人(95%信頼区間:421〜1487)と推定された。全感染者のうち86.6% (AIDS未発症者に限れば81.7%)が診断されたと推定された。ケアカスケードの最初の90が未達成と推定されたが、一因として新型コロナウイルス感染症の流行による診断率低下が推定されるが、日本の新規感染者数の減少傾向は継続していると考えられた。 3 一般医師のHIV診療の意識調査(WEB)では約200例から回答を得、手引き作成で留意するべき点が明らかとなった。enablerという概念の明確化を行った。 4 事前調査回答者の12.5%を占めるMSMが日頃利用するSNSなどはLINE、YouTube、Twitterの順で多かった。 5 本研究につき倫理審査委員会の承認を得た。「死に至る病気である」などエイズに対する疾患イメージの保有率は一般人に近く、授業により大幅に是正された。 6 調査を実施し60施設から回答を得た(回収率60.0%)。教育プログラム使用希望は88.3%。教育用ツールが提供されれば90%以上の施設が使用を希望した。 7 回答は290件であった。治療効果について、「ある程度理解している」と「あまり理解していない」が同数であった。回答者の約8割が、「日常診療で、HIV診療の経験が無い(直近3年間)」との結果で、全体の約3割が、今後のHIVの診療対応を「可能」あるいは「検討する」と回答した。 8 10代の若者を対象に、HIV検査普及週間に際し、FM放送を用いHIV/エイズに関するメッセージを、若者に人気の番組前後の時間帯に放送した。eラーニングの内容、伝え方について検討を行い、システム改修につき検討した。
結論
各研究で進捗状況に幅があるが、全体としてほぼ計画通り研究を進める事が出来た。 最終年度は残った課題につき検討を進め、研究成果をまとめ、改正に資する資料作成と提案を行いたい。
公開日・更新日
公開日
2024-04-01
更新日
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