HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究

文献情報

文献番号
202220007A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究
課題番号
20HB1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
水島 大輔(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
  • 照屋 勝治(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,963,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①先行研究(H29-エイズ-一般-009)で実施したHIV感染症の曝露前予防(PrEP: pre-exposure prophylaxis)の実証研究を継続し、我が国の男性間性交渉者(MSM:men who have sex with men)におけるPrEPの安全性とPrEP導入による性感染症の罹患率への影響を評価するとともに、近年急増しているジェネリック薬の自己輸入によるPrEP利用者の実態把握を行う。②日本におけるPrEPの指針を策定し、現在、公知申請中の抗HIV薬ツルバダがPrEP用に承認された際には、ガイドラインへと発展させる。③PrEPに関する情報発信のプラットフォーム整備を目的に、日本のMSMコミュニティを対象としたPrEPに関する認知度・課題等に関する意識調査を実施する。④日本における非職業従事者の曝露後予防内服(nPEP:non occupational post-exposure prophylaxis)の提供体制に関して現状把握を行う。
研究方法
①当院に設立されたMSMコホート研究(Sexual health(SH)外来)で2018年より実施している、一日一回一錠内服のツルバダPrEPによる単群介入試験を継続する。約120症例を2年間以上フォローしPrEP使用者におけるHIV罹患率およびSTI罹患率をPrEP介入前後で比較することを目的とする。また、ジェネリック薬の自己輸入による自己判断でのPrEP利用者の実態把握に関して、SH外来に加えて、PrEPのフォロー検査を提供しているSTIクリニックと提携し、東京近郊でのPrEP利用状況の実態把握に努めPrEP提供体制を構築する。
②日本におけるPrEPの指針策定に関して、日本エイズ学会の協力のもと、医療従事者、コミュニティと共同し、日本の実情を踏まえたPrEP指針の策定を目指す。
③先行研究を参考に、MSMを対象とした無記名自記式アンケート調査を行う。アンケート調査は、MSM向けのGPS機能付き出会い系アプリの利用者を対象として実施する。
④nPEPの実態把握に関して、都内のSTIクリニック等を中心に提供体制の取り組みを評価する。
結果と考察
①PrEP開始2年後、受診継続率、内服順守率およびHIV感染予防効果は極めて高かった。一方、コンドームの平均使用率はPrEP開始時点から低下傾向で、他の性感染症の罹患率は増加傾向を認めており、safer sexの情報提供と性感染症検査体制の拡充が重要と考えられた。個人輸入のPrEP userは2022年10月時点で協力施設であるプライベートヘルスクリニック(PHC)と併せて約3400名に達しており、情報提供体制の構築を進める必要がある。
②「日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き」として完成させた。今後、世界のPrEPの進展と国内の状況を適合したガイドラインに発展させるべきである。③2021年2月に実施したMSMのPrEPに関する実態調査を取りまとめた。MSM向け出会い系アプリに広告出稿し、7,850件の有効回答を得た。PrEP使用経験者は全体の8.5%であった。利用者は、東京を中心とした関東ブロック在住で70.2%を占めたが、全国に存在していた。その8割がweb経由で薬剤を入手していた。そのうち、定期/不定期に医師の診察を受けているのが49.7%であった。全回答のうち、月に支出可能な自己負担額は5千円までという回答が55.6%を占めた。今後の使用意向は、認可されたら使用を希望が68.5%であった。PrEPを使用した場合、コンドームを使わなくなるという回答者も46.5%存在した。
報告書とその概要を作成し、webから閲覧できるようにした。また、分担研究②の利用指針をもとにPrEP user向けの利用者ガイドを策定し公開した。PrEPの利用経験者が同じサンプリング方法で、2018年10月:2.2%であったのが、2021年3月には8.5%と急増していた。Web購入者が8割を占め、その背景には薬剤のコストが大きく影響している。今後は検査や見守りを含めたクリニックベースの見守り体制の構築が急務だと思われる。
④PrEPのジェネリック薬を国内で初めて提供開始したパーソナルヘルスクリニック(PHC)においては2020年の87件から2022年には454件に着実に増加しており、nPEP処方を受けたMSMのほぼ全例がPrEPへと移行していた。nPEPとPrEPはHIV予防の相補的関係にあり、STIクリニック等はnPEPの提供施設として重要となることが示唆された。
結論
①④日本のPrEPは極めて有効にHIVを予防した。PrEPおよびnPEP利用者は首都圏近郊で民間クリニックを中心に急増している。②③には正しい情報提供の普及が必要である。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202220007B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究
課題番号
20HB1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
水島 大輔(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
  • 照屋 勝治(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①先行研究(H29-エイズ-一般-009)で実施したHIV感染症の曝露前予防(PrEP: pre-exposure prophylaxis)の実証研究を継続し、我が国の男性間性交渉者(MSM:men who have sex with men)におけるPrEPの安全性とPrEP導入による性感染症の罹患率への影響を評価するとともに、近年急増しているジェネリック薬の自己輸入によるPrEP利用者の実態把握を行う。②日本におけるPrEPの指針を策定し、現在、公知申請中の抗HIV薬ツルバダがPrEP用に承認された際には、ガイドラインへと発展させる。③PrEPに関する情報発信のプラットフォーム整備を目的に、日本のMSMコミュニティを対象としたPrEPに関する認知度・課題等に関する意識調査を実施する。④日本における非職業従事者の曝露後予防内服(nPEP:non occupational post-exposure prophylaxis)の提供体制に関して現状把握を行う。
研究方法
①当院に設立されたMSMコホート研究(Sexual health(SH)外来)で2018年より実施している、一日一回一錠内服のツルバダPrEPによる単群介入試験を継続する。約120症例を2年間以上フォローしPrEP利用者におけるHIV罹患率およびSTI罹患率をPrEP介入前後で比較することを目的とする。また、ジェネリック薬の自己輸入による自己判断でのPrEP利用者の実態把握に関して、SH外来に加えて、PrEPのフォロー検査を提供しているSTIクリニックと提携し、東京近郊でのPrEP使用状況の実態把握に努めPrEP提供体制を構築する。
②日本におけるPrEPの指針策定に関して、日本エイズ学会の協力のもと、医療従事者、コミュニティと共同し、日本の実情を踏まえたPrEP指針の策定を目指す。
③先行研究を参考に、MSMを対象とした無記名自記式アンケート調査を行う。アンケート調査は、MSM向けのGPS機能付き出会い系アプリの利用者を対象として実施する。
④nPEPの実態把握に関して、都内のSTIクリニック等を中心に提供体制の取り組みを評価する。
結果と考察
①PrEP開始2年後、受診継続率、内服順守率およびHIV感染予防効果は極めて高かった。一方、コンドームの平均使用率はPrEP開始時点から低下傾向で、他の性感染症の罹患率は増加傾向を認めており、safer sexの情報提供と性感染症検査体制の拡充が重要と考えられた。個人輸入のPrEP userは2022年10月時点で協力施設であるプライベートヘルスクリニック(PHC)と併せて約3400名に達しており、情報提供体制の構築を進める必要がある。
②「日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き」として完成させた。今後、世界のPrEPの進展と国内の状況を適合したガイドラインに発展させるべきである。③2021年2月に実施したMSMのPrEPに関する実態調査を取りまとめた。MSM向け出会い系アプリに広告出稿し、7,850件の有効回答を得た。PrEP使用経験者は全体の8.5%であった。利用者は、東京を中心とした関東ブロック在住で70.2%を占めたが、全国に存在していた。その8割がweb経由で薬剤を入手していた。そのうち、定期/不定期に医師の診察を受けているのが49.7%であった。全回答のうち、月に支出可能な自己負担額は5千円までという回答が55.6%を占めた。今後の利用意向は、認可されたら使用を希望が68.5%であった。PrEPを利用した場合、コンドームを使わなくなるという回答者も46.5%存在した。
報告書とその概要を作成し、webから閲覧できるようにした。また、分担研究②の利用指針をもとにPrEP user向けの利用者ガイドを策定し公開した。PrEPの利用経験者が同じサンプリング方法で、2018年10月:2.2%であったのが、2021年3月には8.5%と急増していた。Web購入者が8割を占め、その背景には薬剤のコストが大きく影響している。今後は検査や見守りを含めたクリニックベースの見守り体制の構築が急務だと思われる。
④PrEPのジェネリック薬を国内で初めて提供開始したパーソナルヘルスクリニック(PHC)においては2020年の87件から2022年には454件に着実に増加しており、nPEP処方を受けたMSMのほぼ全例がPrEPへと移行していた。nPEPとPrEPはHIV予防の相補的関係にあり、STIクリニック等はnPEPの提供施設として重要となることが示唆された。
結論
①④日本のPrEPは極めて有効にHIVを予防した。PrEPおよびnPEP利用者は首都圏近郊で民間クリニックを中心に急増している。②③には正しい情報提供の普及が必要である。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202220007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
曝露前予防投薬(Pre-exposure prophylaxis:PrEP)は世界のHIV予防の重要戦略だが、日本のエビデンスは存在しなかった。日本のPrEP実証研究を論文化し、日本の男性間性交渉者でのHIV予防効果が高いことを示すとともに、重篤な有害事象は認めず、実現可能性が高いことを示した。一方、PrEPの開始に伴い、性感染症が増加傾向にあることが推測され、性感染症検査の体制構築が必要であると考えられた。また、国内でのPrEP導入には他国の報告と同様の費用対効果が見込まれることを報告した。
臨床的観点からの成果
日本ではPrEPが未承認で、世界のHIV予防戦略と比較して遅れている。東京近郊の男性間性交渉者のHIVの罹患率は約4%/人年と、PrEPの適応とされる2%/人年を上回っており、HIV感染リスクは高くPrEPの導入が必要であることを示した。一方、インターネットで薬剤を購入し自己判断でPrEPを開始する者が急増していることを受け、都内複数のクリニックが、ジェネリック薬の処方を開始しており、草の根でのPrEP供給体制が構築されつつある実態と検査体制の整備に必要性を明らかにした。
ガイドライン等の開発
2022年11月に、日本におけるPrEPの利用指針「日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き」を日本エイズ学会の協力のもと作成し、同学会ホームページ上で公開した。また、上記、PrEPの利用指針をもとに、PrEP利用者向けに広く活用できるように、簡易な内容の「日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用者ガイド」を策定し、同様に公開した。
その他行政的観点からの成果
該当無し
その他のインパクト
PrEPに関する情報提供プラットフォームとして、インターネット上に「PrEP in Japan」のホームページ(https://prep.ptokyo.org/)を立ち上げ、情報提供を実施している。PrEPの利用指針、手引きの策定・公開に合わせて、PrEP利用者向け、および医療者のための説明会・セミナーをそれぞれ2022年12月、2023年1月に実施した。また、手引きの簡易版PrEPポケットガイドを作成し、同サイトで公開している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
9件
学会発表(国内学会)
13件
日本エイズ学会学術総会10件、日本感染症学会学術総会発表3件
学会発表(国際学会等)
3件
The conference on retrovirus and opportunistic infection (CROI) 2023, 2022, 2021
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
上記ガイドラインの項参照(ガイドライン2件)
その他成果(普及・啓発活動)
6件
HP作成1件、PrEPガイドラインの説明会2件、日本エイズ学会学術総会PrEPシンポジウム3件(2022,2021,2020)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mizushima D, Takano M, Aoki T, et al
Effect of tenofovir-based HIV pre-exposure prophylaxis against HBV infection in men who have sex with men
Hepatology  (2023)
10.1097/HEP.0000000000000384.
原著論文2
Mizushima D, Takano M, Ando N, et al
A four-year observation of HIV and sexually transmitted infections among men who have sex with men before and during pre-exposure prophylaxis in Tokyo
Journal of Infection and Chemotherapy  (2022)
doi: 10.1016/j.jiac.2022.02.013.
原著論文3
Yamamoto N, Koizumi Y, Tsuzuki S, et al
Evaluating the cost-effectiveness of a pre-exposure prophylaxis program for HIV prevention for men who have sex with men in Japan
Scientific Reports  (2022)
doi: 10.1038/s41598-022-07116-4.
原著論文4
Aoki T, Mizushima D, Takano M, et al
Efficacy of 1g ceftriaxone monotherapy compared to dual therapy with azithromycin or doxycycline for treating extragenital gonorrhea among men who have sex with men
Clinical Infectious Diseases  (2021)
10.1093/cid/ciab455.
原著論文5
Mizushima D, Takano M, Uemura H, et al.
Effectiveness of doxycycline 100 mg twice daily for 7 days and azithromycin 1 g single dose for the treatment of rectal Chlamydia trachomatis infection among men who have sex with men
Journal of Antimicrobial Chemotherapy  (2021)
doi: 10.1093/jac/dkaa437.

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202220007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,251,000円
(2)補助金確定額
14,251,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 463,867円
人件費・謝金 797,900円
旅費 1,434,531円
その他 8,266,702円
間接経費 3,288,000円
合計 14,251,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-