介護情報を活用した脳卒中治療連携体制が運動機能障害予防に及ぼす影響に関する大規模研究

文献情報

文献番号
200921020A
報告書区分
総括
研究課題名
介護情報を活用した脳卒中治療連携体制が運動機能障害予防に及ぼす影響に関する大規模研究
課題番号
H19-長寿・一般-030
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 岡山 明(財団法人結核予防会第一健康相談所)
  • 坂田 清美(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 寺山 靖夫(岩手医科大学医学部内科学講座神経内科・老年科分野)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 中村 元行(岩手医科大学医学部内科学講座循環器・腎・内分泌内科分野)
  • 小笠原邦昭(岩手医科大学医学部脳神経外科学講座)
  • 千葉 茂樹(岩手県保健福祉部)
  • 高橋 明(財団法人いわてリハビリテーションセンター)
  • 滝川 義明(岩手県環境保健研究センター)
  • 吉田 雄樹(岩手医科大学医学部救急医学講座)
  • 小野田敏行(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 板井 一好(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 大澤 正樹(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 丹野 高三(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中の治療体制にリハビリテーションの連携が有る地域(比較地区)と無い地域(研究地区)について、脳卒中発症に伴う死亡、入院期間及び介護状態などの予後に及ぼす影響を観察する。また、研究地域における既存のコホート研究対象者の追跡調査を実施し、脳卒中罹患率、介護認定率等について明らかにする。
研究方法
5つの急性期病院に入院した脳卒中患者のうち、同意の得られた者を登録して追跡対象者とした。研究地区では平成19年4月から平成21年3月まで、比較地区では平成19年10月から1年間発症登録を実施した。既存のコホート研究では、平成19年と20年度に登録の精度管理を目的とした発症登録を行い、平成21年度は、発症登録に加えて生存状況及び介護認定状況の確認を行った。さらに死亡者については人口動態調査データとの照合および死亡小票の閲覧を行って死因の確認作業を行った。
結果と考察
同意の得られた1,550人について、平成21年度までに総観察人年2,362人年、平均追跡期間1.7年の追跡を終了した。性、年齢、NIHSSで調整したFIM総得点(95%信頼区間)は研究地区で97.3(93.4-101.1)、比較地区で97.4(94.5-100.3)であり、両地区間に差は認められなかった。発症後1年間の累積死亡率は研究地区で7.4%、比較対照地区で5.6%であったが、性、年齢、NIHSSを調整して比較検討すると、比較地区に比べて研究地区の死亡率は1.04倍(95%信頼区間:0.58-1.86)であり、両地区の間に差は認められなかった。研究地区の患者の転院先の多くは比較地区の回復期病院であった。今回の結果は、岩手県の、特に本研究の研究地区である二戸、久慈医療圏では広域にわたる脳卒中治療連携体制が確立されていることを示唆している。
既存のコホート研究では、本年度の追跡調査により、観察人年は男50,757人年、女96,756人年となった。総死亡数で男650人(12.8対千人年)、女400人(4.1)であった。原死因が照合できた者では新生物が男37%、女46%と最も多く、次いで循環器系の疾患が男29%、女29%であった。
結論
研究地区と比較地区の間で初発脳卒中患者の運動機能障害の程度や死亡率に差はみられなかった。観察期間が短いことから、今後観察期間を延長することで本研究は脳卒中の介護認定へのインパクトを示す重要な研究となると考えられる

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200921020B
報告書区分
総合
研究課題名
介護情報を活用した脳卒中治療連携体制が運動機能障害予防に及ぼす影響に関する大規模研究
課題番号
H19-長寿・一般-030
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 岡山 明(財団法人結核予防会第一健康相談所)
  • 坂田 清美(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 寺山 靖夫(岩手医科大学医学部内科学講座神経内科・老年科分野)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 中村 元行(岩手医科大学医学部内科学講座循環器・腎・内分泌内科分野)
  • 小笠原邦昭(岩手医科大学医学部脳神経外科学講座)
  • 千葉 茂樹(岩手県保健福祉部)
  • 高橋 明(財団法人いわてリハビリテーションセンター)
  • 滝川 義明(岩手県環境保健研究センター)
  • 吉田 雄樹(岩手医科大学医学部救急医学講座)
  • 小野田敏行(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 板井 一好(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 大澤 正樹(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 丹野 高三(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中の治療体制にリハビリテーションの連携が有る地域(比較地区)と無い地域(研究地区)について、脳卒中発症に伴う死亡、入院期間及び介護状態などの予後に及ぼす影響を観察する。また、研究地域における既存のコホート研究対象者の追跡調査を実施し、脳卒中罹患率、介護認定率等について明らかにする。
研究方法
5つの急性期病院に入院した脳卒中患者のうち、同意の得られた者を登録して追跡対象者とした。研究地区では平成19年4月から平成21年3月まで、比較地区では平成19年10月から1年間発症登録を実施した。同意の得られた患者について、死亡、介護認定情報、機能的自立支援度評価法(FIM)等について、追跡調査を行った。既存のコホート研究では、平成19年と20年度は、登録の精度管理を目的とした発症登録を行った。平成21年度は、発症登録に加えて生存状況及び介護認定状況の確認を行った。さらに死亡者については人口動態調査データとの照合および死亡小票の閲覧を行って死因の確認作業を行った。
結果と考察
入院し生存退院した脳卒中患者2,411人のうち1,550人(64.3%)から同意を得た。追跡調査の結果は総観察人年2,362人年、平均追跡期間1.7年であった。性、年齢、NIHSSで調整したFIM総得点(95%信頼区間)は研究地区で97.3(93.4-101.1)、比較対照地区で97.4(94.5-100.3)であり、両地区間に差は認められなかった。発症後1年間の累積死亡率は研究地区で7.4%、比較地区で5.6%であった。性、年齢、NIHSSを調整して比較すると、比較地区に比べて研究地区の死亡率は1.04倍(95%信頼区間:0.58-1.86)であり両地区の間に差は認められなかった。
コホート研究については、参加者の観察人年は男50,757人年、女96,756人年となった。総死亡数は男650人(12.8対千人年)、女400人(4.1)であり、SMRは平成17年全国を基準として男0.496(95%信頼区間 0.458-0.534)、女0.418(0.377-0.459)と低かった。原死因が照合できた者では新生物が男37%、女46%と最も多く、次いで循環器系の疾患が男29%、女29%であった。
結論
研究地区と比較地区の間で初発脳卒中患者の運動機能障害の程度や死亡率に差はみられなかった。観察期間が短いことから、今後観察期間を延長することで本研究は脳卒中の介護認定へのインパクトを示す重要な研究となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
脳卒中の新規発症患者について、入院時の重症度とリハビリ後の自立度について比較検討した結果、重症入院者で自立度が回復した者が7%、反対に軽症入院者で自立度が低下した者が16%存在することを明らかにした。また、大規模コホート研究において、平均追跡期間が5年の脳卒中発症率(千人年対)は、男性4.3、女性が2.4であること、及びその後の要支援以上の介護認定率は男性が45%、女性が47%であることを明らかにした。3年間の研究では追跡期間が短かったので、2011年度に5年後の追跡調査を行う予定である。
臨床的観点からの成果
同意の得られた脳卒中患者を病型別にみると、脳梗塞が67.4%、脳出血が26.3%、クモ膜下出血が6.4%であった。平均追跡期間1.7年における死亡率(千人年対)は75.8、新規発症では60.0であった。入院時の重症度とリハビリ後の自立度について比較検討した結果、重症入院者で自立度が回復した者が7%、反対に軽症入院者で自立度が低下した者が16%存在することを明らかにした。入院時軽症者のリハビリ後の自立度低下の原因を検討することで、今後の脳卒中患者の予後改善に大きな影響を与えることが考えられる。
ガイドライン等の開発
脳卒中発症から急性期治療及びリハビリテーションを経た後の予後を、より長期間にわたって追跡調査することで、入院時重症度とリハビリ後の要介護認定度との関連を明らかにできると考えられる。また、既存のコホート研究を継続することで、脳卒中多発地域における危険要因と発症との関連を明らかにできる。
その他行政的観点からの成果
予後追跡調査の結果、脳卒中治療体制にリハビリテーションの連携がある地域と無い地域で、機能的自立度評価に両地区で差が認められず、両地区における広域治療連携体制が整っていることが確認された。一方で、連携が無い地域(農漁村地区)で入院時の重症度が高い傾向にあり、両地域における急性期病院での治療内容に差がないことから、急性期治療を行う医療施設へのアクセスや社会経済的影響が示唆された。
その他のインパクト
本研究成果について、一般向け発表会を2010年1月30日に開催した。研究代表者の基調講演に引き続いて、3名の演者による成果発表のシンポジウムを開催した。また、第35回日本脳卒中学会において、「本邦における脳卒中大規模疫学研究による最近の知見」と題したシンポジウムで成果発表(脳卒中罹患後の自立度および要介護度に関連する因子の検討855例の追跡調査)を行った。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
80件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
21件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Masaki Ohsawa,Kazuyoshi Itai,Toshiyuki Onoda,et al.
Dietary intake of n-3 polyunsaturated fatty acids is inversely associated with CRP levels, especially among male smokers
ATHEROSCLEROSIS , 201 (1) , 184-191  (2008)
原著論文2
Shinji Makita,Motoyuki Nakamura,Kenyu Satoh,et al.
Serum C-reactive protein levels can be used to predict future ischemic stroke and mortality in Japanese men from the general population
ATHEROSCLEROSIS , 204 (1) , 234-238  (2009)
原著論文3
Tomohiro Takahashi,Motoyuki Nakamura,Toshiyuki Onoda,et al.
Predictive value of plasma B-type natriuretic peptide for ischemic stroke: A community-based longitudinal study
ATHEROSCLEROSIS , 207 (1) , 298-303  (2009)
原著論文4
Masaki Ohsawa,Kazuyoshi Itai,Kozo Tanno,et al.
Cardiovascular risk factors in the Japanese northeastern rural population
International Journal of Cardiology , 137 (3) , 226-235  (2009)
原著論文5
横川博英,安村誠司,丹野高三,他
閉じこもりと要介護発生との関連についての検討
日本老年医学会雑誌 , 46 (5) , 447-457  (2009)
原著論文6
小野田敏行,丹野高三,大澤正樹,他
岩手県北地域における死亡、脳卒中と心筋梗塞罹患、心不全発症および要介護認定状況について 岩手県北地域コホート研究の平均2.7年の追跡結果から
日本循環器予防学会誌 , 45 (1) , 32-48  (2010)
原著論文7
丹野高三,栗林徹,大澤正樹,他
高齢者のbody mass indexと総死亡、循環器疾患罹患との関連 岩手県北地域コホート研究の2.7年の追跡調査より
日本循環器予防学会誌 , 45 (1) , 9-21  (2010)
原著論文8
Motoyuki Nakamura,Fumitaka Tanaka,Toshiyuki Onoda, et al.
Gender-specific risk stratification with plasma B-type natriuretic peptide for future onset of congestive heart failure and mortality in the Japanese general population
International Journal of Cardiology , 143 (2) , 124-129  (2010)
原著論文9
Tanaka Fumitaka,Shinji Makita,Onoda Toshiyuki, et al.
Prehypertension subtype with elevated C-reactive protein: risk of ischemic stroke in a general Japanese population. Am J Hypertens
American Journal of Hypertension , 23 (10) , 1108-1113  (2010)
原著論文10
Kozo Tanno,Tomoyuki Okamura,Ohsawa Masaki, et al.
Comparison of low-density lipoprotein cholesterol concentrations measured by a direct homogeneous assay and by the Friedewald formula in a large community population
Clinica Chimica Acta , 411 , 1774-1780  (2010)
原著論文11
Hirohide Yokokawa,Seiji Yasumura,Kozo Tanno,et al.
Serum low-density lipoprotein to high-density lipoprotein ratio as a predictor of future acute myocardial infarction among men in a 2.7-year cohort study of a Japanese northern rural population
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis , 18 (2) , 89-98  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-