介護保険施設におけるマネジメント理論の展開に関する実証的研究

文献情報

文献番号
200921017A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険施設におけるマネジメント理論の展開に関する実証的研究
課題番号
H19-長寿・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小山 秀夫(静岡県立大学大学院 経営情報学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,580,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、介護老人保健施設並びに介護療養型医療施設に必要なマネジメント理論の状況等を明らかにし、もって介護老人保健施設、介護療養型医療施設のマネジメントシステムを確立するために、その実態を把握し、実証的研究を行うことである。
研究方法
 本研究では、先行研究や各種政府統計資料等から、コンプライアンス経営に関する方策についての調査企画を行った。また、社団法人全国老人保健施設協会会員施設3,290施設、一般社団法人慢性期医療協会会員施設838施設へのアンケート調査を実施し、集計解析した。なお、「介護事業運営の適正化に関する有職者会議」(主任研究者も参加)の提案を受け、当初の研究計画の一部を変更した。
結果と考察
 慢性期医療機関は、介護老人保健施設より、法令遵守や内部倫理・内部規制の遵守等について、コンプライアンス経営として取り組んでいる意識が高く、コンプライアンスの担当者の配置率やコンプライアンスの把握調査の実施率も高かった。コンプライアンス経営といった場合に意識する内容として、利用者の人権・尊厳の尊重・満足度、労務管理への取り組みは、介護老人保健施設のほうが、慢性期医療機関より高い傾向があった。
 事業者の第三者評価は、医療機関においては、平成9年から病院機能評価が始まっているのに対し、介護サービスについては、福祉サービス第三者評価が平成16年3月、介護保険法に基づく介護サービス情報の公表制度は平成18年4月開始と、介護サービスの第三者評価は、始まったばかりである。事業者のコンプライアンス体制構築のためには第三者評価が重要なことは諸外国の方策からも明らかであり、第三者評価や情報公開制度は今後も推進されることが重要と考えられる。
結論
 以上により、介護老人保健施設及び介護療養型医療施設のコンプライアンス等の実態並びにそれらに対する介護保険施設の社会的責任を明らかになった。
施設事業者のコンプライアンス体制構築のために「ケアの質のモニタリングと質の改善」が重要なことは国際的に共有化されている。コンプライアンスの確保を事業者自身の自主的な取組へと変えるためには、取組を促進するインセンティブが設計されることが必要であると考えられる。
 介護保険施設のコンプライアンス経営体制の構築は、組織の危機管理の一環であり、介護保険施設の経営状況を健全化し、ひいては介護保険制度の持続可能性を高めることができると考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200921017B
報告書区分
総合
研究課題名
介護保険施設におけるマネジメント理論の展開に関する実証的研究
課題番号
H19-長寿・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小山 秀夫(静岡県立大学大学院 経営情報学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、介護老人保健施設並びに介護療養型医療施設に必要なマネジメント理論の状況等を明らかにし、もって介護老人保健施設、介護療養型医療施設のマネジメントシステムを確立するために、その実態を把握し、実証的研究を行うことである。
研究方法
本研究では、先行研究や各種政府統計資料等から、コンプライアンス経営に関する方策についての調査企画を行った。また、社団法人全国老人保健施設協会会員施設3,290施設、一般社団法人慢性期医療協会会員施設838施設へのアンケート調査を実施し、集計解析した。なお、「介護事業運営の適正化に関する有職者会議」(主任研究者も参加)の提案を受け、当初の研究計画の一部を変更した。
結果と考察
 慢性期医療機関は、介護老人保健施設より、法令遵守や内部倫理・内部規制の遵守等について、コンプライアンス経営として取り組んでいる意識が高く、コンプライアンスの担当者の配置率やコンプライアンスの把握調査の実施率も約5割以上と、高かった。コンプライアンス経営といった場合に意識する内容として、利用者の人権・尊厳の尊重・満足度、労務管理への取り組みは、介護老人保健施設のほうが、慢性期医療機関より高い傾向があった。
 事業者の第三者評価は、医療機関においては、平成9年から病院機能評価が始まっているのに対し、介護サービスについては、福祉サービス第三者評価が平成16年3月、介護保険法に基づく介護サービス情報の公表制度は平成18年4月開始と、介護サービスの第三者評価は、始まったばかりである。事業者のコンプライアンス体制構築のためには第三者評価が重要なことは諸外国の方策からも明らかであり、第三者評価や情報公開制度は今後も推進されることが重要と考えられる。
結論
 以上により、介護老人保健施設及び介護療養型医療施設のコンプライアンス等の実態並びにそれらに対する介護保険施設の社会的責任を明らかになった。
 施設事業者のコンプライアンス体制構築のために「ケアの質のモニタリングと質の改善」が重要なことは国際的に共有化されている。コンプライアンスの確保を事業者自身の自主的な取組へと変えるためには、取組を促進するインセンティブが設計されることが必要であると考えられる。
介護保険施設のコンプライアンス経営体制の構築は、組織の危機管理の一環であり、介護保険施設の経営状況を健全化し、ひいては介護保険制度の持続可能性を高めることができると考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、先行研究や各種政府統計資料等から、諸外国並びにわが国における近年の高齢者ケア政策等の実態を把握し、コンプライアンス経営の有無や介護保険施設または慢性期医療を提供する医療機関における社会的責任等の概念導入について、全国介護老人保健施設協会会員施設および日本慢性期医療協会会員施設への調査を行い、調査結果からコンプライアンス経営が極めて重要であることが整理できた。
臨床的観点からの成果
慢性期医療機関は、介護老人保健施設より、法令遵守や内部倫理・内部規制の遵守等について、コンプライアンス経営として取り組んでいる意識が高く、コンプライアンスの担当者の配置率やコンプライアンスの把握調査の実施率も高かった。コンプライアンス経営といった場合に意識する内容として、利用者の人権・尊厳の尊重・満足度、労務管理への取り組みは、介護老人保健施設のほうが、慢性期医療機関より高い傾向があることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
厚生労働省老健局が設置した「介護事業運営の適正化に関する有職者会議」(平成19(2007)年12月3日)に主任研究者も参加し、その報告書の中で、「新たに事業所単位の規制として法令遵守を含めた業務管理体制の整備を義務づける必要がある」と提言し、事業所の「コンプライアンス経営」への取組の必要性を指摘した。
その他行政的観点からの成果
医療福祉介護事業者の第三者評価は、医療機関においては、平成9年から病院機能評価が始まっているのに対し、介護サービスについては、福祉サービス第三者評価が平成16年3月、介護保険法に基づく介護サービス情報の公表制度は平成18年4月開始と、介護サービスの第三者評価は、始まったばかりである。事業者のコンプライアンス体制構築のためには第三者評価が重要なことは諸外国の方策からも明らかであり、第三者評価や情報公開制度は今後も推進されることが重要と考えられた。
その他のインパクト
社団法人シルバーサービス振興会主催の「介護サービス事業運営の適正化に向けた民間事業者シンポジウム」(大阪:平成20年2月29日、東京:平成20年3月24日)において「介護事業運営の適正化への取り組み」と題した講演、またシンポジウムのコーディネーターをつとめた。また東京新聞2007年8月8日「不正再発防止メンバーに聞く」という欄で取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「介護事業運営の適正化に関する有職者会議」報告書
その他成果(普及・啓発活動)
5件
静岡県介護給付適正化連絡会義などにおける講演等

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-