食生活・栄養素摂取状況が高齢者の健康寿命に与える影響に関する研究:NIPPON DATA 80・90の追跡調査

文献情報

文献番号
200921014A
報告書区分
総括
研究課題名
食生活・栄養素摂取状況が高齢者の健康寿命に与える影響に関する研究:NIPPON DATA 80・90の追跡調査
課題番号
H19-長寿・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
上島 弘嗣(国立大学法人滋賀医科大学 生活習慣病予防センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡山 明((財)結核予防会第一健康相談所)
  • 児玉 和紀((財)放射線影響研究所)
  • 笠置 文善((財)放射線影響研究所疫学部)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学医学部内科学第二講座)
  • 坂田 清美(岩手医科大学)
  • 中村 好一(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門)
  • 喜多 義邦(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 岡村 智教(国立循環器病センター予防検診部)
  • 玉腰 浩司(名古屋大学医学部保健学科看護学専攻)
  • 中村 保幸(京都女子大学家政学部生活福祉学科)
  • 清原 裕(九州大学大学院医学研究院環境医学分野)
  • 松村 康弘(桐生大学医療保健学部)
  • 由田 克士(国立健康・栄養研究所栄養疫学プログラム)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学健康増進予防医学)
  • 早川 岳人(福島県立医科大学衛生学・予防医学講座)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
  • 奥田 奈賀子((財)結核予防会第一健康相談所)
  • 寳澤 篤(東北大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 NIPPON DATA 80・90 は全国から無作為抽出された日本人を代表する集団(1980年および1990年循環器基礎調査対象者)の長期追跡データとして極めて貴重なコホート研究である。本研究班ではNIPPON DATA対象者が同時に受けている国民栄養調査データの結合に主眼をおき、食生活・栄養素摂取状況と将来の健康寿命、ADL、循環器疾患死亡等の健康状態との関連を明らかにし、最終的には食生活による健康寿命予測チャートの作成を目指すものである。
研究方法
 NIPPON DATA 80・90の対象者は30歳以上の男女で、それぞれ約10,000人と約8,000人である。1980年および1990年実施の国民栄養調査成績から個人別の各種栄養素および食品群摂取量を算出し、統合データを作成した。最終年度である本年度は、得られた各種栄養素・食品群摂取量のデータを用いて食生活要因とADL低下リスクおよび循環器疾患死亡リスクとの関連の分析を進め、リスク評価チャートの試作を進めた。また、NIPPON DATA80の追跡期間をさらに5年延長し、29年目の追跡を行った。
結果と考察
 食生活要因と将来のADL低下リスクとの関連の分析では、食塩摂取量が多いほどADL低下リスクが高かった。食生活要因と循環器疾患死亡リスクとの関連の分析では、食塩摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが高く、一方、野菜・果物摂取量、食物繊維摂取量、カルシウム摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが低いなどの結果が得られた。ADL低下リスクと関連が強かった血圧値、喫煙習慣および性、年齢から将来のADL低下リスクを予測するチャートを試作した。さらに、循環器疾患死亡リスクとの関連が強かった食生活要因である食塩摂取量、野菜・果物摂取量、および性、年齢から、10年後の循環器疾患死亡リスクを予測するチャートを試作した。
結論
 本年度試作した2種のリスク評価チャートは、今後、保健・医療・介護予防の現場や一般国民において活用されることが期待できる。また、国民栄養調査対象者の長期コホート研究としてのNIPPON DATAデータベースから、健康寿命延伸のための食生活面でのエビデンスを今後さらに詳細に提出できるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2010-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200921014B
報告書区分
総合
研究課題名
食生活・栄養素摂取状況が高齢者の健康寿命に与える影響に関する研究:NIPPON DATA 80・90の追跡調査
課題番号
H19-長寿・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
上島 弘嗣(国立大学法人滋賀医科大学 生活習慣病予防センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡山 明((財)結核予防会第一健康相談所)
  • 児玉 和紀((財)放射線影響研究所)
  • 笠置 文善((財)放射線影響研究所疫学部)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学医学部内科学第二講座)
  • 坂田 清美(岩手医科大学)
  • 中村 好一(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門)
  • 喜多 義邦(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 岡村 智教(国立循環器病センター予防検診部)
  • 玉腰 浩司(名古屋大学医学部保健学科看護学専攻)
  • 中村 保幸(京都女子大学家政学部生活福祉学科)
  • 清原 裕(九州大学大学院医学研究院環境医学分野)
  • 松村 康弘(桐生大学医療保健学部)
  • 由田 克士(国立健康・栄養研究所栄養疫学プログラム)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学健康増進予防医学)
  • 早川 岳人(福島県立医科大学衛生学・予防医学講座)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
  • 奥田 奈賀子(滋賀医科大学生活習慣病予防センター)
  • 寳澤 篤(東北大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
  • 角野 文彦(滋賀県健康福祉部健康推進課)
  • 澁谷 いづみ(愛知県半田保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 NIPPON DATA 80・90 は全国から無作為抽出された日本人を代表する集団(1980年および1990年循環器基礎調査対象者)の長期追跡データとして極めて貴重なコホート研究である。本研究班ではNIPPON DATA対象者が同時に受けている国民栄養調査データの結合に主眼をおき、食生活・栄養素摂取状況と将来の健康寿命、ADL、循環器疾患死亡等の健康状態との関連を明らかにし、最終的には食生活による健康寿命予測チャートの作成を目指すものである。
研究方法
 NIPPON DATA 80・90の対象者は30歳以上の男女で、それぞれ約10,000人と約8,000人である。1980年、1990年実施の国民栄養調査成績から個人別の各種栄養素および食品群摂取量を算出し、統合データを作成した。得られた各種栄養素・食品群摂取量のデータを用いて食生活要因とADL低下リスクおよび循環器疾患死亡リスクとの関連の分析を進め、リスク評価チャートの試作を進めた。また、追跡期間をさらに延長し、NIPPON DATA80は29年、NIPPON DATA90は15年の追跡データを作成した。
結果と考察
 喫煙経験別の障害なし平均余命の分析においては、60歳の障害なし平均余命が喫煙者では非喫煙者に比べ1.3歳短いことが明らかとなった。食生活要因と将来のADL低下リスクとの関連の分析では、食塩摂取量が多いほどADL低下リスクが高かった。食生活要因と循環器疾患死亡リスクとの関連の分析では、食塩摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが高く、一方、野菜・果物摂取量、食物繊維摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが低かった。ADL低下リスクと関連が強かった血圧値、喫煙習慣および性、年齢から将来のADL低下リスクを予測するチャートを試作し、さらに、循環器疾患死亡リスクとの関連が強かった食生活要因である食塩摂取量、野菜・果物摂取量、および性、年齢から、10年後の循環器疾患死亡リスクを予測するチャートを試作した。
結論
 本研究において最終的に試作された2種のリスク評価チャートは、今後、保健・医療・介護予防の現場や一般国民において活用されることが期待できる。また、国民栄養調査対象者の長期コホート研究としてのNIPPON DATAデータベースから、健康寿命延伸のための食生活面でのエビデンスを今後さらに詳細に提出できるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人を代表する集団(循環器基礎調査対象者)の長期追跡研究NIPPON DATA 80・90と、同時に実施された国民栄養調査データを結合し、食生活・栄養素摂取状況と将来の健康寿命、日常生活動作(ADL)、循環器疾患死亡等の健康状態との関連を解析した。その結果、食塩摂取によるADL低下リスクおよび循環器疾患死亡リスクの上昇、野菜・果物摂取による循環器疾患死亡リスクの低下などの結果が得られ、初めての国民栄養調査のコホート分析となった。そのほか英文論文34編を含む多くの知見を国際誌などに発表した。
臨床的観点からの成果
本研究における解析結果から、ADL低下リスクと関連が強かった血圧値、喫煙習慣および性、年齢から将来のADL低下リスクを予測するチャートを試作し、さらに、循環器疾患死亡リスクとの関連が強かった食生活要因である食塩摂取量、野菜・果物摂取量、および性、年齢から、10年後の循環器疾患死亡リスクを予測するチャートを試作した。これら2種のリスク評価チャートは、日常診療の現場においても介護予防や健康教育に広く活用されることが期待できる。
ガイドライン等の開発
NIPPON DATAからの知見はこれまで、日本動脈硬化学会ガイドラインにおける循環器疾患リスク評価チャートの活用など、各種ガイドラインにおける重要なエビデンスとなっている。今回明らかになった国民栄養調査データによる食生活要因とADL低下、循環器疾患死亡リスクとの関連の知見、および、作成されたリスク評価チャートは、今後各種ガイドラインや健康施策立案に活用されることが期待できる。
その他行政的観点からの成果
本研究で試作された将来のADL低下リスクおよび循環器疾患死亡リスクを予測する評価チャートは、一般国民にとっても簡便に自らの健康リスクを評価できるものである。国民が自らの食生活および危険因子の状態の見直しに活用できるよう広く普及することが予想される。また、地域や職域における健康教育、保健指導の場においても活用可能である。
その他のインパクト
本研究で明らかになった食塩摂取量と将来のADL低下リスクとの関連について2010年1月7日付け読売新聞において全国に報道された。また、NIPPON DATA研究のこれまでの知見をまとめた著書「NIPPON DATAからみた循環器疾患のエビデンス」を2008年7月日本医事新報社から出版した。さらに、本研究の方法と基礎データをまとめてJournal of Epidemiologyの特集号 “NIPPON DATA80/90 Nutrition Study” として2010年3月に出版した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
34件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Higashiyama A, Murakami Y, Hozawa A.et al.
Does self-reported history of hypertension predict cardiovascular death? Comparison with blood pressure measurement in a 19-year prospective study
Journal of Hypertension , 25 (5) , 959-964  (2007)
原著論文2
Kadota A, Hozawa A, Okamura T.et al.
Relationship Between Metabolic Risk Factor Clustering and Cardiovascular Mortality Stratified by High Blood Glucose and Obesity: NIPPON DATA90, 1990-2000
Diabetes Care , 30 (6) , 1533-1538  (2007)
原著論文3
Nishi N, Sugiyama H, Kasagi F.et al.
Urban-rural difference in stroke mortality from a 19-year cohort study of the Japanese general population: NIPPON DATA80
Social Science & Medicine , 65 , 822-832  (2007)
原著論文4
Hozawa A, Okamura T, Kadowaki T.et al.
Is weak association between cigarette smoking and cardiovascular disease mortality observed in Japan explained by low total cholesterol?-NIPPON DATA80
International Journal of Epidemiology , 36 , 1060-1067  (2007)
原著論文5
Okamura T, Hayakawa T, Hozawa A.et al.
Lower levels of serum albumin and total cholesterol associated with decline in activities of daily living and excess mortality in a 12-year cohort study of elderly Japanese
the Journal of the American Geriatrics Society , 56 , 529-535  (2008)
原著論文6
Kadowaki S, Okamura T, Hozawa A.et al.
Relationship of elevated casual blood glucose level with coronary heart disease, cardiovascular disease and all-cause mortality in a representative sample of the Japanese population.NIPPON DATA80
Diabetologia , 51 , 575-582  (2008)
原著論文7
Hozawa A, Okamura T, Oki I.et al.
Relationship Between BMI and All-cause Mortality in Japan: NIPPON DATA80
Obesity , 16 (7) , 1714-1717  (2008)
原著論文8
笠置 文善、片山 博昭、児玉 和紀 et al.
循環器疾患リスク評価チャートのPCソフトの開発
日本循環器病予防学会誌 , 43 , 166-171  (2008)
原著論文9
Nakamura Y, Hozawa A, Turin TC.et al.
Dietary Habits in Middle Age and Future Changes in Activities of Daily Living--NIPPON DATA80
Gerontology , 55 (6) , 707-713  (2009)
原著論文10
Hozawa A, Okamura T, Murakami Y.et al.
High blood pressure in middle age is associated with a future decline in activities of daily living. NIPPON DATA80
J Hum Hypertens. , 23 , 546-552  (2009)
原著論文11
Nakamura Y, Ueshima H, Okamura T.et al.
A Japanese diet and 19-year mortality: National Integrated Project for Prospective Observation of Non-Communicable Diseases and its Trends in the Aged, 1980
Br J Nutr. , 101 , 1696-1705  (2009)
原著論文12
Nakamura Y, Ueshima H, Kadota A.et al.
Alcohol intake and 19-year mortality in diabetic men: NIPPON DATA80
Alcohol , 43 , 635-641  (2009)
原著論文13
Hayakawa T, Okamura T,Okayama A.et al.
Relationship between Five-year decline in Instrumental Activity of Daily Living and Accumulation of Cardiovascular Risk Factors: NIPPON DATA90
J Atheroscler Thromb. , 17 (1) , 64-72  (2009)
原著論文14
Okuda N, Miura K, Yoshita K.et al.
Integration of Data from NIPPON DATA80/90 and National Nutrition Survey in Japan: For Cohort Studies of Representative Japanese on Nutrition
Journal of Epidemiology , 20 , 506-514  (2010)
原著論文15
Yoshita K, Arai Y, Nozue M.et al.
Total Energy Intake and Intake of Three Major Nutrients by Body Mass Index in Japan: NIPPON DATA80 and NIPPON DATA90
Journal of Epidemiology , 20 , 515-523  (2010)
原著論文16
Miura K, Okuda N, Turin TC.et al.
Dietary Salt Intake and Blood Pressure in a Representative Japanese Population: Baseline Analyses of NIPPON DATA80
Journal of Epidemiology , 20 , 524-530  (2010)
原著論文17
Watanabe M, Higashiyama A, Kokubo Y.et al.
Protein Intakes and Serum Albumin Levels in a Japanese General Population: NIPPON DATA90
Journal of Epidemiology , 20 , 531-536  (2010)
原著論文18
Nakamura Y, Okuda N, Turin TC.et al.
Fatty Acids Intakes and Serum Lipid Profiles: NIPPON DATA90 and the National Nutrition Monitoring
Journal of Epidemiology , 20 , 544-548  (2010)
原著論文19
Kondo I, Funahashi K, Nakamura M.et al.
Association between Food Group Intake and Serum Total Cholesterol in the Japanese Population: NIPPON DATA 80/90
Journal of Epidemiology , 20 , 576-581  (2010)
原著論文20
Ueshima H, Miura K. and Okuda N.
NIPPON DATA80/90 Nutrition Study: Appendix Tables
Journal of Epidemiology , 20 , 587-596  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-