褥瘡の予防と治療に関する研究 1)栄養介入の効果の検討、2)保護機材の効果の検討

文献情報

文献番号
200921010A
報告書区分
総括
研究課題名
褥瘡の予防と治療に関する研究 1)栄養介入の効果の検討、2)保護機材の効果の検討
課題番号
H19-長寿・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大浦 武彦(医療法人社団 廣仁会 褥瘡・創傷治癒研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
14,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究1)栄養介入の効果の検討
褥瘡発生リスクを有する患者と褥瘡患者を対象とし、栄養介入が栄養状態と褥瘡発生リスク、治癒に及ぼす効果を検討した。
研究2)保護機材の効果の検討
褥瘡患者を対象とし、創傷保護パッドの貼付が治癒に及ぼす効果及び適切な使用方法を探索検討した。
研究方法
研究1)
多施設共同ランダム化比較研究で行い、対照群は通常の栄養管理を、介入群は積極的な栄養介入を行なった。観察期間は12週間とし、看護・介護・治療の要因の統一のため、体圧分散マットレス、体位変換、薬剤・創傷ドレッシング材を規定し、研究代表者による定期的な回診・指導を行った。
研究2)
多施設共同オープン試験で、観察期間は2~6週間とし、看護・介護・治療の要因の統一のために体位変換、薬剤・創傷ドレッシング材を規定した。
結果と考察
研究1)
栄養状態(TP、PA、Cu、体重、上腕周囲長、上腕筋周囲径、腹囲、腸骨棘上部皮下脂肪厚、大腿囲)は栄養介入の有無と観察週数の交互作用に有意差が認められ、有意に改善した。褥瘡の大きさも同様に有意差が認められ、栄養介入により治癒速度が増すことが確認された。また、大きさを25.25 cm2(中央値)で区分した場合、中央値以上では同様に有意差が認められ、小さい褥瘡に比べ、大きい褥瘡のほうが栄養介入による褥瘡の治癒効果が得られる可能性がある。
研究2)
創傷保護パッドは治癒速度を促進させ、特にd2における褥瘡の大きさの縮小速度が速くなることが確認された。高機能体圧分散マットレス使用群と非使用群ではほぼ同様な縮小が見られた。研究1)の対照群との比較ではパッド貼付により更なる縮小効果が示唆された。薄いパッドで効果が見られない場合、厚いパッドに変え、効果が得られた。適切な使用により、皮膚刺激を予防し、効果が得られた。2750mm2以下の褥瘡では、パッドの効果がより期待できると考えられた。
結論
研究1)
褥瘡と栄養に直接、強力な影響を与える看護・介護・治療の要因を統一することにより、栄養介入による褥瘡の治癒効果が本邦においてRCTで初めて明らかになった。
研究2)
創傷保護パッドの適切な使用方法も示すことができ、褥瘡治療に新たな選択肢を示すことができた。特にマンパワー不足の在宅ケアや高機能体圧分散マットレス不足の医療機関では治療の効果をあげ、褥瘡ケアの軽減に繋がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200921010B
報告書区分
総合
研究課題名
褥瘡の予防と治療に関する研究 1)栄養介入の効果の検討、2)保護機材の効果の検討
課題番号
H19-長寿・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大浦 武彦(医療法人社団 廣仁会 褥瘡・創傷治癒研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究1)栄養介入の効果の検討
褥瘡発生リスクを有する患者と褥瘡患者を対象とし、栄養介入が栄養状態と褥瘡発生リスク、治癒に及ぼす効果を検討した。
研究2)保護機材の効果の検討
褥瘡患者を対象とし、創傷保護パッドの貼付が治癒に及ぼす効果及び適切な使用方法を探索検討した。
研究方法
研究1)
多施設共同ランダム化比較研究で行い、対照群は通常の栄養管理を、介入群は積極的な栄養介入を行なった。観察期間は12週間とし、看護・介護・治療の要因の統一のため、体圧分散マットレス、体位変換、薬剤・創傷ドレッシング材を規定し、研究代表者による定期的な回診・指導を行った。
研究2)
多施設共同オープン試験で、観察期間は2~6週間とし、看護・介護・治療の要因の統一のために体位変換、薬剤・創傷ドレッシング材を規定した。
結果と考察
研究1)
栄養状態(TP、PA、Cu、体重、上腕周囲長、上腕筋周囲径、腹囲、腸骨棘上部皮下脂肪厚、大腿囲)は栄養介入の有無と観察週数の交互作用に有意差が認められ、有意に改善した。褥瘡の大きさも同様に有意差が認められ、栄養介入により治癒速度が増すことが確認された。また、大きさを25.25 cm2(中央値)で区分した場合、中央値以上では同様に有意差が認められ、小さい褥瘡に比べ、大きい褥瘡のほうが栄養介入による褥瘡の治癒効果が得られる可能性がある。
研究2)
創傷保護パッドは治癒速度を促進させ、特にd2における褥瘡の大きさの縮小速度が速くなることが確認された。高機能体圧分散マットレス使用群と非使用群ではほぼ同様な縮小が見られた。研究1)の対照群との比較ではパッド貼付により更なる縮小効果が示唆された。薄いパッドで効果が見られない場合、厚いパッドに変え、効果が得られた。適切な使用により、皮膚刺激を予防し、効果が得られた。2750mm2以下の褥瘡では、パッドの効果がより期待できると考えられた。
結論
研究1)
褥瘡と栄養に直接、強力な影響を与える看護・介護・治療の要因を統一することにより、栄養介入による褥瘡の治癒効果が本邦においてRCTで初めて明らかになった。
研究2)
創傷保護パッドの適切な使用方法も示すことができ、褥瘡治療に新たな選択肢を示すことができた。特にマンパワー不足の在宅ケアや高機能体圧分散マットレス不足の医療機関では治療の効果をあげ、褥瘡ケアの軽減に繋がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究1)栄養の介入が創傷、特に褥瘡の治療を促進するか否かについてRCTで認められたという本邦での報告はなく、諸外国においても信頼性のある報告は数編である。従って今回、栄養介入で褥瘡の創傷治癒促進がRCTで有意に認められたことは、栄養、創傷治癒の分野では画期的な研究成果と言える。
研究2)において局所保護パッドの安全性と有用性が認められたことは、高機能マットレスと併用すれば体位変換をしなくてもよい可能性があり、褥瘡の治療概念を変えるものと考えられる。
臨床的観点からの成果
研究1)栄養の重要性については様々なガイドラインで言及されているが、本邦においては褥瘡の治癒と栄養介入との関係をRCTで検証した報告は見当たらない。今回、褥瘡危険要因を一定化したことにより、栄養介入がRCTにおいて有意に創傷治癒を促進させることが検証されたことは臨床上、影響が大で、今後は栄養充実の必要性がガイドラインの上位にランクされると思われる。
研究2)で褥瘡保護パッドの有用性が認められたことは褥瘡では必須と思われていた体位変換をしなくてもよいという可能性に繋がり、臨床的に有意義である。
ガイドライン等の開発
今回、厚生労働省への報告を行った後、Wound Repair and regeneration と日本褥瘡学会誌に投稿予定である。これらが発表された後は日本の褥瘡学会ならびに米国、欧州の褥瘡学会のガイドラインに引用されると思われ、その結果ガイドラインにおける栄養介入のランクが上がる可能性がある。
その他行政的観点からの成果
研究1)高齢者社会にとって栄養は重要であり、今回は研究1)として栄養の重要性が認められたことは医学的には勿論であるが行政的にも、栄養の重要性を、自信をもって厚生労働省指針に盛り込むことが出来るものと考えられる。研究2)として褥瘡保護パッドの有用性が認められたことは褥瘡治療で必須と考えられていた体位変換が不用ということに繋がる可能性があり、行政的に重要な一石を投じるものである。
その他のインパクト
今回の研究報告書が本研究のはじめての公開であり、まだ学会報告もしていない。従って現在のところマスコミに取り上げられていない。しかし、日本褥瘡学会において「栄養介入は創傷治癒を促進させる(厚労省長寿科学研究:RCTによる立証)」シンポジウムとして本研究の結果が取り上げられており発表予定である。また日本在宅褥瘡創傷ケア推進協会においてもランチョンセミナーとして発表予定となっている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
日本褥瘡学会誌に投稿予定
原著論文(英文等)
0件
Wound Repair and regenerationに投稿予定
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
2件発表予定(日本褥瘡学会シンポジウム、日本在宅褥瘡創傷ケア推進協会ランチョンセミナー)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-