唾液を指標とした口腔機能向上プログラム作成

文献情報

文献番号
200921009A
報告書区分
総括
研究課題名
唾液を指標とした口腔機能向上プログラム作成
課題番号
H19-長寿・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 保明(公立大学法人九州歯科大学 生体機能制御学講座・摂食機能リハビリテーション学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 西原 達次(立大学法人九州歯科大学 健康増進学講座・感染分子生物学分野 )
  • 小関 健由(東北大学大学院歯学研究科 口腔保健発育学講座・予防歯科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、唾液の口腔内分布から口腔機能をより客観的に数値化することで、効果的な口腔ケアやリハビリの方法、回数、頻度、介助度などを選択できる口腔機能向上のプログラムを確立し、要介護高齢者や特定高齢者等の口腔環境と口腔機能を改善してQOLを向上させることを目的として3年計画の3年目として実施した。 
研究方法
3分担研究課題に分けて研究を進めた。高齢者における口腔機能と唾液との関連性については、11課題について研究を進めた。介護保険関連施設の現状調査から解決すべき課題を明らかにする目的で現状調査を実施した。さらに、口腔機能と臨床診断基準や唾液の湿潤度との関連性、および心身学的な因子や口腔内の感染状態についても、各研究協力者の協力の下、検討を進めた。唾液の各指標や口腔内の唾液と関連する所見や指標と口腔機能との関連性については統計学的な解析を行った。口腔細菌学的な口腔環境に関する分担研究では、臨床応用可能な機器の開発を進めた.唾液と口腔状態の関連性に関する研究では一般健康診査・歯科健康診査の結果と唾液流出量の関連を検索した。
結果と考察
唾液湿潤度検査は、客観的な口腔乾燥状態の評価に加え、唾液嚥下困難などの口腔機能低下が評価できたことから、判定指標としての応用が有効と考えられた。また、唾液の質的評価も口腔ケアの時期や方法などの判断に役立つことが示された。嚥下回数の簡易評価は、唾液分泌量だけでなく嚥下機能との関連から今後、要介護者に対応した工夫が必要であると考えられた。安静時唾液検査のワッテ法と吐唾法、刺激唾液検査のサクソンテストの間に相関を認めた。口腔乾燥に伴う剥離上皮膜では、肺炎起炎菌が62.9%にみられた。舌背、口蓋、頬粘膜、歯に形成された剥離上皮は重層扁平上皮由来で口腔由来であった。口腔細菌学的な研究では、誤嚥性肺炎の発症に関与する口腔内細菌数の測定に関して、これまでの培養法や遺伝子検出法とは異なる方法の開発を試み、梗塞巣の形成をin vitroの実験系で示すことに成功した。唾液と口腔状態の関連性に関する研究では、安静時唾液の嚥下機能評価から口腔内圧測定法は正しい嚥下をスクリーニングできる可能性が示された。
結論
今回の調査研究では、関連研究を含めて、唾液の分泌量や性状が口腔機能向上と大きく関連する可能性が示唆され、唾液を応用した客観的評価は口腔機能向上プログラム作成上、有用であると考えられた。          

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200921009B
報告書区分
総合
研究課題名
唾液を指標とした口腔機能向上プログラム作成
課題番号
H19-長寿・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 保明(公立大学法人九州歯科大学 生体機能制御学講座・摂食機能リハビリテーション学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 西原 達次(公立大学法人九州歯科大学 健康増進学講座 感染分子生物学分野)
  • 小関 健由(東北大学大学院歯学研究科 口腔保健発育学講座予防歯科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
口腔機能低下を予防する口腔機能向上プログラム実施の必要性が徐々に理解されてきている。本研究は長寿科学総合研究事業により高齢者における唾液の分布や物性、関連因子が口腔機能の状況と関わる可能性が示唆されたことから、非襲侵で採取および解析できる唾液を応用した口腔機能の客観的評価を口腔機能向上プログラム作成に生かすことを目的に3つの分担研究を実施した。
研究方法
介護保険関連施設の現状調査を実施した。さらに、口腔機能と臨床診断基準や唾液の湿潤度との関連性、および心身学的な因子や口腔内の感染状態についても検討を進めた。唾液の各指標や口腔内の唾液と関連する所見や指標と口腔機能との関連性について統計学的な解析を行った。さらに、ピエゾフィルムを用いた嚥下センサーの開発を進めた。口腔細菌学的な口腔環境に関しては、継続して臨床応用可能な機器の開発を進めた.唾液と口腔状態の関連性に関する研究では、改良刺激唾液採取法を開発し、一般健康診査・歯科健康診査の結果と唾液流出量の関連を検索した。
結果と考察
客観的な口腔機能の評価方法は、数値として表現できる評価方法が必要と思われた。唾液湿潤度検査は、要介護高齢者でも応用可能で、客観的な口腔乾燥状態と摂食嚥下機能が評価できた。ピエゾフィルムを用いた嚥下回数の簡易評価は、唾液分泌量だけでなく嚥下機能との関連から今後、開発を進める必要があると考えられた。  
一般高齢者の15.6%に咀嚼障害が認められ、嚥下障害との関連では疑いのある者が12.1%で、5.1%では嚥下障害の可能性が高いと考えられた。要介護高齢者では口腔乾燥度の高い者ほど舌上の細菌数が少なかった。老人介護施設では舌上および舌下湿潤度と口腔乾燥感に有意な関連がみられた。摂食・嚥下障害の重症度と口腔乾燥度に相関を認め、口腔機能低下が口腔乾燥度と関連していると推測できた。口腔細菌学的な口腔環境に関する分担研究では、微小流路チップを用いて、ヒトの唾液中の単球・マクロファージの凝集を微小流路チップの利用で可視化,定量化することができた。唾液と口腔状態の関連性に関する研究では、安静時唾液分泌量にのみ有意な相関を認めたのはBMI、心電図判定、血糖検査判定、ヘモグロビンA1c判定と最大CPI値であった。
結論
本研究で、唾液の分泌量や性状は客観的数値として表現できる点と口腔機能と関連していることから、唾液を指標とした客観的評価は口腔機能向上プログラム作成する上で、有用であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
要介護高齢者では、従来から行われている唾液検査が実施困難な場合が多いため、新たな評価方法が必要であるが、今回の研究で用いた唾液湿潤度検査は、要介護高齢者でも応用可能で、客観的な口腔乾燥状態と摂食嚥下機能が評価できた。唾液の分布や物性、関連因子が口腔機能の状況と関わる可能性が示唆されたことから、非襲侵で採取および解析できる唾液を応用した口腔機能の客観的評価を口腔機能向上プログラム作成に生かすことができると考えられた。
臨床的観点からの成果
一般高齢者の15.6%に咀嚼障害が認められ、嚥下障害との関連では疑いのある者が12.1%で、5.1%では嚥下障害の可能性が高いと考えられた。要介護高齢者では口腔乾燥度の高い者ほど舌上の細菌数が少なく、舌上および舌下湿潤度と口腔乾燥感に有意な関連がみられた。摂食・嚥下障害の重症度と口腔乾燥度に相関を認め、口腔機能低下が口腔乾燥度と関連していると推測できた。これらの結果は、高齢者では口腔乾燥状態の改善を図ることで、口腔機能低下や嚥下障害のリスクを低下させる可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
日本歯科医学会における口腔乾燥症に関するガイドラインを作成した。
その他行政的観点からの成果
介護予防事業において、口腔機能向上プログラム作成をする際に、高齢者の口腔内唾液の分布度や物性が重要であることが示されたことから、高齢者における口腔乾燥症状態は、口腔機能向上サービスや高齢者医療においても考慮すべきと考えられた。
その他のインパクト
テレビ朝日の「たけしの健康エンターテイメント みんなの家庭の医学」で取り上げられた。
また西日本新聞社、読売新聞社でも唾液の重要性が取り上げられ、国民の健康水準の向上に寄与した。公開シンポジウムを2回開催して、市民の唾液の重要性に関する啓発を行った。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
公開シンポジウムを2回開催した

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
松崎利之、井上裕之、長谷則子、他
口腔乾燥における心理的因子に関する研究-高齢者における調査より-
日本障害者歯科学会雑誌 , 29 , 611-618  (2008)
原著論文2
上森尚子、尾崎由衛、榊原葉子、他
介護保険施設における口腔ケアの現状と今後の課題に関する調査報告
九州歯科学会雑誌 , 63 (3) , 115-121  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-